設計会社とEMSが別のとき、誰が何を決める?発注者を含めた三者分担表で「対応漏れ」をなくす方法

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設計は設計会社に、量産はEMSに。

そんな体制で開発を進めている方から、同じ相談を受けることが少なくありません。

「回路の軽微な修正、これはどちらが決めることになっていたんだっけ」

「部品が急に生産終了になったが、代替品の選定は誰の仕事なのか」

「検査で不良が出たが、原因究明は誰が主導するのか」

こうした場面で手が止まってしまう理由は、担当者の能力や努力の問題ではありません。

設計会社とEMSが別会社である以上、契約書には成果物の受け渡しは書かれていても、量産開始後に日々発生する判断の所在までは書かれていないことがほとんどだからです。

この記事では、発注者・設計会社・EMSという三者の間で起こりやすい「対応漏れ」を防ぐために、回路修正、部品変更、検査仕様、不良解析という四つの業務について、誰が発議し、誰が承認し、誰が実行するのかを整理した三者分担表の作り方を解説します。

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なぜ「設計会社」と「EMS」が別会社だと、分担があいまいになるのか

設計会社とEMSが別会社になっている場合、業務の分担があいまいになりやすいのは、契約の対象が主に初期の成果物に限定されているからです。

設計会社との契約には、回路図やガーバーデータ、部品表(BOM)といった成果物の納品条件が明記されます。

EMSとの契約には、製造数量や納期、単価が明記されます。

しかし、量産が始まった後に発生する「想定外の出来事」への対応手順まで契約書に書き込まれているケースは、実務上あまり多くありません。

たとえば、EMSが実装中に部品のフットプリントがわずかにずれていることに気づいたとします。

このとき、EMSの担当者の頭には「設計側の図面の問題だから、向こうが判断することだろう」という考えがよぎります。

一方で設計会社の担当者は、量産ラインで起きていることをリアルタイムには把握していません。

発注者は、そもそも図面レベルの不整合が起きていること自体を知らされていません。

結果として、誰も悪意なく「相手が対応すると思っていた」状態が生まれます。

これは特定の会社の怠慢ではなく、三社体制という構造そのものが持つ弱点です。

一貫生産を行う一社完結型のEMSであれば、こうした判断は社内の技術部門と製造部門の間で完結します。

しかし設計会社とEMSが別法人であるがゆえに、情報の流れそのものが会社の壁を越える必要があり、その壁を越える設計をあらかじめしておかなければ、判断は宙に浮いたままになります。

三者分担表とは何か、まず考え方を整理する

三者分担表とは、業務ごとに「誰が問題に気づき、誰が技術的な良否を判断し、誰が最終的な実行可否を承認し、誰が作業を実施し、誰に結果を共有するのか」を一枚の表に整理したものです。

分担表が必要になる理由は、口頭やその場の空気で決めた分担は、担当者が異動したり、次の量産ロットで別の人が対応したりした瞬間に引き継がれなくなるからです。

文書として残しておかなければ、せっかく整理した分担も一過性のもので終わってしまいます。

考え方の土台としては、品質マネジメントの分野でよく使われるRACI(実行責任者、説明責任者、相談先、報告先を分ける考え方)が参考になります。

ただし、RACIはもともと一つの組織の中で役割を整理するための手法です。

発注者、設計会社、EMSという三つの独立した会社をまたいで運用する場合は、単なる役割整理にとどまらず、誰が最終的な意思決定権(いわゆる承認者)を持つのかを契約や発注書面と紐づけておく必要があります。

