レジスト開口の逃げ寸法とは?標準値・設計基準・CAD設定まで徹底解説

スポンサードリンク




レジスト開口の「逃げ寸法」を正しく設定できていますか?

基板設計において、ソルダーレジストの開口寸法ははんだ付け品質を左右する非常に重要なパラメータです。

逃げ寸法が小さすぎればレジストがパッドにかかり、はんだ不良や部品の浮きを引き起こします。
逆に大きすぎれば、不要な部分が露出してブリッジやショートのリスクが高まります。

「標準値はいくつなのか」「どう判断すればいいのか」「CADではどこで設定するのか」。

この記事では、PCB設計のプロの視点からレジスト開口の逃げ寸法を体系的に解説します。
設計初心者から中級者まで、実務で即使える知識をお届けします。

目次

レジスト開口・逃げ寸法の基本を理解しよう

ソルダーレジストの「逃げ寸法」とは、銅パッドの外形よりもレジスト開口を何μm(またはmm)大きく設けるかを示す値です。

この値が設計の根幹を担っています。

ソルダーレジストとは何か

ソルダーレジスト(Solder Mask)は、プリント基板(PCB)の表面を覆う保護膜です。

緑・青・黒などの色がついた樹脂コーティングで、はんだが不要な箇所に付着するのを防ぎます。
配線の絶縁保護・酸化防止・マイグレーション抑制にも効果を発揮します。

はんだを乗せたい部分(パッド)は、このレジストを開口して銅面を露出させます。
この「開口された領域」がはんだランドになります。

製造時には写真製版(フォトリソグラフィ)の工程でレジストを選択的に除去するため、開口寸法の精度がそのまま品質に直結します。

参考:IPC(Association Connecting Electronics Industries) https://www.ipc.org

「逃げ寸法」の定義と役割

逃げ寸法(英語では “Solder Mask Expansion” または “Solder Mask Opening Clearance”)とは、パッドの輪郭よりレジスト開口を一回り大きくとるための寸法です。

なぜ一回り大きくするのでしょうか。

製造工程には必ず「位置ずれ(アライメントエラー)」が発生します。
レジスト印刷や露光の際に0.05〜0.1mm程度のズレが生じることは珍しくありません。

そのズレを吸収するための「余裕しろ」が逃げ寸法の本質的な役割です。

逃げ寸法=0にした場合、製造ずれが生じた瞬間にレジストがパッドに乗り上げます。
乗り上げた部分ははんだをはじき、はんだ不良・部品浮き・電気的不接続につながります。

逃げ寸法を適切に設けることで、製造ばらつきを吸収し確実なはんだ接合を実現します。

レジスト開口の全体像:片側逃げと全周逃げ

逃げ寸法の指定方法には「片側値」と「全周値(直径値)」の2通りがあります。

片側逃げとは、パッド外形の各辺または各半径から外方向に広げる寸法です。
例:片側逃げ 0.05mm → 左右上下それぞれ0.05mm拡大

全周逃げ(または直径逃げ)は、円形パッドの直径をそのまま何mm大きくするかを示します。
例:直径逃げ 0.1mm → 直径が0.1mm大きい円形開口

CADソフトによって入力方式が異なるため、「片側なのか全径なのか」を必ず確認してください。
数値の読み間違いで寸法が2倍になるミスは現場でも頻発しています。

レジスト開口逃げ寸法の標準値・業界基準

実務で使える標準値を断言します。

片側逃げ寸法の業界標準は「0.05mm(50μm)」が最も一般的な推奨値であり、多くの基板メーカーが採用している値です。

ただし用途・工法・精度クラスによって変化します。

IPC規格が定める設計クラスと逃げ寸法

IPC-SM-782およびIPC-7351はランドパターン設計の世界的標準規格です。

IPC-7351では部品クラスを以下の3つに分類しています。

クラスA(Density Level A):最小/最密設計。スペースが最も厳しい。
クラスB(Density Level B):標準設計。量産品の一般的なレベル。
クラスC(Density Level C):余裕ある設計。手はんだや修正を考慮。

