

「日本の製造業」と聞くと、多くの人は何を思い浮かべるでしょうか。
精密で高品質、世界に誇る技術力。しかしその一方で、少し堅実で画一的といったイメージを持つ方も少なくないかもしれません。
しかし、その固定観念を鮮やかに覆す、驚くほどユニークな事業展開や企業文化を持つ「ものづくり企業」が日本には数多く存在します。
この記事では、一見すると本業とは全く異なる分野に進出したり、先進的な働き方を実践したりしている、
特に意外性の高い5社を厳選してご紹介します。あなたの「ものづくり」に対するイメージが、きっと変わるはずです。
1. 精密モーターメーカーが、国際宇宙ステーションへ? ― ASPINA(シナノケンシ株式会社)
ASPINAは、自動車のシートベンチレーションや医療用の吸引ポンプなど、小型・精密モーターとその応用製品で世界をリードする技術集団です。
その本業は、地上で人々の「希望」と「快適」を形にするための、極めて高度なハードウェアとソフトウェアの開発製造にあります。
しかし、その技術が活躍するフィールドは地球だけにとどまりません。
驚くべきことに、同社が開発した「ASPINAスペースブロワー」は、国際宇宙ステーション(ISS)に打ち上げられ、宇宙空間での実験に貢献しています。
さらに九州工業大学と宇宙技術に関する共同研究契約を締結するなど、宇宙開発への挑戦を本格化させているのです。
医療機器に求められる静音性や自動車部品で培った小型・軽量化技術。
地上での厳しい要求に応え続けてきたコア技術が、宇宙という究極の環境で新たな価値を生み出しています。
ものづくりの精密な技術が、文字通り「世界」を超えて活躍する、壮大な事例と言えるでしょう。
2. 「働きやすさ」を極めた、男性育休100%宣言の電子部品メーカー ― えびの電子工業株式会社
宮崎県に拠点を置くえびの電子工業株式会社は、電子部品や自動車部品の製造を行う企業です。
ここまで聞くと、典型的な地方の製造業を想像するかもしれません。しかし、その企業文化は極めて先進的です。
驚くべきは、同社が掲げる「男性の育休100%企業宣言」。
実際に社長自身も取得経験があり、男女問わず子育てに参加できる環境を積極的に推進しています。
さらに、全従業員の3分の2が女性で、引っ越しを伴う転勤もないなど、ライフステージの変化に合わせた柔軟な働き方を徹底。
その取り組みは、厚生労働大臣認定の「女性活躍推進企業」「子育てサポート推進企業」や、宮崎県知事認定の「ひなたの極み企業(働きやすい職場)」など、数多くの公的な評価を受けています。
伝統的な製造業のイメージとは一線を画す、この先進的な労働環境は、単なるスローガンではありません。
数々の公的認定が証明するように、多様な人材が安心して長く働ける基盤を戦略的に構築し、企業の持続的な成長を支える大きな強みとなっているのです。
3. アミューズメント機器メーカーが、和風ホラーからパズルまでゲームを世界配信 ― パルスモ株式会社
パルスモ株式会社は、アミューズメント関連機器の製造販売を本業とする企業です。
ゲームセンターなどで見かける機器のハードウェア開発がその主戦場。
しかし、同社はソフトウェア開発、それも非常にニッチなインディーゲームの分野で世界に挑戦しています。
自社開発した和風3Dホラーゲーム『八つ灯 | Yatsuakari』を、Nintendo SwitchやPCゲームプラットフォームのSteamを通じて世界に配信。
それだけでなく、「迷い猫の旅」シリーズや、新感覚の落ちものパズルゲーム『-猫は液体- Stray Cat Falling』など、複数のジャンルでソフトウェア開発を継続的に行っています。
ハードウェア製造のノウハウを持つ企業が、なぜインディーゲーム開発に乗り出したのか。
それは一過性の試みではなく、ものづくりで培われた技術力と、ユーザーを楽しませたいというクリエイター精神を活かした、本格的な事業多角化です。
ハードとソフトの垣根を越えた持続的な挑戦は、企業の底知れぬ可能性を感じさせます。
4. 震災を乗り越え、自社製品開発へ。弱視治療器から宇宙へ飛ぶ放射線測定器まで ― ヤグチ電子工業株式会社
宮城県石巻市に拠点を置くヤグチ電子工業株式会社は、もともとは精密電子機器の組立・実装を行うOEM(受託製造)を主力事業としていました。
その方向性を大きく変えたのが、2011年の東日本大震災です。
この出来事を機に、同社は社会課題を直接解決する自社製品の開発へと大きく舵を切りました。
その結果生まれたのが、北里大学との連携による弱視治療用タブレット「オクルパッド」や、世界初のスマートフォン接続型放射線測定器「ポケットガイガー」です。
特に「ポケットガイガー」は国内外で高く評価され、ついには米国Blue Origin社の宇宙ロケットに搭載され、宇宙空間での放射線測定に貢献するまでに至りました。
さらに「オクルパッド」はJICAの支援を受け、インド全土22の医療機関で臨床試験を完了、ケニアでも実証事業が進行中です。
震災は、ヤグチ電子工業を受託製造企業から、世界的な社会貢献企業へと変貌させました。
その技術は、国内の課題解決にとどまらず、JICAを通じてインドやケニアといった開発途上国の人々を救う力となっています。
ものづくり企業の持つ底力と使命感が、国境を越えて社会を動かす好例です。
5. 省エネとダイバーシティ経営の優等生は、介護施設も運営 ― 株式会社栄光製作所
群馬県富岡市で医療機器や自動車関連の基板組み立て・検査を行う株式会社栄光製作所。同社は、早くから環境問題と人材の多様性に着目し、「省エネ大賞」や経済産業省の「新・ダイバーシティ経営企業100選」を受賞するなど、先進的な経営を実践する優良企業です。
しかし、最も驚くべきは、ものづくりとは全く異なる分野への進出です。同社はグループホームやデイサービスといった「介護事業」を運営しているのです。この背景には、同社の長年にわたる企業文化があります。例えば、ダイバーシティ経営の根幹として、2005年からベトナム人の技能実習生や技術者を毎年受け入れ、人材育成に注力してきました。
一見すると無関係な「ダイバーシティ経営」と「介護事業」は、実は深く繋がっています。約20年にわたるベトナム人材の受け入れで培われた「多様な人々を育成し、活躍の場を創出する」という哲学が、工場の外へ、つまり地域社会の課題解決へと展開されたのです。事業を通じて多角的に社会と関わるその姿勢は、これからの企業のあり方を示す一つのモデルと言えるでしょう。
結論:まとめ
今回ご紹介した5社は、宇宙開発への参入、先進的な働き方の実現、インディーゲーム開発、社会課題解決製品の創出、そして介護事業への進出と、それぞれが全く異なる形で「製造業」の枠を超えたユニークな取り組みを行っています。
これらの事例から見えてくるのは、日本の「ものづくり」企業が持つ、固定観念にとらわれない柔軟性、創造性、そして社会への貢献意識の高さです。
精密な技術力だけでなく、人々の生活や社会を豊かにしたいという想いが、新しい価値を生み出す原動力となっています。
あなたの身の回りにも、まだ知られていない意外な顔を持つ企業が隠れているかもしれません。
次に私たちに驚きを与えてくれるのは、どんな会社でしょうか?





