
TOTOのユニットバス受注停止というニュースを聞いて、「住宅設備の話だから関係ない」と思った購買・調達担当者の方は少なくないと思う。
しかし、その判断は危険かもしれない。
問題の本質はユニットバスではなく、その原料となるナフサの供給途絶にある。
そしてナフサは、基板実装(PCBアセンブリ)に使われるフラックス、洗浄剤、エポキシ樹脂、プリント基板材料のほぼすべてに関わる「川上の川上」に位置する原料だ。
この記事では、中東情勢とナフサ供給不足が基板実装業界にどのような経路で、どれほどの深刻度で波及するかを、サプライチェーンの構造から現場の洗浄工程まで、具体的に解説する。
購買・調達部門として今週中に動ける対策も含めて整理したので、ぜひ最後まで読んでほしい。
なぜ基板実装業界がナフサ供給不足と無関係でいられないのか
基板実装業界がナフサ問題と直結している理由は、製造工程で使うほぼすべての化学品がナフサを起点とする石油化学製品だからだ。
この事実は、業界に長くいる人ほど「当たり前すぎて意識しない」構造になっている。
だからこそ、今回のような川上ショックが起きたとき、対応が後手に回るリスクが高い。
ホルムズ海峡封鎖がナフサに直撃する仕組み
ホルムズ海峡は、世界の原油輸送量の約20〜30%が通過する戦略的チョークポイントだ。
(参考:U.S. Energy Information Administration「World Oil Transit Chokepoints」https://www.eia.gov/international/analysis/special-topics/World_Oil_Transit_Chokepoints)
この海峡が事実上封鎖されると、サウジアラビア・UAE・クウェートなど中東産の原油・ナフサが日本市場に届かなくなる。
日本のナフサ輸入量は、その大部分を中東に依存しており、代替調達ルートの確保には一定の時間とコストがかかる。
(参考:資源エネルギー庁「石油統計速報」https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/petroleum_and_gas/)
ナフサが製油所で分解されると、エチレン・プロピレン・ブタジエン・ベンゼンなどの基礎化学品が生成される。
これらがさらに加工されてIPA(イソプロパノール)、エポキシ樹脂、有機溶剤など、電子部品製造に欠かせない素材へと変化していく。
つまり、ホルムズ海峡の封鎖は「原油の問題」ではなく、電子部品製造インフラそのものへの打撃なのだ。
TOTOの受注停止が示すサプライチェーンの「見えない共通点」
TOTOがユニットバスの受注を一時停止したのは、エポキシ樹脂やウレタン系材料の調達が困難になったためとされている。
一見、衛生陶器・住宅設備メーカーと基板実装業界には共通点がないように見える。
しかし両者の共通点は「エポキシ樹脂をはじめとする石油化学製品への依存」という点で完全に一致している。
TOTOの事例が示すのは、「平時はまったく意識しないサプライチェーンの上流が、有事に突然姿を現す」というリスク構造だ。
基板実装業界も同じ構造のなかにいる。
自社の購買台帳を見ても、原料がどこから来ているかはTier1(直接の仕入れ先)までしか見えていない会社がほとんどだろう。
そのTier1が使っているTier2の原料が、実はナフサ由来の有機溶剤だった、というケースが今まさに顕在化しようとしている。
基板実装プロセスを支える「ナフサ由来素材」の全貌
基板実装プロセスで使われる化学素材のうち、ナフサを原料とするものは非常に多い。
以下に主要な素材カテゴリーごとに整理する。
現場の担当者であれば、自社の使用量と在庫日数を照らし合わせながら読んでほしい。
フラックス・ソルダーペーストとIPA(イソプロパノール)
はんだ付けに不可欠なフラックスには、活性剤を溶かすための溶媒として有機溶剤が使われている。
代表的なのがIPA(イソプロパノール)やエタノールだ。
IPAはプロピレンから製造される。
プロピレンはナフサのスチームクラッキング(熱分解)で得られる基礎化学品のひとつであり、ナフサ供給量と直結している。
国内でフラックス・ソルダーペーストを製造・供給する主要メーカーとしては、千住金属工業、タムラ製作所、ハリマ化成グループなどが挙げられる。
(参考:千住金属工業 公式サイト https://www.senju-metal.co.jp/)