この分類においてレジスト開口の逃げは各ランドパターンデータ内に織り込まれています。
一般的なクラスBでは片側0.05mmが基本値として定義されています。

IPC規格の詳細はこちら:IPC-7351 Land Pattern Standard

日本国内基板メーカーの標準推奨値

国内の代表的な基板メーカーが公開している設計ガイドラインをまとめます。

メーカーAの標準値:片側0.05mm(最小0.03mm)
メーカーBの標準値:片側0.05mm(ファインピッチ部品は0.03mm)
メーカーCの推奨値:片側0.075mm(標準仕様)、0.05mm(精密仕様)

数値に多少の違いはありますが、0.05mmを中心とした範囲に集中しています。

プロの経験則として、設計段階では0.05mmを標準として設定し、製造メーカーが決定した段階でそのメーカーの推奨値に合わせて微調整するアプローチが最も確実です。

設計早期から特定のメーカー値を決め打ちにしてしまうと、製造先変更の際に全パッドの見直しが必要になります。
汎用性のある0.05mmを基準値としておくことが、設計の柔軟性を保ちます。

参考:JA-JEDEC規格参考資料 – JEITA

部品種別ごとの推奨逃げ寸法一覧

部品の実装方法によって最適な逃げ寸法は異なります。

SMD(表面実装)チップ部品(0402, 0603, 1005等)
推奨片側逃げ:0.05mm
理由:小型部品はパッド間距離が短く、逃げが大きすぎるとランド間距離が縮まりブリッジリスクが高まる。

BGAパッケージ
推奨片側逃げ:0.05mm〜0.075mm(Non-Solder Mask Defined設計の場合)
NSMD設計では銅パッドをレジスト開口より小さくするため逃げがそのまま銅露出幅を決める。

QFP / QFNパッケージ
推奨片側逃げ:0.05mm
ファインピッチ(0.5mmピッチ以下)では0.03mmまで抑えることも。

スルーホール部品(PTH)
推奨片側逃げ:0.1mm〜0.15mm
手はんだや波はんだのフィレット形成を考慮し、SMDより広めが適切。

コネクタ・大型部品
推奨片側逃げ:0.1mm〜0.2mm
反復挿抜や機械的ストレスに耐えるよう、はんだ量を確保する意図で逃げを大きく取ることがある。

逃げ寸法が与える品質への影響:リスクと対策

逃げ寸法の設定ミスは、目に見えにくい不良を引き起こします。

設計段階では問題が見えず、実装後に初めて顕在化するケースが多いため、原理を理解した上で正しく設定することが重要です。

逃げ寸法が小さすぎるケースのリスク

逃げ寸法を0.03mm以下、または0に近い値に設定した場合の弊害を解説します。

製造時のアライメントずれが逃げ代を超えた瞬間、レジストがパッド上に乗ります。
乗り上げたレジストの膜厚は一般に約20〜30μmあります。

この膜がはんだを弾くことで「はんだ濡れ不良」が発生します。
見た目上はんだが乗っているように見えても、接合強度が著しく低下した「冷えはんだ」や「空洞接合」になっているケースがあります。

ICT(基板検査)やAOI(自動光学検査)をすり抜けてしまうこともあり、フィールドでの断線や接触不良として顕在化します。

特にBGAやCSPでは内部に隠れたボール接合のため、リワーク困難な不良につながります。

対策:設計ルールチェック(DRC)でレジスト開口最小値を設定し、自動的に警告が出る仕組みを整えることが重要です。

逃げ寸法が大きすぎるケースのリスク

反対に逃げ寸法が過大(片側0.15mm以上)になった場合のリスクも見落とせません。

隣接するパッド間でのレジスト幅が縮小します。
標準的なレジスト最小幅は0.1mm程度を推奨するメーカーが多く、これを下回るとレジストが製造時に剥離・脱落するリスクが高まります。

また過剰な露出は、基板表面の銅が酸化・腐食するリスクを高めます。
ENIG(無電解金めっき)やOSP(有機はんだ保護膜)などの表面処理が施されていればある程度保護されますが、それでも限度があります。

高密度実装(ファインピッチQFP・BGA)では、隣接パッド間でのはんだブリッジリスクが著しく上がります。

対策:ネットごとのクリアランスチェックとレジスト幅チェックを設計フローに組み込むことが必要です。

NSMD設計とSMD設計の選択と逃げ寸法の関係

BGAやCSPのパッドには「NSMD(Non-Solder Mask Defined)」と「SMD(Solder Mask Defined)」の2種類の設計方式があります。

