
1. エグゼクティブサマリー
世界の積層セラミックコンデンサ(MLCC)市場は、2024年から2026年にかけてかつてない構造的転換期を迎えている。
長らく市場を独占してきた日本の村田製作所、TDK、太陽誘電、そして韓国のSamsung Electro-Mechanics(Semco)に対し、中国本土のメーカー群が「国産代替(Domestic Substitution)」の旗印の下、急速にシェアを拡大している。
2024年下半期の時点で、中国MLCCメーカーの合計売上シェアは世界全体の約10%に達し、2019年から4ポイントの上昇を記録した。
この数字は、かつてローエンド品に限定されていた中国製品が、ハイエンドの車載および産業機器向け市場へと浸透し始めている現実を反映している。
本報告書は、中国MLCC産業を牽引するトップ3社、すなわち広東風華高新科技(Guangdong Fenghua Advanced Technology)、潮州三環グループ(Chaozhou Three-Circle Group / CCTC)、深圳宇陽科技(Shenzhen Eyang Technology)に焦点を当て、その生産能力、売上動向、納入先エコシステムを徹底的に分析するものである。
また、ユーザーの関心が高い2026年に向けた日本メーカーとの価格・性能比較についても、技術的指標と市場データを基に詳細な予測を行う。
分析の結果、以下の主要なトレンドが明らかになった:
- 生産能力の爆発的拡大:風華高新科技の「祥和プロジェクト」や宇陽科技の「滁州5000億個プロジェクト」など、国家戦略に裏打ちされた設備投資が結実しつつあり、汎用品(コモディティ)領域では日本メーカーを価格競争力で圧倒する体制が整いつつある。
- 「チャイナ・フォー・チャイナ」サプライチェーンの確立:米中デカップリングの影響を受け、Huawei、Xiaomi、BYDといった中国の巨大OEMが、意図的に国内サプライヤーを採用する動きを加速させている。これにより、中国メーカーは技術的な成熟度が完全でなくとも、実戦投入を通じて学習する機会を得ている。
- 2026年の価格・性能展望:2026年に向けて、汎用MLCC(スマートフォンや家電向け)の価格差は縮小し、中国メーカー製品がデファクトスタンダード化する可能性がある。一方で、AIサーバーやEVのパワートレイン(駆動系)に用いられる高信頼性・高電圧部品においては、村田製作所やTDKの技術的優位性は揺るがず、中国メーカーとの性能ギャップは依然として存在するものの、インフォテインメント系などの「準車載」領域では中国勢がシェアを奪う構図となる。
2. マクロ環境と市場背景:なぜ今、中国メーカーなのか
2.1 地政学的リスクと「産業の米」の確保
MLCCは「電子産業の米」と称され、スマートフォン1台に約1,000個、電気自動車(EV)1台には10,000〜18,000個が搭載される極めて重要な受動部品である。
米中貿易摩擦やパンデミックによるサプライチェーンの分断を経験した中国政府および企業にとって、この基礎部品を日韓台からの輸入に依存することは安全保障上の重大なリスクと認識された。
この文脈において、中国の「第14次5カ年計画」およびそれに続く産業政策では、基礎電子部品の内製化率向上が重要課題として掲げられている。
KOTRA(大韓貿易投資振興公社)の分析によれば、中国のITハードウェアOEMが世界的な影響力を増す中、彼らは戦略的に国内サプライチェーンを育成しており、これが中国MLCCメーカーの急成長を支える最大の需要ドライバーとなっている。
2.2 市場階層の構造変化
世界市場は伝統的に以下の3層構造を形成していたが、その境界線は2026年に向けて曖昧になりつつある。
- Tier 1(日本):村田製作所、TDK、太陽誘電。材料科学の圧倒的な蓄積を持ち、セラミック粉末の精製から一貫生産を行う。車載パワートレイン、航空宇宙、医療、ハイエンドスマホ向け超小型品(008004サイズなど)を独占。
- Tier 2(韓国・台湾):Samsung Electro-Mechanics(Semco)、Yageo、Walsin。大規模量産能力を持ち、民生機器から車載の一般用途までをカバー。日本勢を追随する技術力を持つ。