これらのメーカーが原料調達コストの上昇や納期遅延に直面すると、その影響は最終的にEMS各社の調達コストと製造スケジュールに跳ね返ってくる。
フラックスははんだ付けに必須の消耗品であり、代替が効かない場面も多い。
在庫水準の把握と緊急発注の検討を、今すぐ開始する必要がある。
基板洗浄剤・フラックス洗浄剤
実装後のフラックス残渣を除去する洗浄工程でも、有機溶剤系クリーナーが幅広く使われている。
洗浄剤の主成分にはIPA系、炭化水素系、グリコールエーテル系などがあり、いずれもナフサ由来の原料を使用するものが多い。
国内の主要サプライヤーには、花王、エレメンツ(旧日本エア・リキード系)、ケミトロニクスなどがある。
洗浄剤は使用量が多く、日常的なランニングコストの中に組み込まれているため、価格上昇の影響を最初に実感するのはこのカテゴリーになる可能性が高い。
価格改定通知が届く前に、サプライヤーに現状の在庫状況と今後の価格見通しをヒアリングしておくことを勧める。
アンダーフィル材・封止樹脂(エポキシ系)
BGA(ボール・グリッド・アレイ)やCSP(チップ・スケール・パッケージ)の機械的補強・防湿保護に使われるアンダーフィル材や封止樹脂は、エポキシ樹脂をベースとしている。
エポキシ樹脂の原料であるビスフェノールAは、ナフサ誘導体のプロピレンとベンゼンから製造される。
アンダーフィル材の世界シェアで首位に立つのが味の素ファインテクノだ。
(参考:味の素ファインテクノ公式サイト https://www.ajinomoto-finetech.co.jp/)
他にも日立化成(現レゾナック)、住友ベークライトなどが封止樹脂・エポキシ系材料を供給している。
アンダーフィルはデバイスの信頼性に直結するため、材料の切り替えには品質検証のプロセスが必要だ。
短期間で代替品を探すことが難しいカテゴリーであるため、サプライヤーとの早期情報共有が特に重要になる。
プリント基板(PCB)素材:FR-4のガラスエポキシ樹脂
多くのプリント基板で採用されているFR-4規格の基板は、ガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸させたガラスエポキシを使用している。
このエポキシ樹脂もナフサ由来であることは言うまでもない。
国内主要メーカーとしては、パナソニック(MEIFAシリーズ)、三菱ガス化学、昭和電工マテリアルズ(現レゾナック)などがある。
(参考:パナソニック インダストリー 電子材料部門 https://industrial.panasonic.com/jp/products/pt/circuit-board-materials)
基板材料のコスト上昇は、EMS各社のBOM(部品表)コストを直撃するため、顧客への価格転嫁交渉や受注採算の見直しが必要になる可能性がある。
基板サプライヤーから価格改定通知が届いた場合の対応シナリオを、今のうちに営業・経営部門と共有しておくことを強く勧める。
カバーレイ・接着剤(FPC向け)
フレキシブルプリント基板(FPC)の保護層として使われるカバーレイフィルムの接着剤層には、有機溶剤系の接着成分が使用されている。
これもナフサ由来の溶剤に依存している材料だ。
国内の主要メーカーとしては、有沢製作所、日本メクトロン(NOK系)、住友電工などが挙げられる。
FPCはスマートフォン・ウェアラブル端末・車載機器向けの需要が旺盛であり、供給不安が生じると完成品メーカーへの影響も大きい。
サプライチェーンの「重層的な目詰まり」リスクを構造で読む

基板実装業界のサプライチェーンは、複数の層が積み重なった多層構造だ。
川上での問題が川下に届くまでには、必ずタイムラグが生じる。
このタイムラグこそが、危機対応において最も罠になりやすい部分だ。
川上から川下への波及タイムラグ
基板実装業界のサプライチェーンは、おおまかに以下の流れで構成されている。
中東産原油・ナフサ
石油元売り(ENEOS、出光興産、コスモ石油)
石油化学メーカー(三井化学、住友化学、三菱ケミカル)
電子材料メーカー(レゾナック、タムラ製作所、千住金属等)
基板・実装材料メーカー・商社
EMS・実装メーカー(メイコー、ムラタ製作所、ミネベアミツミ等)
セットメーカー(ソニー、パナソニック、キーエンス等)
川上の第1層(石油元売り)で供給不足が発生しても、第3層・第4層(電子材料メーカー・商社)が在庫を持っている間は、第5層以下には何も届かない。
だからこそ「今は問題ない」という状況が続いた後、ある日突然「納期未定」「価格大幅改定」という通知が届くことになる。