NSMD設計(推奨):
レジスト開口 > 銅パッド。
銅パッドの全周がはんだに濡れるため、接合強度・信頼性が高い。
IPC-7351でも標準的なBGA設計に推奨されている。

SMD設計:
銅パッド > レジスト開口。
レジストがパッド周縁を覆い、開口部分だけはんだが乗る形式。
アンカー効果によりパッド剥がれには強いが、はんだ接合面積が制限される。

NSMD設計においては逃げ寸法がそのまま「銅パッドのどのくらいが露出するか」を決定します。
BGA 0.8mmピッチ以下ではNSMDを選択し、逃げを適切に設定することが信頼性向上の鍵です。

詳細な設計指針:IPC-7095 Design and Assembly Process Implementation for BGAs

CADソフト別:逃げ寸法の設定方法

理論を理解したら、実際のCADソフトでの設定方法を確認しましょう。

設定箇所や名称はソフトウェアによって異なりますが、いずれも「ルール(Rule)」または「制約(Constraint)」の中に存在します。

Altium Designerでの設定手順

Altium Designerは業界標準のPCB設計ツールです。

レジスト開口の設定は「PCB Rules and Constraints Editor」で行います。

手順:
Design → Rules → Manufacturing → Solder Mask Expansion を選択します。
“Expansion” の数値がレジスト逃げ寸法です(片側値)。
全体ルールとして0.05mmを設定し、特定のパッドにはパッドプロパティから個別オーバーライドが可能です。

部品ライブラリ内のパッドにも「Solder Mask Expansion」のプロパティがあります。
ライブラリレベルで設定しておくことで、設計ごとの設定漏れを防げます。

参考:Altium Designer Documentation

KiCadでの設定手順

KiCad(オープンソース)でのレジスト逃げ寸法設定を解説します。

パッドプロパティで個別設定:
フットプリントエディタでパッドをダブルクリックします。
「Clearances and Settings」タブ→「Solder mask margin」に値を入力します。
正の値で開口が広がり(逃げ)、負の値で開口が狭まります。

基板全体のデフォルト設定:
Board Setup → Design Rules → Solder Mask/Paste を選択します。
「Solder mask clearance」に標準値(0.05mm)を設定します。
「Solder mask min width」でレジスト最小幅(0.1mm推奨)も設定します。

KiCadはオープンソースながら非常に高機能で、多くのホビーユーザー・スタートアップが採用しています。

参考:KiCad Documentation

Cadence Allegro / OrCADでの設定手順

Cadence Allegro PCB Designerでの設定方法です。

Constraint Manager を開きます。
Physical → Spacing → Mask → Primary Conductor to Board Edge などの項目から Soldermask 関連を選択します。
またはパッドスタックエディタ(Padstack Editor)で各レイヤー(SOLDERMASK_TOP / SOLDERMASK_BOTTOM)の寸法を直接入力します。

パッドスタックで逃げ寸法を指定する場合:
SMASKTOPの寸法 = Copper Top の寸法 + 逃げ寸法×2(全径)
例:0.6mm丸パッドに片側0.05mmの逃げ → SMASKTOPを0.7mmに設定。

パッドスタック方式はライブラリ設計段階で確実に織り込むため、設計ルール依存より信頼性が高いアプローチです。

参考:Cadence Design Systems Documentation

EAGLE(Fusion 360 Electronics)での設定

Autodesk EAGLEでの設定方法です。

DesignRulesエディタを開きます(Edit → Design Rules)。
“Masks” タブを選択します。
“stop”(ソルダーマスク)の項目にある「Limit」と「%」で開口量を設定します。

EAGLEは「%(パッドサイズに対するパーセント)」で指定する独特の方式を採用しています。
固定値(mm)ではなくパッドサイズに比例するため、大小パッドが混在する設計では意図しない差異が出ることがあります。