そうしなければ、分担表はあくまで「お願いベースの申し合わせ」にとどまり、いざというときに実効性を持ちません。

三者分担表を機能させるコツは、業務を大きくまとめすぎないことです。

「品質に関すること」のようにまとめてしまうと、結局どこまでが誰の担当か曖昧になります。

回路修正、部品変更、検査仕様、不良解析というように、実際に現場で判断が必要になる場面ごとに分けて整理することで、初めて実務で使える表になります。

回路修正(設計変更)の分担、誰が発議し誰が承認するか




回路修正が必要になったとき、発議、技術判断、費用承認、実施という四つの役割を、あらかじめ三者のどこに置くかを決めておくことが欠かせません。

理由は単純で、回路修正は気づく人と、良否を判断できる人と、費用や納期への影響を判断できる人が、たいてい別の会社に分かれているからです。

実装工程で部品同士の干渉に気づくのは多くの場合EMSです。

一方で、その修正が製品の電気的な性能や規格適合性に影響しないかを判断できるのは設計会社です。

そして、その修正によって発生する追加コストや納期の遅れを許容できるかどうかを判断できるのは発注者です。

現場でよく起きるのが、EMSが軽微だと考えた修正を独自の判断で実施してしまうケースです。

パターンの一部をカットしてジャンパー線で接続する、いわゆる現場対応がその典型です。

作業者の技術力が高いほど、この場での応急処置がスムーズにできてしまうため、結果的に設計会社に報告されないまま量産が進んでしまうことがあります。

これは決して手抜きではなく、むしろ現場の技術力の高さゆえに起きる落とし穴だという点は、見落とされがちです。

これを防ぐ実践的な方法は、修正の重大度を三段階程度に区分し、どのレベルまでならEMSの判断で先行対応してよいか、どのレベルからは設計会社の事前承認が必須かを、量産開始前に三者で合意しておくことです。

あわせて、修正内容を記録するための簡単な変更履歴(いわゆるECN、エンジニアリング変更通知)のフォーマットを共有しておくと、誰が見ても後から経緯を追えるようになります。

分担そのものより、この「記録して共有する」という一手間があるかどうかが、量産後の混乱を大きく左右します。

部品変更(代替品・生産終了対応)の分担、三者の連携ポイント

部品変更への対応では、生産終了(EOL)情報を最初に受け取る立場の会社と、代替品の技術的な妥当性を判断できる会社が異なるという構造を理解しておく必要があります。

部品メーカーが発行するPCN(製品変更通知)や生産終了案内は、実務上、部品を発注しているEMSや、EMSと取引のある商社に最初に届くことがほとんどです。

一方で、その部品を別の型番に置き換えてよいかどうかを技術的に判断できるのは、回路設計を行った設計会社です。

そして、代替品への切り替えに伴う認証の再取得や在庫評価、コストへの影響を最終的に受け入れるかどうかを判断するのは発注者です。

ここでよく起きる問題は、情報を最初に掴んだEMSから設計会社への連携が、量産計画に対して後手に回ることです。

生産終了の案内から最終発注可能日(いわゆるラストタイムバイ)までの猶予は、部品によって数か月から一年程度とまちまちです。

この期間の中でEMSから設計会社、設計会社から発注者へと情報が伝わり、代替品の評価と量産への反映が完了しなければなりません。

連携の起点が明確になっていないと、猶予期間の大半を「誰が最初に動くべきか」を確認するだけで消費してしまいます。

実務上の注意点として、代替品への置き換えは型番が似ていても電気的特性やパッケージ形状、はんだ耐熱性などが微妙に異なることがあり、単純な互換品として扱うと後工程で不具合につながるリスクがあります。

この点については、電子情報技術産業協会(JEITA)が公開している電気・電子機器用部品の安全アプリケーションガイドのように、部品の安全な適用に関する考え方を機器メーカーと部品メーカーの双方の視点で整理した資料も参考になります。

代替品を採用する際は、型番の見た目の近さだけで判断せず、必ず技術的な等価性を設計会社が検証したうえで発注者が承認するという順序を崩さないことが重要です。

検査仕様の分担、受入検査から出荷検査までの基準は誰が決めるか




検査仕様の分担で最初に決めておくべきは、受入検査、工程内検査、出荷検査という三つの検査段階それぞれについて、基準を定義する会社と、その基準に基づいて実際に検査を実施する会社を分けて整理することです。

一般に、部品や基板を受け入れる段階の受入検査基準は、購買条件と紐づいてEMSが実務的な検査項目を提案することが多くなります。

実装後の外観や電気特性を確認する工程内検査(AOI、ICT、X線検査など)は、EMSが保有する設備に合わせて具体的な検査方法が決まりますが、どの項目を必須にするかという要求そのものは、製品の機能要件を把握している設計会社が定義すべき領域です。

最終的な出荷検査における合格、不合格の判定基準は、製品の品質保証責任を負う発注者が最終承認するのが基本の形です。

ここで見落とされやすいのが、外観検査の合否基準として広く使われているIPC-A-610という国際規格の中に、クラス1、クラス2、クラス3という三段階の判定基準がある点です。