これは2021年の半導体不足・樹脂不足のときにも起きたパターンだ。
第2層・第3層での在庫枯渇が意味するもの
石油化学メーカー(第2〜3層)の在庫が尽きるまでのタイムラグは、平時の在庫水準にもよるが、数週間から2ヶ月程度とされている。
今まさにその臨界点が近づいている可能性がある。
TOTOの受注停止はすでに起きている事実だ。
つまり、住宅設備業界ではすでに第3〜4層の在庫が底をついている。
基板実装業界でも、同じ原料を共有するカテゴリーから順に、在庫枯渇の連鎖が始まると考えておくべきだろう。
現時点でサプライヤーから「問題ない」という回答があったとしても、それが「現時点での在庫あり」を意味するに過ぎないことを理解しておく必要がある。
特に影響を受けやすい企業・セグメント別リスク
業界全体が影響を受けるとはいえ、リスクの大きさはセグメントによって異なる。
自社や取引先がどのカテゴリーに属するかを確認してほしい。
フラックス・ソルダー系メーカー
千住金属工業とタムラ製作所は、フラックス・ソルダーペーストのリーディングメーカーとして知られている。
これらのメーカーは製品製造に大量のIPAをはじめとする有機溶剤を使用しており、ナフサ由来原料への依存度が非常に高い。
原料調達コストの上昇は製品価格への転嫁圧力となり、最終的には実装メーカーの材料コストを押し上げる。
また、調達が間に合わない場合は製品供給量の縮小にもつながるため、双方向のリスクが存在する。
ハリマ化成グループもはんだ材料の国内大手であり、同様のリスク環境に置かれている。
(参考:タムラ製作所 公式サイト https://www.tamura-ss.co.jp/jp/)
アンダーフィル・封止樹脂系メーカー
味の素ファインテクノは、アンダーフィル材の世界市場でトップシェアを持つ。
エポキシ樹脂ベースの製品を主力とするため、ビスフェノールA・エピクロロヒドリンといったナフサ由来原料の供給減少が直撃する。
レゾナック(旧昭和電工・旧日立化成の合併会社)は、半導体封止樹脂・銅張積層板・プリント基板材料など広範囲にわたる電子材料を供給しており、影響範囲が最も広いメーカーのひとつだ。
(参考:レゾナック公式サイト https://www.resonac.com/jp/)
住友ベークライトも封止樹脂の主要メーカーとして、同様のリスクに直面する。
FPC素材・PCB製造・EMSメーカー
有沢製作所はFPC向けカバーレイフィルムの国内大手であり、接着剤層の有機溶剤系原料への依存が高い。
メイコーはプリント基板製造の大手であり、FR-4材料のコスト上昇が製品原価に直撃する。
EMSのなかではミネベアミツミやニデック(日本電産)のように、材料調達と製造スケジュールの両面を管理する必要があるメーカーが特に難しい局面を迎える。
これらのEMS企業は顧客への納期コミットを抱えている一方、材料調達の不確実性が高まるというジレンマに直面しやすい。
IPA不足が洗浄工程に直撃する深刻度
ナフサ問題が基板実装業界に与える影響のなかで、最も即効性が高いのがIPAショックだ。
洗浄工程はEMS・実装メーカーの日常業務に直結しており、IPAが止まれば製造ラインそのものが止まる。
製造現場でIPAが止まると何が起きるか
基板実装の現場では、IPAは以下のような用途で日常的に大量消費されている。
はんだ後のフラックス残渣洗浄(リフロー後・フロー後)
部品・基板の前処理(油脂・異物除去)
メタルマスクの洗浄(スクリーン印刷後)
治具・ノズルなどの定期洗浄
これらはいずれも製造品質に直結する工程であり、代替なしに省略することはほぼ不可能だ。
2021年の半導体不足が深刻化した局面でも、需要急増によるIPA逼迫が報告されており、一部の実装メーカーでは洗浄工程の一時停止や代替品への切り替えを余儀なくされた前例がある。
(参考:経済産業省「素材産業を巡る動向」https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/chemistry/index.html)
今回はそのときよりも川上の問題が深刻であるため、IPAの逼迫度合いはより高くなる可能性がある。
医療・半導体業界との三つ巴の争奪戦
IPAは電子部品製造だけでなく、医療機器(消毒用アルコールの原料)や半導体製造(ウェハ洗浄)でも大量に使われる素材だ。
ナフサ供給が絞られると、これら3つの産業が同じIPAの奪い合いをする構図になる。
