

電子機器製造(EMS/SMT)の現場に足を踏み入れると、そこは専門用語の嵐です。
「フォーキャストがアップサイドに振れた」「リフロー後のイールドが低い」など、カタカナやアルファベットの略語を知らなければ、指示を理解することすら困難です。
この記事では、新入社員からベテランまでが共通言語として使いこなすべき「電子工場の現場用語100選」を、具体的な使用シーンを交えて徹底解説します。
この記事を読めば、現場のコミュニケーション効率が劇的に向上し、ミスを防ぐ力が身につきます。
目次
1. 生産・実装プロセス編(20語):基板が形になるまで
実装ラインのメイン工程で使われる用語です。物理的な「モノの流れ」に沿って覚えましょう。
| 用語 | 読み・正式名称 | 具体的シーン・使い方 |
| SMT | Surface Mount Technology | 「このラインはSMT工程専用ですか?」 |
| PCBA | PCB Assembly | 「検査後のPCBAをラックに収納してください。」 |
| リフロー | Reflow | 「リフロー炉の温度プロファイルを設定する。」 |
| マウンター | Mounter | 「マウンターの吸着エラーが発生している。」 |
| スクリーン印刷 | Screen Printing | 「はんだのスクリーン印刷が滲んでいる。」 |
| はんだペースト | Solder Paste | 「はんだペーストを冷蔵庫から出して解凍する。」 |
| ディスペンサー | Dispenser | 「接着剤をディスペンサーで塗布する。」 |
| ボンド | Bond / Glue | 「部品脱落防止のためにボンドを打つ。」 |
| キュア | Cure | 「ボンドをキュア(熱硬化)させる工程が必要だ。」 |
| ベーキング | Baking | 「吸湿したICを125℃でベーキングする。」 |
| リワーク | Rework | 「BGAの未はんだをリワーク機で修正する。」 |
| ディパネル | Depanel | 「基板をVカットからディパネル(分割)する。」 |
| ルーター | Router | 「ルーター分割機は基板へのストレスが少ない。」 |
| プレスフィット | Press-fit | 「はんだ不要のプレスフィット端子を圧入する。」 |
| アンダーフィル | Underfill | 「耐衝撃性向上のため、BGA下にアンダーフィルを流す。」 |
| コーティング | Coating | 「防湿のために防湿剤をコーティングする。」 |
| ポッティング | Potting | 「防水ケース内を樹脂でポッティング(充填)する。」 |
| マスク | Metal Mask | 「メタルマスクの洗浄を忘れないように。」 |
| スキージ | Squeegee | 「スキージの加圧バランスを調整する。」 |
| フラックス | Flux | 「はんだの酸化膜を除去するためにフラックスを使う。」 |
2. 品質・検査編(20語):不良ゼロへの防波堤
品質管理の現場で最も重要視される用語です。不良の種類を正確に伝える能力が求められます。
検査装置の略語
- AOI(Automated Optical Inspection): 自動光学検査。カメラで部品のズレや欠品を判定します。
- AXI(Automated X-ray Inspection): X線自動検査。はんだ内部の空洞(ボイド)を確認します。
- ICT(In-Circuit Test): 基板にピンを立てて電気的な繋がりを確認する検査。
- FCT(Function Test): 電源を入れて製品としての動作を確認する最終検査。
不良・品質用語
- イールド(Yield): 歩留まり。良品の割合を示す。算出式は、


- デフェクト(Defect): 不良、欠陥。
- ショート: 隣の回路と繋がってしまう不良。
- オープン: 繋がるべき場所が離れている不良。
- ブリッジ: はんだが橋のように隣と繋がること。
- マンハッタン: チップ部品が片方浮いて立ち上がること(墓石現象)。
- ボイド: はんだの中にできる気泡。
- トレース(Traceability): 「いつ、誰が、どの部品で」作ったか遡れること。
- シリアル: 個体識別番号。
- ロット: ひとまとまりの製造単位。
- NG: 不良品。
- 虚報(False Call): 良品なのに検査機が不良と誤判定すること。
- 未検出(Escape): 不良なのに検査機が見逃すこと。現場で最も防ぐべき事態です。
- バリデーション: 手順や方法が正しいかの妥当性確認。
- キャリブレーション: 計測器や装置の精度を校正すること。
- スペック: 仕様範囲。
3. 計画・調達・フォーキャスト編(20語):物流とコスト