推奨:EAGLEではなるべくフットプリント側でstopmask layerのパッドを個別定義し、%指定に頼りすぎないことが品質の安定につながります。

ファインピッチ・高密度設計での逃げ寸法管理

現代の基板設計は高密度化が進んでおり、標準値の0.05mmでは対応できないケースが増えています。

ファインピッチ部品や高密度基板における逃げ寸法の考え方をプロの視点で解説します。

0.5mmピッチQFP・QFNの逃げ寸法管理

0.5mmピッチQFPでは、パッド間のランドギャップは0.2mm程度しかありません。

この状況で片側0.05mmの逃げを両端のパッドに設けると、レジスト幅は0.1mmになります。
これはちょうど限界値であり、製造精度に余裕がほとんどありません。

そのため0.5mmピッチ以下の部品には0.03mmまで逃げを削減する設計も実務では行われます。

ただしこの場合、製造メーカーのレジスト精度クラスを事前に確認することが必須です。
精度クラスが対応していない製造ラインでは、逆に不良率が上がります。

実務上のポイント:ファインピッチ部品のみ個別に逃げを0.03mmに設定し、その他の部品は0.05mmを維持する混在設計が推奨されます。
KiCadやAltiumではパッド単位での個別設定が可能です。

BGA・CSP高密度基板での考え方

0.4mmピッチBGAの逃げ寸法設計は特に慎重さが求められます。

0.4mmピッチBGAのボール直径は一般に0.2〜0.25mmです。
パッド径は0.2mm前後となり、片側0.05mmの逃げでも開口径は0.3mmになります。

隣接ボール間の距離は0.4mmなので、2パッドの開口端間距離は0.1mmです。
レジスト幅0.1mmはまさに限界値です。

BGA設計では以下のアプローチが有効です:
NSMD設計を採用し、パッド径を0.15〜0.175mmに抑えます。
逃げ寸法を0.05mmとしてレジスト開口は0.25〜0.275mmです。
これにより隣接ボール間のレジスト幅を約0.125〜0.15mm確保できます。

IPC-2221B(Generic Standard on Printed Board Design)では高密度設計においてもレジスト最小幅0.1mm維持を推奨しています。

高密度設計でのDRC(設計ルールチェック)活用

設定した逃げ寸法が全設計で一貫して守られているかを手動確認するのは不可能です。

DRCを正しく設定し、自動チェックの仕組みを設計フローに組み込みましょう。

チェックすべき主要ルール:
ソルダーマスク開口最小幅:0.05mm(片側逃げ最小値)
ソルダーマスクレジスト最小幅:0.1mm(隣接パッド間のレジスト最小幅)
パッドとレジスト開口の整合性:各パッドでレジスト開口がパッドを確実に覆っているか

特にAltium Designerでは “Solder Mask Sliver” ルールを設定することで、レジスト幅が指定値を下回った際に警告を出せます。
このルールを活用することで、高密度設計での微小なレジスト幅問題を早期発見できます。

製造メーカーとのコミュニケーションポイント

基板設計は設計者だけで完結しません。

製造メーカーとの適切なコミュニケーションが、設計意図の正確な実現につながります。

ガーバーデータ提出前に確認すべき項目

製造発注前に必ず製造メーカーに確認すべきレジスト関連の項目をまとめます。

レジスト開口の最小逃げ寸法(メーカー推奨最小値)
レジスト最小幅(隣接パッド間のレジストが維持できる最小幅)
アライメント精度クラス(±0.05mmなのか±0.1mmなのかで逃げ設計が変わる)
ファインピッチ部品への対応有無(0.4mmピッチBGA、0.3mmピッチQFPなど)

これらの情報はメーカーの「設計ガイドライン」や「製造能力表」に記載されています。
発注前に必ずダウンロードして確認しましょう。

参考(国内代表的な基板メーカー):P板.com 設計ガイドライン

ガーバーファイルの確認方法

設計したガーバーファイルが意図通りのレジスト開口を持つか、視覚的に確認することが重要です。

無料のガーバービューアを活用します。

Gerber Viewer(Altium付属)
Gerbv(オープンソース、Windows/Mac/Linux対応)
KiCad Gerber Viewer

確認ポイント:
ソルダーマスク層(GTL/GBL対応のGTO/GBO or .gm等)をCupper層と重ね合わせ、パッドより開口が一回り大きいことを目視確認します。
パッド中心とレジスト開口中心がほぼ一致しているか確認します。

ガーバー出力設定のミス(レイヤー割り当て間違い)でレジスト開口データが正しく出力されないトラブルは実務でも起きています。
必ずガーバービューアで視覚確認してから発注してください。