- Tier 3(中国本土):風華高新科技、CCTC、宇陽科技。かつては家電やローエンドスマホ向けが主戦場であったが、現在はTier 2の市場を侵食し、一部Tier 1の領域(車載インフォテインメント、基地局)へ進出している。
3. 中国トップ3メーカーの徹底分析:生産・売上・納入先
3.1 広東風華高新科技 (Guangdong Fenghua Advanced Technology)
企業概要と立ち位置:
広東省肇慶市に拠点を置く風華高新科技は、中国最大の受動部品総合メーカーである。
1984年の設立以来、国有企業としての背景を持ち、中国の電子部品産業の「長男」として政策的支援を一身に受けてきた。抵抗器、インダクタ、コンデンサの全ラインナップを持つが、近年最も注力しているのがMLCCである。
生産状況と設備投資(祥和プロジェクト):
風華高新科技の成長戦略の中核にあるのが、大規模な生産能力増強計画「祥和プロジェクト(Xianghe Project)」である。
- 第3期拡張の現状:祥和工業団地におけるハイエンドコンデンサ基地建設プロジェクトは、月産能力を劇的に引き上げることを目的としている。2024年から2025年にかけて、この新拠点の稼働率は着実に向上しており、これを含めた全社のMLCC月産能力は約600億個規模に達しつつあると推定される。
- 技術的焦点:単なる増産ではなく、技術的なボトルネックであった「高誘電率セラミック粉末」の自社開発や、焼成プロセスの高度化に投資している。特に、ハイエンドMLCC向けの高温・高圧対応磁器粉末の開発に成功しており、中・大容量MLCCの耐圧性と信頼性を大幅に向上させた。
売上と財務パフォーマンス(2024年):
2024年度の年次報告書によると、風華高新科技は力強い回復を見せている。
- 売上高:49億3900万人民元(約1050億円)を記録し、前年比+17.00%の成長を達成した。
- 純利益:親会社株主に帰属する純利益は3億3700万人民元で、前年比+94.47%という驚異的な伸びを示した。これは、稼働率の向上と製品ミックスの良化(高付加価値品の比率向上)によるものである。
- 収益性:粗利益率は19.17%となり、前年から4.82ポイント改善した。特に2024年第4四半期の売上は前年同期比約40%増と加速しており、2025年から2026年に向けたモメンタムの強さを示唆している。
主要納入先とサプライチェーン:
- 通信・ネットワーク:HuaweiやZTEといった通信機器大手への供給が主力である。5G基地局向けの産業用MLCCにおいて、日本メーカーからの切り替え需要を取り込んでいる。
- 家電・IoT:Midea(美的)、Haier(ハイアール)、Gree(格力)などの白物家電大手に対し、電源回路や制御基板用コンデンサを大量供給している。
- 自動車:新エネルギー車(NEV)向けの車載グレード品の認定取得を進めており、国内のEV新興メーカーやティア1サプライヤーへのサンプル出荷から量産採用へとフェーズを移行させている。
3.2 潮州三環グループ (Chaozhou Three-Circle Group / CCTC)
企業概要と立ち位置:
潮州三環(CCTC)は、単なる部品メーカーではなく「材料の巨人」である。
光通信用セラミックフェルールで世界シェアトップを誇り、固体酸化物形燃料電池(SOFC)隔膜でも市場をリードする。
この強力な材料技術(セラミック粉体の配合・成形技術)をMLCCに応用している点が最大の強みであり、コスト競争力と利益率の高さにおいて他社を凌駕する。
生産状況と設備投資:
CCTCは「5G通信用高品質積層セラミックコンデンサ」および「大容量シリーズ」の生産能力増強に巨額の資金を投じている。
- 生産能力:計画が完了した段階での年間生産能力は、既存能力に加え5,400億個(月産換算で約450億個の増強)が見込まれている。2024年後半から2025年にかけて、月産能力は450〜500億個のレベルで安定稼働していると推測され、Tier 2メーカーに匹敵する規模となっている。