医療分野は社会的緊急性が高く、政府による優先供給の対象になりやすい。
半導体製造は経済安全保障の観点から優先度が高い産業として扱われる傾向がある。
その結果、電子部品・基板実装業界のIPAへのアクセスが後回しになるリスクが現実的に存在する。
代替手段として有望なのが、炭化水素系洗浄剤(ハイドロカーボン系クリーナー)への切り替えだ。
バーテック、花王、スリーエム(3M)などが製品を供給している。
ただし、炭化水素系洗浄剤は引火点が低いものが多く、消防法上の危険物取り扱い区分が変わるケースがある。
設備改造や防爆対応が必要になる場合もあるため、切り替えには事前の設備評価と法令確認が不可欠だ。
今すぐ動ける対策:短期・中期・長期のロードマップ
リスクの構造が把握できたら、次は行動だ。
ここでは購買・調達部門が主導して動ける対策を、時間軸別に整理する。
短期対策(0〜4週間)
今週中にできることから始める。
まずやるべきは、影響を受けやすい材料カテゴリー(フラックス・洗浄剤・アンダーフィル・PCB材料)の現在庫水準を一覧化することだ。
在庫日数が30日を切っているものは、即座に追加発注のアクションに入る。
ただし、同業他社が一斉に動き出すため、早い者勝ちの状況が生じやすい。
「まず確保してから考える」という判断を、経営層に上げる準備をしておく必要がある。
次に、主要サプライヤー全社に対して、現時点での在庫状況・生産能力・今後の価格見通しをヒアリングする。
電話やメールだけでなく、可能であれば訪問・オンライン会議で情報を直接引き出すことを勧める。
表面的な「問題ありません」という回答の裏に、どの程度の余裕があるかを引き出すことが重要だ。
水溶性フラックスと純水洗浄の組み合わせへの切り替えも、短期的に有効な選択肢だ。
水溶性フラックスであればIPA洗浄が不要になるケースがあるため、IPAリスクそのものを回避できる。
ただし、水洗対応の基板設計・設備・廃水処理の要否を事前に確認することが必要だ。
中期対策(1〜6ヶ月)
ノークリーンフラックス(低残渣タイプ)の採用拡大が、最も現実的な中期対策のひとつだ。
ノークリーンタイプはフラックス残渣が少なく、洗浄工程そのものを省略または簡略化できる。
洗浄剤の消費量を大幅に減らせるため、IPA不足への対応力が高まる。
ただし、ノークリーンフラックスへの切り替えには、顧客の承認プロセスや製品信頼性試験が必要になる場合があるため、今から着手しないと6ヶ月後に間に合わない。
調達先の地理的分散も重要な中期施策だ。
中東以外の産地からナフサを調達する動きとして、米国産(シェールガス由来のエチレン・プロピレン)や東南アジア産の原料ルートを構築することが、Tier1サプライヤーを通じて可能かどうかを確認する。
自社では直接原油を買わなくても、Tier1サプライヤーの調達先分散を確認・要求することは、購買部門の重要な機能だ。
エポキシ代替材料の評価も中期的に着手すべき課題だ。
シアネートエステル系樹脂やBMI(ビスマレイミド)系樹脂は、エポキシ代替として高温・高信頼性用途に採用が進んでいる。
ただし、切り替えには材料特性の評価と工程条件の最適化が必要なため、早期着手が鍵になる。
長期対策(6ヶ月以降)
Tier2・Tier3まで可視化できるサプライチェーン管理体制の構築が、今回の危機が突きつけた最大の宿題だ。
多くの企業では、Tier1(直接仕入れ先)の情報しか把握できていない。
Tier2(Tier1の仕入れ先)・Tier3(さらにその上流)まで追跡するには、デジタルツールの導入と、取引先との情報共有協定が必要になる。
経済産業省も「サプライチェーン強靭化」を産業政策の重点課題として位置づけており、支援策の活用も検討に値する。
(参考:経済産業省「通商白書2023 サプライチェーン強靭化」https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2023/index.html)
国内石油化学産業への政策的支援・石油化学原料の国家備蓄制度の拡充についても、業界団体を通じた働きかけを検討すべき時期に来ている。
日本電子回路工業会(JPCA)や日本電子部品信頼性センター(RCJ)などを通じた業界団体レベルでの情報共有・政策要請も、長期的な業界レジリエンス向上につながる。
(参考:日本電子回路工業会(JPCA)https://www.jpca.or.jp/)
FAQ:よくある質問と回答
Q1. 自社は大手サプライヤーから直接仕入れているので問題ないのでは?