製造段階で行われるレジスト開口の補正(Artwork Compensation)

製造メーカー側では、設計データに対してアートワーク補正(Artwork Compensation)を行うことがあります。

これは製造工程の特性を反映した補正で、露光・現像の特性上、設計値より実際の開口がわずかに縮小することを見越してデータを拡大する処理です。

設計者はこの補正があることを認識しておく必要があります。

一般的な補正量は片側で+0.01〜0.025mm程度ですが、メーカーにより異なります。
ファインピッチ部品を使用する場合は、このアートワーク補正を考慮した上で逃げ寸法を決定することがより確実な品質保証につながります。

表面処理とレジスト開口逃げ寸法の関係

基板の表面処理(Surface Finish)はレジスト開口の最適な逃げ寸法に影響します。

表面処理ごとの特性と逃げ寸法設定の関係を理解しておきましょう。

ENIG(無電解ニッケル金めっき)の場合

ENIGは高信頼性・高価格の表面処理です。

ニッケル層(3〜5μm)の上に金(0.05〜0.1μm)が乗ります。
金の厚みは非常に薄く、レジスト開口への影響はほぼありません。

標準的な片側0.05mmの逃げ寸法で問題ありません。
ENIGは平坦性が高く、ファインピッチ部品への対応に優れるため、0.03mmまで逃げを詰めた設計でも安定した品質が期待できます。

HASL(熱風はんだレベリング)の場合

HASTは最もコストの低い表面処理です。

はんだ(Sn-Ag系またはPb系)を溶融して基板に塗布し、熱風で均一化します。
この工程でパッド上にはんだが盛り上がり、表面の平坦性がENIGに比べて劣ります。

HASLの場合、レジスト開口への影響よりもはんだ膜厚のばらつきが実装精度に影響します。
逃げ寸法の設定自体はENIGと同様の0.05mmで問題ありませんが、ファインピッチ部品への使用は非推奨です。

OSP(有機はんだ保護膜)の場合

OSPは銅面を有機膜(数十nm〜数百nm)で保護する処理です。

膜厚が非常に薄く、平坦性はENIG以上です。
レジスト開口逃げ寸法への影響はほぼなく、標準の0.05mmで設計できます。

注意点:OSPは保管中に劣化しやすく、開封後は早期に実装することが推奨されます。
また再フロー回数が多い場合(多層実装など)は膜の保護効果が低下するリスクがあります。

よくあるミスとトラブルシューティング

実務で頻繁に発生するレジスト開口関連のミスと、その解決方法を紹介します。

ミス①:CAD設定とライブラリ設定の二重設定問題

あるあるのトラブルとして、設計ルールで0.05mmを設定したにもかかわらず、ライブラリのパッドに個別値(例:0mm)が設定されていて、結果的にレジスト開口がパッドと同寸法になってしまうケースがあります。

Altiumでは部品側の設定が設計ルールを上書きするため、ライブラリ内のすべてのパッドの逃げ値を一元管理することが重要です。

対策:ライブラリ作成時にパッドの逃げ寸法を意図的に設定するか、設計ルールに完全依存させるかを方針として決定し、チーム内で統一します。

ミス②:GNDベタのレジスト開口問題

GNDや電源ベタ銅箔上のビア(Via)も、スルーホールへのはんだ流入防止のためにレジストを開口することがあります。

この際、ビア径に対してレジスト開口が過剰に大きいと、隣接するベタ銅箔とのレジスト幅が不足する問題が発生します。

対策:ベタ上のビアに対してはレジストを「閉じる(Tenting)」設計にするか、逃げ寸法を最小限(0.05mm)に抑えることが推奨されます。
テンティングビア(Via Tenting)はレジストでビアを封止する方法で、ベタのクリーンな外観と絶縁性向上を同時に実現します。

ミス③:ガーバー出力時のレジスト層反転問題

ガーバーファイルの出力設定によっては、ソルダーマスク層が「ポジティブ」か「ネガティブ」かの定義が逆転するケースがあります。

ソルダーマスクガーバーは基本的に「ネガ(抜き)」形式です。
描かれた図形の部分がレジストを除去(開口)を意味します。

Altiumなどでポジティブ出力した場合、受け取ったメーカーが誤解する可能性があります。
ガーバービューアで確認後、メーカーとの確認コミュニケーションを怠らないようにしましょう。

FAQ:レジスト開口・逃げ寸法についてよくある質問

Q1. レジスト開口の逃げ寸法はいくつに設定すればいいですか?