- 垂直統合:CCTCはMLCCの主要原材料であるセラミック粉末を自社で製造・調合できる数少ない中国メーカーの一つである。これにより、原材料市況(銀、銅、チタン酸バリウムなど)の変動に対する耐性が強く、安定した原価管理が可能となっている。
売上と財務パフォーマンス(2024年):
CCTCの財務基盤は強固であり、MLCC以外の事業も好調である。
- 売上高:2024年の総売上高は約10.2億米ドル(約73.7億人民元)で、前年比+26.91%の大幅増収を記録した。
- 車載比率:2025年初頭の株主総会での発表によれば、車載用MLCCの売上構成比は全MLCC売上の15%に達しており、2025年末までに25%を超えることを目標としている1。
主要納入先とサプライチェーン(BYDとの連携):
- BYD:CCTCにとって最も戦略的なパートナーは、中国最大のEVメーカーBYDである。CCTCはBYDに対し、数千億ウォン規模(相当額)の大型供給契約を締結しており、すでに大量の出荷が開始されている。これは、CCTCの製品がEVの実用環境(振動、温度変化)に耐えうることを証明する重要なマイルストーンである。
- その他:通信機器向けや、データセンターのサーバー電源向けにも供給を行っており、特に大サイズ・高耐圧品に強みを持つ。
3.3 深圳宇陽科技 (Shenzhen Eyang Technology)
企業概要と立ち位置:
深圳に本社を置く宇陽科技(Eyang)は、モバイル機器向けの「小型化」と「高周波特性」に特化したスペシャリストである。
風華やCCTCが幅広いサイズをカバーするのに対し、Eyangは0201(0603ミリ)サイズや01005(0402ミリ)サイズ、さらには最先端の008004(0201ミリ)サイズといった超小型品に経営資源を集中している。
生産状況と設備投資(滁州プロジェクト):
- 滁州拠点の拡大:安徽省滁州市において、「年間生産能力5,000億個」を目指す巨大プロジェクトを進行中である。既存の東莞工場と合わせた月産能力は、かつての200億個レベルから、新工場の完全稼働により400〜500億個(年間5,000〜6,000億個)へと倍増する計画である。
- 微細化技術:中国メーカーとして初めて008004サイズの量産化に成功しており、小型MLCCの生産数量においては世界トップ3の一角を占めると自称している。これは、村田製作所などのTier 1メーカーが支配するスマートフォン向け高密度実装分野への挑戦を意味する。
主要納入先とサプライチェーン:
- スマートフォン:Xiaomi(シャオミ)、OPPO、vivo、Transsion(伝音控股)といった中国スマートフォンメーカーが主要顧客である。特に5GスマートフォンのRFモジュールやカメラモジュール周辺のデカップリング用として大量採用されている。
- ウェアラブル:スマートウォッチやTWS(完全ワイヤレスイヤホン)など、実装スペースが極端に制限されるデバイスにおいて、同社の超小型MLCCが強みを発揮している。
4. 生産能力と市場シェアの比較概要
以下の表は、中国トップ3社の生産能力と主なターゲット市場を整理したものである(2024-2025年推定)。
| メーカー名 | 本社所在地 | 推定月産能力 (2025年時点) | 主要拡張プロジェクト | 2024年売上規模 (概算) | 主力・注力セグメント |
| 風華高新科技 (Fenghua) | 広東省肇慶市 | 約600億個 | 祥和工業団地 (第3期) | 約49.4億元 (+17.0%) | 家電、通信インフラ、産業機器、車載(ボディ系) |
| CCTC (三環集団) | 広東省潮州市 | 約450-500億個 | 高容量・5G向け基地 | 約73.7億元 (+26.9%)* | 車載(EV)、光通信、サーバー電源、産業機器 |
| 宇陽科技 (Eyang) | 広東省深圳市 | 約400-500億個 | 滁州5000億個PJ | 非公開 (Tier 1相当) | スマホ、ウェアラブル、RFモジュール(超小型品) |
*注:CCTCの売上はMLCC以外のセラミック製品(フェルール、SOFC等)を含む全社売上である。
5. 日本メーカーとの比較分析:価格・性能・2026年の展望