どのクラスを採用するかを発注者が明示的に指定していない場合、EMSは自社の標準工程に合わせてクラス2を前提に検査を進めることが少なくありません。

これが、コンシューマー向け製品では過剰品質によるコスト増、逆に長期信頼性が求められる産業用途では不足した品質という、双方向のミスマッチを生む原因になります。

もう一つの実践上の注意点は、三者が同じ言葉を違う意味で使ってしまうことです。

プリント基板の設計、製造、実装に関する用語は、JIS C 60194として日本産業規格でも整理されていますが、社内の慣用表現とずれていることは珍しくありません。

検査仕様書を作成する段階で、判定基準の数値だけでなく、使用する用語の定義まで三者ですり合わせておくと、後になって「合格の意味が違った」という事態を避けられます。

不良解析の分担、発生から是正処置までの役割整理

不良解析における分担で最も重要なのは、不良を最初に発見した会社が行う一次切り分けの権限と手順を、あらかじめ三者で合意しておくことです。

不良は、EMSの検査工程で見つかる場合と、発注者が市場や顧客からのクレームとして受け取る場合の、大きく二通りの経路で発覚します。

どちらの経路であっても、まず必要になるのは外観確認や動作再現といった一次切り分けで、これは物理的に基板を保有しているEMSが担うのが現実的です。

しかし、その不良が設計上の要因によるものか、製造工程の要因によるものか、あるいは部品自体の要因によるものかという原因究明の段階になると、設計会社の技術的な関与が欠かせなくなります。

是正処置についても、製造工程側の是正(はんだ条件の見直しなど)はEMSが、設計側の是正(部品定数や回路の見直しなど)は設計会社が担当し、その是正内容と再発防止策を最終的に受け入れるかどうかは発注者が判断するという流れが基本になります。

現場でよく起きる対立は、「これは設計不良なのか、製造不良なのか」という二択で責任の押し付け合いになることです。

実際には、設計上のマージンがぎりぎりの状態と、製造工程のばらつきが重なって初めて顕在化する不良も多く、原因を単純な二択で切り分けようとすること自体が、解析を遅らせる原因になっているケースを何度も見てきました。

自動車業界を中心に広く使われている8Dレポートのような、原因を発生要因と流出要因の両面から追跡する枠組みは、こうした押し付け合いを避けるうえでも有効です。

分担表に落とし込む際は、不良解析を「発見」「一次切り分け」「原因究明」「是正処置の立案」「是正処置の承認」「水平展開の判断」という段階に分け、各段階で主担当となる会社と、必ず関与すべき会社を分けて記載しておくことをおすすめします。

一次切り分けまでは迅速さを優先してEMS主導で進め、原因究明からは設計会社と発注者が必ず同席する、という運用にしておくと、初動の遅れと責任の所在の曖昧さの両方を防ぎやすくなります。

四つの業務をまとめた三者分担表の記入例




ここまで解説してきた四つの業務について、発議、技術判断、最終承認、実施という役割を一枚の表にまとめると、次のようになります。

自社の体制に合わせて会社名や部署名を書き換えながら、たたき台として活用してください。

業務発議(気づく)技術判断最終承認実施
回路修正(設計変更)EMS/発注者設計会社発注者EMS
部品変更(代替品対応)EMS(購買)設計会社発注者設計会社+EMS
検査仕様の設定設計会社設計会社+EMS発注者EMS
不良解析EMS/発注者設計会社+EMS発注者EMS(工程是正)/設計会社(設計是正)

この表はあくまでひとつの型です。

自社が設計会社に近い立場で発注者との調整力を強く持っている場合や、EMSが単なる製造代行ではなく設計支援(DFM提案など)まで担っている場合は、技術判断の欄をEMS寄りに調整するなど、実態に合わせて柔軟に書き換えてください。

大切なのは表の細部を完璧にすることではなく、三者が同じ表を見ながら「ここは違う、うちはこうしている」と言い合える状態を作ることです。

分担表を実際に作る手順

分担表を実効性のあるものにするためには、次の五つの手順で進めることをおすすめします。

一つ目は、業務の洗い出しです。

回路修正、部品変更、検査仕様、不良解析に加えて、自社特有の判断が必要になる場面(廃却判断、量産中の仕様変更、代替材料の採用など)があれば書き出しておきます。

二つ目は、洗い出した業務ごとに、発議、技術判断、最終承認、実施、情報共有先という役割を割り振ることです。

このとき、一人で作らず、三者それぞれの担当者から意見を聞きながら進めることが重要です。

発注者だけで作った分担表を一方的に提示すると、設計会社やEMSからは「実態を知らずに決められた」という反発を招きかねません。

三つ目は、三者が同じ場に集まって内容をすり合わせることです。

オンライン会議でも構いませんが、書面のやり取りだけで済ませず、疑問点をその場で解消できる機会を一度は設けることをおすすめします。

四つ目は、分担表を発注書面や契約書の別紙として位置づけることです。

資本金の条件などによっては、発注者と設計会社、発注者とEMSの取引に、2026年1月に施行された中小受託取引適正化法(通称:取適法、旧下請代金支払遅延等防止法)が適用され、発注内容を明記した書面の交付が義務づけられる場合があります。