大手サプライヤーであっても、その原料はナフサ由来の化学品に依存している。
大手ほど在庫バッファを持っているため、影響が出るタイミングが後ろ倒しになるだけで、リスクが消えるわけではない。
今対応できているのは「在庫があるから」であり、その在庫がいつまで持つかが問題だ。
Q2. ノークリーンフラックスに切り替えるだけでIPA問題は解決するのか?
ノークリーンフラックスへの切り替えはIPA消費量の大幅削減に効果的だ。
ただし、すべての製品・工程に適用できるわけではなく、残渣が信頼性に影響を与えるケースもある。
顧客承認の取得・信頼性試験の実施が必要になるため、早期着手が前提条件になる。
Q3. 代替洗浄剤に切り替える際の法令対応はどうすればよいか?
炭化水素系洗浄剤(ハイドロカーボン系)は消防法の危険物(第四類)に該当するものが多く、保管量や設備に応じた届け出・設備改造が必要になる場合がある。
切り替えを検討する際は、所轄消防署への事前相談と、洗浄剤メーカーの技術担当への相談を同時並行で進めることを推奨する。
Q4. 今すぐ在庫を積み増しすべきか、様子見すべきか?
明確に勧めるのは「今すぐ動く」だ。
過去の事例(2021年樹脂・半導体不足)を見ると、「様子見」を選んだ企業は軒並み3〜6ヶ月後に納期遅延・操業縮小を余儀なくされた。
積み増しのコストより、ライン停止のコストの方が圧倒的に大きい。
Q5. 中東情勢が改善すれば、すぐに供給は回復するのか?
政治情勢が改善しても、サプライチェーンの回復には一定の時間がかかる。
生産設備の再稼働・在庫の再充填・物流の正常化が必要であり、通常は数週間から数ヶ月のタイムラグが存在する。
緊急事態が収束した後も、調達環境が平時に戻るまでの間は予断を許さない状況が続く。
Q6. サプライヤーからまだ何も通知が来ていないが、それは安全ということか?
通知が来ていないのは「まだ問題が顕在化していない」または「情報共有が遅れている」どちらかの可能性がある。
供給不足が顕在化してから連絡が来るのでは遅い。
通知を待つのではなく、こちらから能動的に情報収集することが購買部門の役割だ。
まとめ:「対岸の火事」ではない、今こそ動くべき理由
TOTOの受注停止は、住宅設備業界だけの問題ではなかった。
それは、ナフサを起点とする石油化学製品が、あらゆる製造業の基盤に深く組み込まれているという事実を、あらためて可視化した出来事だ。
基板実装業界にとっても、フラックス・洗浄剤・エポキシ系樹脂・PCB材料と、製造工程のあらゆる場面にナフサ由来素材が存在している。
ホルムズ海峡の事実上の封鎖が長期化すれば、数週間以内に日本国内のEMS各社・材料メーカーに納期遅延・価格改定・供給停止通知が連鎖する現実的シナリオが存在する。
今すぐ動ける対策から始めてほしい。
在庫の現状把握、サプライヤーへのヒアリング、代替材・代替ルートの評価、この3点を今週中に着手することが、3ヶ月後の自社の製造ラインを守ることにつながる。
購買・調達部門がこのリスクを可視化し、経営層に伝え、先手を打てるかどうかが、今まさに問われている。