ユーザーの核心的な問いである「2026年に向けて日本のメーカーに比べてどうなのか」について、価格(Price)、性能(Performance)、技術ロードマップ(Technology Roadmap)の3つの観点から深掘りする。
5.1 価格競争力 (Price Competitiveness)
現状 (2024-2025年):
中国メーカーのMLCCは、同等スペックの日本製品(村田製作所、TDKなど)と比較して、一般的に15%〜30%安い価格で取引されている。
- 要因:政府の補助金、減価償却費の安さ、そして何より「市場シェア獲得」を優先する戦略的な価格設定(ペネトレーション・プライシング)によるものである。
- 交渉材料化:スマートフォンのBOM(部品表)コストを下げるため、OEMは日本メーカーに対し「中国メーカーへの切り替え」をチラつかせて値下げを迫る動きが常態化している1。
2026年の展望 – 「二極化」の進行:
2026年に向けて、価格動向は製品カテゴリによって二極化が進むと予測される。
- 汎用品(スマホ・家電向け):風華の祥和プロジェクトや宇陽の滁州工場がフル稼働することで、0402/0603サイズの汎用MLCCは供給過剰気味となり、価格破壊が進む。ここでは中国メーカーが「価格リーダー」となり、日本メーカーはこの領域(レッドオーシャン)から撤退、または縮小を加速させるだろう。価格差はさらに広がるか、日本勢の撤退により中国製品が標準価格となる。
- ハイエンド品(車載パワートレイン・AIサーバー):原材料(銀、パラジウム等)の高騰や、高度な積層技術が必要なため、価格は高止まりする。中国メーカーはこの領域に参入するために、日本勢より10〜20%安い価格を提示するが、品質リスクを懸念する顧客に対し大幅なディスカウントが必要となる。CCTCのような自社材料を持つ企業は、原材料インフレ下でも比較的安定した価格を提示できる強みを持つ。
5.2 性能と信頼性 (Performance & Reliability)
日本メーカー(特に村田製作所)と中国メーカーの間には、依然として明確な「技術の壁」が存在する。
それは「積層数(容量密度)」と「信頼性(車載グレード)」である。
技術的なギャップ:誘電体の薄層化と積層技術
- 日本(村田製作所):誘電体シートの厚さを0.5µm以下にまで薄くし、それを1,000層以上積み重ねる技術を確立している。これにより、0603サイズで100µFといった驚異的な容量を実現し、AIサーバーの電源ラインなど極小スペースで大電流を扱う用途で独占的な地位にある。
- 中国(トップ3社):現在の量産レベルは1.0µm〜2.0µm程度、積層数は数百層レベルが主力である。1µm以下の薄層化技術も開発中(プロトタイプ段階)ではあるが、量産時の歩留まり(Yield Rate)や均一性において日本勢に数年〜5年程度の遅れをとっているとされる。
- 2026年の到達点:2026年までに、中国メーカーは現在の「ミドルエンド」技術を完全にコモディティ化し、スマホやPCに必要なスペックの90%以上をカバーできるようになるだろう。しかし、AIサーバーのGPU直下に配置されるような超高性能品に関しては、2026年時点でも村田製作所の優位は揺るがないと見られる。
車載グレードの壁:AEC-Q200とミッションクリティカル
自動車向けMLCCは、人命に関わるため極めて高い信頼性が求められる。
- インフォテインメント(情報系):カーナビやダッシュボードなどの「ボディ系」用途では、風華やCCTCの製品はすでに十分な性能を持っており、BYDなどの中国EVメーカーを中心に採用が広がっている。ここは2026年までに中国メーカーが主戦場とする領域である。
- パワートレイン(駆動系):インバータやBMS(バッテリー管理システム)など、高電圧(800Vシステム)・高温(150℃以上)・高振動に晒される箇所では、TDKや村田の「X7T/X7R」特性を持つ製品が絶対的な信頼を得ている。CCTCはBYDとの連携で実績を積んでいるものの、グローバルな自動車メーカー(トヨタ、VWなど)がパワートレインに中国製MLCCを採用するには、2026年はまだ「評価・検証」の段階であり、本格採用はそれ以降になる可能性が高い。
5.3 2026年技術ロードマップ比較表