工場の経営層や生産管理者が頻繁に使用する用語です。お金と部材の動きを管理します。
- フォーキャスト (Forecast): 需要予測。顧客からの「購入予定」の通知。
- ファーム (Firm): 確定注文。キャンセル不可の正式発注。
- ローリング: 予測を最新情報で毎月更新し続けること。
- アップサイド: 予測より需要が増えること。「アップサイドへの対応可否を確認して」
- リードタイム (Lead Time): 発注から納入までの期間。
- バックログ (Backlog): 受注残。出荷待ちの注文。
- アロケーション: 部品不足時に、メーカーが顧客へ数量を「割り当て」すること。
- コミット: 「この日に◯個必ず納品する」という約束。
- バッファ: 在庫や時間の余裕。
- セーフティ・ストック: 安全在庫。
- BOM (Bill of Materials): 部品表。
- PO (Purchase Order): 発注書。
- MOQ: 最低発注数量。
- SPQ: 標準梱包数量(リール単位など)。
- VMI: サプライヤー側が工場の在庫を管理する方式。
- JIT (Just In Time): 必要なものを必要な時に。
- インベントリ: 在庫。
- 棚卸し: 在庫の現物確認。
- フォーマット: 書式。
- エビデンス: 証拠資料(検査データなど)。
4. 装置・メンテナンス編(15語):現場の稼働を守る
機械が止まれば利益も止まります。メンテナンス担当者との会話で必須となる用語です。
- PM (Preventive Maintenance): 予防保全(定期点検)。
- BM (Breakdown Maintenance): 故障してから直す事後保全。
- ダウンタイム: 故障などで機械が停止している時間。
- アイドル: 機械は動いているが何も作っていない無駄な時間。
- OEE (Overall Equipment Effectiveness): 設備総合効率。
- フィーダー: 部品リールをセットして送る装置。
- ノズル: マウンターの先端で部品を吸い付けるパーツ。
- ジグ (Jig): 治具。作業を補助する道具。
- フィクスチャ: 基板などを固定するための治具。
- センサー: 検知器。
- コンベア: 基板を運ぶベルト。
- ローダー: 基板をラインに投入する装置。
- アンローダー: 基板を回収する装置。
- パレット: 基板を載せて運ぶ板。
- アタッチメント: 補助装置。
5. 管理・プロジェクト編(15語):工場の「脳」
工場の改善活動(カイゼン)や新製品導入で使われる用語です。
- KPI: 重要業績評価指標。
- PDCA: 計画・実行・評価・改善のサイクル。
- 5S: 整理・整頓・清掃・清潔・躾。
- カイゼン (Kaizen): 現場での改善活動。
- ポカヨケ: ミスを防ぐ物理的な仕掛け。
- SOP: 標準作業手順書。
- WI: 作業指示書。
- NPI (New Product Introduction): 新製品導入。
- プロトタイプ: 試作品。
- パイロットラン: 量産前の試作生産。
- マンプリ (Mass Production): 量産。
- ECN: 設計変更通知。
- PCN: 工程変更通知。
- RMA: 不良品の返品保証手続き。
- WIP (Work In Process): 仕掛品(製造途中の在庫)。
6. 環境・安全・施設編(10語):働く環境
電子工場ならではのルールに関する用語です。
- ESD (Electrostatic Discharge): 静電気放電。基板実装における最大の敵です。
- クリーンルーム: ゴミを排除した部屋。
- パーティクル: 微細なゴミ。
- HEPAフィルター: 超高性能空気フィルター。
- PPE: 保護具(帽子、手袋、コート)。
- MSDS: 化学物質等安全データシート。
- RoHS: 有害物質使用制限。
- リードフリー: 鉛を含まないはんだ。
- ハロゲンフリー: ハロゲン化合物を含まない材料。
- 現場 (Gemba): 実際の作業場所。
具体的な使用例:現場での会話シーン
トラブル発生時の報告例
「NPIの試作中に、2号機のノズル詰まりでダウンタイムが30分発生しました。原因は特定のロットの部品にバリがあったためです。イールドが90%まで低下したので、リワーク対応を行い、AOIでの未検出がないか全数再確認します。」
まとめ:横文字をマスターしてプロの現場へ
電子工場の横文字は、単なる専門用語ではなく、情報のスピードと正確性を高めるための「ツール」です。
これら100個の用語を理解することで、指示を正しく受け取り、的確な報告ができるようになります。
まずは、自分の工程に関連する用語から少しずつ使い始めてみましょう。