A. 標準的な推奨値は片側0.05mm(50μm)です。
多くのPCBメーカーがこの値を推奨しており、IPC-7351規格のクラスBにも対応しています。
ファインピッチ部品(0.5mmピッチ以下)では0.03mmまで縮小することもありますが、その場合は製造メーカーの対応能力を必ず確認してください。

Q2. 逃げ寸法を0にするとどうなりますか?

A. 製造時のアライメントずれがそのままレジストのパッド乗り上げにつながります。
はんだ不良・部品浮き・電気的接続不良のリスクが高まるため、実務では0にすることは避けてください。
最低でも0.03mm以上の逃げを確保することを強くお勧めします。

Q3. 全体設定とパッド個別設定、どちらが優先されますか?

A. 基本的にパッド個別設定が設計全体のルール設定より優先されます(Altiumなど多くのCADで同様)。
ライブラリにパッド個別値が設定されている場合は、設計ルールの変更だけでは反映されないため注意が必要です。
使用するCADの優先順位ルールを必ず確認してください。

Q4. BGAのレジスト設計でNSMDとSMDのどちらを選ぶべきですか?

A. 信頼性の観点からはNSMD(Non-Solder Mask Defined)を推奨します。
NSMD設計はパッド全周がはんだに濡れるため、接合強度が高くなります。
SMDはパッドの剥がれには強いメリットがありますが、接合面積の制限とはんだ量の変動が課題です。
IPC-7095でもBGAはNSMD設計が基本として定義されています。

Q5. ガーバーを出力した後、レジスト開口を確認するにはどうすればいいですか?

A. 無料のガーバービューア(Gerbv、KiCad Gerber Viewer等)を使用してください。
銅箔層とソルダーマスク層を重ね合わせ表示することで、パッドよりレジスト開口が一回り大きく設定されているかを目視確認できます。
発注前の必須確認ステップとして設計フローに組み込むことをお勧めします。

Q6. テンティングビアとは何ですか?レジスト開口と関係がありますか?

A. テンティングビアとはソルダーレジストでビア穴を塞ぐ(覆う)設計です。
ビアにレジスト開口を設けないため、逃げ寸法は適用されません。
GNDベタ上のビアや基板内部の信号ビアに多用され、フラックスの残留防止・外観改善・絶縁性向上の効果があります。
テンティングを選択するかどうかはビアの役割(実装用か配線用か)によって判断してください。

まとめ:レジスト開口の逃げ寸法設定のベストプラクティス

レジスト開口の逃げ寸法は、PCB設計の品質を左右する重要なパラメータです。

この記事で解説した要点を整理します。

標準値は片側0.05mm(50μm)。これを基準として設計を始めましょう。
ファインピッチ・BGA設計では0.03mmへの縮小も検討するが、メーカー能力確認が前提。
NSMD設計ではレジスト逃げがそのままはんだ接合面積を決定するため、特に重要。
CADの設定方式(片側値か全径値か、ルール優先かパッド個別優先か)を必ず把握する。
DRCでレジスト最小幅(0.1mm)チェックを組み込み、設計漏れを自動検出する。
ガーバー出力後はビューアで視覚確認し、意図通りの開口であることを担保する。
製造メーカーの設計ガイドラインを必ず参照し、発注前に確認コミュニケーションを取る。

「逃げ」という名前のとおり、この寸法は製造の「逃げ道」をつくるための重要な設計余裕です。
小さな数値ですが、その意味を正しく理解して設定することが、高品質な基板を安定して生産する第一歩になります。

基板設計でお困りの際は、IPC規格や各CADの公式ドキュメントを積極的に参照し、製造メーカーとの密なコミュニケーションを大切にしてください。

こちらもどうぞ!⇓

【EMS企業様限定】「提案型パートナー」への進化を丸投げ!基板実装.comの専門記事作成代行サービス | 基板実装.com

スポンサードリンク




売上調査はこちら↑

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次