
1. エグゼクティブ・サマリー:2026年Q1、アナログICは「コスト増」と「供給再編」の極致へ
2026年2月第4週、アナログIC市場は大きなパラダイムシフトの渦中にあります。今月1日から発動されたAnalog Devices (ADI) の全製品値上げ(平均15%)が流通末端まで浸透し、実装基板のBOM(部品構成表)コストを直接的に押し上げています。
一方で、ルネサス エレクトロニクスはAIサーバーやEV(電気自動車)向けの高付加価値製品へのリソース集中を加速させるべく、センサーインターフェースIC(ZSSCシリーズ)や汎用オペアンプの生産終了(EOL)プロセスを本格化させています。
Microchipにおいても、供給網の強靭化を目的とした製造拠点やテストサイトの変更通知(PCN)が連発されており、調達現場では「型番の維持」そのものが困難な状況に直面しています。
2. アナログIC市場:ADIの値上げ適用とTIの「Bリビジョン」への強制移行
Analog Devices (ADI):新価格適用の実態
ADIは2月18日の決算発表において、第1四半期の売上高が30.8億ドルと好調に推移したことを報告しました。
この背景には、2月1日から開始された大規模な価格改定があります。
- 値上げ幅: 標準商業用で 10〜15%、産業用で 約15%、軍用グレード(/883)では 最大30%。
- 現状: 代理店側のシステム更新が完了し、本日時点での新規見積もりはすべて新単価となっています。特筆すべきは、「未出荷のバックログ(注文残)」に対しても新価格が適用されるという強気な通告が一部の商社からなされている点です。これにより、既存プロジェクトの採算が急速に悪化するリスクが生じています。
- 理由: 原材料費、人件費、エネルギーコストのインフレに加え、物流費の高止まりを要因としています。
Texas Instruments (TI):汎用オペアンプの「プロセス集約」
TIは、LM358やLM324といった業界標準の汎用オペアンプにおいて、旧来のプロセス(バイポーラ等)による製品を事実上の終息へ向かわせ、「B」リビジョン(LM358B/LM324B等)への集約を強行しています。
- 特性の差異: BリビジョンはESD保護やEMIフィルタの強化がなされていますが、旧来の回路設計では動作マージンの変化(スルーレートや電源変動への応答)により、まれに発振やノイズの問題が発生します。単なるドロップイン代替(そのまま置換)と過信せず、実機検証を推奨します。
【一次ソース】
- Analog Devices Reports First Quarter Fiscal Year 2026 Results – ADI Investor
- Analog Devices Plans 10–30% Price Hike from Feb. 2026 – TrendForce
3. マイコン(MCU)市場:ルネサスのEOLデッドラインとリードタイム最新状況
ルネサス (Renesas):センサーICおよび汎用リニアICのEOL(PLC250055)
ルネサスが1月に発表した大規模なEOL通知のデッドラインが近づいています。
- 対象: 高精度センサーインターフェースIC ZSSC3016, ZSSC3026, ZSSC3036シリーズ。
- 最終受注日(LTB): 2026年6月30日。
- 深刻度: 多くの品番で「代替品:None(なし)」とされており、これらを使用している医療機器や産業用センサーメーカーは、設計変更(Re-design)または数年分の最終在庫確保という厳しい選択を迫られています。
- 汎用リニアIC (EOL260002): UPC/REACシリーズのLTBは 3月30日 です。残り約1ヶ月、後継の#GCA製品への切り替え準備を急いでください。
リードタイム動向:STMicro / NXP / Renesas
2026年2月24日時点のリードタイムは、車載・産業向けで依然として「高原状態」が続いています。
- STMicroelectronics: 車載用Stellar MCUや産業用STM32の一部(H7シリーズ等)で 28〜40週。
- NXP: 通信・産業用i.MXシリーズで 20〜36週。車載向けS32Kは安定傾向にありますが、依然として18週を維持しています。
- Microchip: 2月5日の決算発表によると、在庫調整は完了し「需要の回復期」に入ったとしていますが、PIC/dsPICの一部型番で生産枠が埋まり始めており、リードタイムが14週から 22週 へと反転し始めています。
【一次ソース】
- PLC250055: End-of-Life (EOL) Process on Select ZSSC Part Numbers – Renesas
- Microchip Q3 Fiscal 2026 Earnings Signal Broad-based Recovery – Futurum
4. プロセス・拠点変更(PCN):Microchipによる供給網の激変
Microchipは今月、実装に関わる極めて重要な変更通知(PCN)を連発しています。
- CCB 7105 (2026/02/19): dsPIC33Cシリーズのモールド樹脂変更。
- CCB 6482 (2026/02/19): MIC38Hxx, MIC580xx等のパワーマネジメントICにおいて、リードフレームの設計変更(パドルサイズの変更)が発表されました。これは放熱設計に影響を与える可能性があるため、基板の熱シミュレーションのやり直しが必要になる場合があります。
- CCB 7768 (2026/02/19): A3P060 FPGAシリーズの最終テストサイト追加(フィリピン拠点)。
【一次ソース】
5. 調達・設計部門への「火曜日の提言」
AIO要約ポイント:今すぐ行うべき3つの対策
- ルネサス「3月30日」LTBの最終確認: 汎用リニアIC(UPCシリーズ等)を使用している場合、あと5週間で受注が締め切られます。特に旧パッケージ品(SOP等)については、在庫積み増しか代替品への切り替えを今週中に決断してください。
- ADI新価格によるプロジェクト原価の再試算: 2月納品分から「新単価」での請求が届き始めています。特に軍用・高精度アナログ品を使用している場合、コストが30%跳ね上がっている可能性があるため、顧客への価格転嫁の交渉を早期に開始してください。
- Microchip PCNに基づく「パドルサイズ」の確認: 電源系IC(MICシリーズ)のリードフレーム変更(CCB 6482)を受け、基板上のサーマルビア配置や放熱設計に支障が出ないか、技術部門へ再評価を依頼してください。
【免責事項】 本レポートは2026年2月24日時点の公開情報を基に作成されています。半導体市場は不透明な地政学リスクや各社の急な戦略変更に晒されているため、最終的な判断はメーカー公式通知および一次代理店からの回答に基づいて行ってください。