分担表を発注書面に添付する形にしておけば、法令対応と実務上の役割整理を同時に満たすことができます。

五つ目は、定期的な見直しです。

分担表は一度作って終わりにするのではなく、設計変更や部品の生産終了、EMSの変更といった節目が来るたびに、半年から一年に一度は内容を見直す運用にしておくと、実態とのずれを防げます。

分担があいまいなまま進めると起きること

分担表を作らないまま量産を進めた場合に起きやすいのは、量産直前や量産中の想定外のタイミングで、判断が止まってしまうことです。

よくあるパターンとしては、出荷直前になって検査基準の解釈の違いが発覚し、出荷判定そのものが止まってしまうケースがあります。

また、部品の生産終了情報が量産計画のぎりぎりのタイミングで発覚し、代替品の評価が間に合わないまま生産計画全体を見直さざるを得なくなるケースもあります。

現場で行われた軽微な設計修正が正式な図面に反映されないまま量産が続き、図面と実物のあいだに気づかれない不整合(いわゆるコンフィグレーションのずれ)が蓄積していくケースも少なくありません。

不良解析の場面では、原因究明の責任の所在が曖昧なまま時間だけが過ぎ、対応の遅れが顧客からのクレームの深刻化につながることもあります。

これらに共通しているのは、担当者の能力不足ではなく、誰が最初に気づき、気づいた内容をどこに報告すればよいのかという経路そのものが設計されていない、という点です。

分担表を作る作業は、うまくいっているときには効果を実感しにくいものです。

しかし、何かが起きたときに初めて、その効果が明確になります。

問題が起きてから分担を決めるのではなく、平時のうちに三者で合意しておくことが、結果的に一番のコスト削減につながります。

よくある質問(FAQ)




Q1. 発注者が技術的な詳細に詳しくない場合、分担表はどう作ればよいですか

発注者自身がすべての技術的な判断基準を細かく把握している必要はありません。

発注者の役割は、技術的な良否の判断を設計会社に委ね、その判断結果を踏まえてコストや納期への影響を最終承認することです。

分担表を作る際は、発注者の欄に「設計会社の判断を踏まえて承認する」という形で明記しておけば、技術知識の有無にかかわらず運用できます。

Q2. 設計会社とEMSの間にNDA(秘密保持契約)しかなく、業務委託契約がない場合はどうすればよいですか

NDAだけでは、量産後の判断の分担までは規定されません。

まずは分担表を三者で合意したうえで、簡易な覚書(業務範囲や責任分担に関する確認書)の形で書面化することをおすすめします。

正式な契約書の締結には時間がかかることが多いため、覚書レベルでも書面として残しておくことに意味があります。

Q3. 分担表を作る音頭は誰が取るべきですか

多くの場合、発注者が主導するのが自然です。

発注者は設計会社とEMSの双方と契約関係にある唯一の立場であり、両者の間に立って調整できる位置にいるためです。

ただし、発注者に技術的な知見が少ない場合は、設計会社に叩き台の作成を依頼し、発注者が最終的な確認と合意形成を担うという分担でも構いません。

Q4. 小ロットの試作段階でも分担表は必要ですか

試作段階から作っておくことをおすすめします。

試作段階で発生した設計修正や検査基準のすり合わせの経緯は、量産移行時にそのまま重要な判断材料になります。

量産が始まってから慌てて整理するよりも、試作段階の早い時期に簡易版の分担表を作り、量産に向けて更新していく方が、結果的に手間が少なくなります。

Q5. EMSを途中で変更する場合、分担表はどのように引き継げばよいですか

分担表そのものに加えて、それまでの回路修正の履歴や部品変更の経緯、過去の不良解析の記録を、新しいEMSに引き継ぐことが重要です。

分担の型だけを渡しても、判断の背景にある経緯が伝わらなければ、新しいEMSは過去と同じ判断基準で動くことができません。

EMSの切り替えは、分担表を見直す絶好の機会でもあるため、このタイミングで内容を最新の体制に合わせて更新することをおすすめします。

まとめ

設計会社とEMSが別会社である体制は、それぞれの専門性を活かせる合理的な選択です。

一方で、量産開始後に発生する日々の判断は、契約書の成果物リストには書かれていないことがほとんどで、そこにこそ「対応漏れ」が生まれる余地があります。

回路修正、部品変更、検査仕様、不良解析という四つの業務について、誰が発議し、誰が技術判断を行い、誰が最終承認し、誰が実施するのかを三者分担表として整理しておくことで、想定外の出来事が起きたときにも、迷わず動ける体制を作ることができます。

分担表は一度作って終わりにするものではなく、量産の進行に合わせて三者で見直し続ける、生きたドキュメントとして運用していくことをおすすめします。

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