| 比較項目 | 日本メーカー (村田, TDK, 太陽誘電) | 中国トップ3 (風華, CCTC, 宇陽) | 2026年の競争状況予測 |
| 主力ターゲット | 車載駆動系(EV), AIサーバー, 医療, 航空宇宙 | スマホ, 家電, 5G基地局, 車載快適装備(EV) | 棲み分け:ハイエンドは日本、ボリュームゾーンは中国 |
| 誘電体技術 | 0.5µm以下の超薄層化, 1000層以上の積層 | 1.0µm前後の量産化, 原材料の内製化進行 | ギャップ縮小:中国勢の歩留まり向上により差は縮まる |
| 車載信頼性 | AEC-Q200完全準拠, 故障率ppbレベル | AEC-Q200取得進行中, BYD等での実績蓄積 | 国内完結:中国国内EVでは採用進むが、輸出車は慎重 |
| 価格戦略 | 高付加価値・プレミアム価格維持 | シェア奪取のためのコストリーダーシップ | 価格破壊:汎用品での日本勢の影響力低下 |
| サプライチェーン | グローバル(全方位) | 「チャイナ・フォー・チャイナ」(国内自給) | デカップリング:中国経済圏での中国製シェアが圧倒的になる |
6. 詳細な納入先エコシステムと「国産代替」の実態
6.1 スマートフォン・IT機器
- OPPO / vivo / Xiaomi:これらのブランドは、ハイエンドモデルの旗艦機種では村田やSemcoを採用しつつ、ミドルレンジ以下のモデルや、充電器・アクセサリー類において宇陽(Eyang)や風華(Fenghua)の採用比率を劇的に高めている。2026年には、中国国内向けモデルの受動部品の過半数が国産化されるシナリオも現実味を帯びている2。
- ODM企業:Wingtech(聞泰科技)やHuaqin(華勤)といった大手ODMは、コストダウン要求が厳しく、中国製MLCCの最大の顧客基盤となっている。
6.2 自動車産業(EV)
- BYD:世界最大のEVメーカーであるBYDは、垂直統合の一環として国産部品の採用に最も積極的である。CCTCとのパートナーシップは象徴的であり、CCTCの車載MLCC売上の大部分をBYDが占めている可能性がある。BYDの輸出拡大に伴い、CCTCの部品も間接的に世界中へ輸出されることになる(「ピギーバック輸出」)。
- 新興EV(NIO, Xpeng):これらメーカーはハイエンドなイメージを重視するため、主要部品には依然として欧米・日本製品を好む傾向があるが、コスト競争の激化により、インフォテインメント系から徐々に風華などの採用検討を始めている。
6.3 産業機器・インフラ
- 5G基地局:中国は世界最大規模の5Gネットワークを構築しており、HuaweiやZTEの基地局には、高信頼性が求められる箇所を除き、風華やCCTCの大容量・高耐圧MLCCが大量に投入されている。米国の制裁下にあるHuaweiにとって、これら国内サプライヤーは生命線である。
7. 結論と示唆
中国のトップ3 MLCCメーカー(風華高新科技、CCTC、宇陽科技)は、もはや「安かろう悪かろう」の代替品メーカーではない。
国家戦略と巨大な内需(EV、5G)を背景に、設備投資と技術開発のサイクルを高速で回しており、2026年には「汎用品の世界工場」としての地位を確立するだろう。
日本メーカーとの比較における結論:
- 価格:2026年時点でも中国メーカーが有利である。特にスマホや一般家電向けのMLCCでは、日本メーカーが太刀打ちできない価格帯が市場標準となる。
- 性能:AIサーバーやEVの心臓部(インバータ等)における最高峰の性能・信頼性では、2026年でも日本メーカーが明確な優位性を保つ。技術格差は縮まりつつあるが、信頼性データの蓄積という「時間」の壁を超えるにはまだ数年を要する。
ユーザーへの提言として、2026年に向けた調達戦略では、「ハイブリッド戦略」が合理的となるだろう。
すなわち、ミッションクリティカルな箇所には引き続き村田製作所やTDKなどの日本製品を採用し、コスト感度の高い汎用回路や、故障時のリスクが低い箇所(インフォテインメント等)では、十分な性能と圧倒的なコストメリットを持つ風華やCCTC、宇陽の製品を積極的に評価・採用することが、競争力を維持する鍵となる。



