【2026年版】EMSの価格競争から抜け出す「指名買い」される工場の3つの共通点

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日本のEMS(電子機器受託製造サービス)業界は今、歴史的な転換点に立たされています。

単なる「言われた通りに作るだけの工場」は、遅かれ早かれ価格競争の波に飲まれて市場から退場することになります。

東南アジアやインドをはじめとする新興国の巨大工場と、1円単位の単価交渉で勝負を挑むのは経営戦略として完全に間違っています。

2026年の現在、持続的な成長を遂げている国内のEMS工場は、決して「安さ」をウリにしていません。

彼らは、顧客から「多少コストがかかっても、絶対に御社にお願いしたい」と名指しで依頼される「指名買い」のポジションを確立しています。

本記事では、価格競争から完全に抜け出したEMS工場が持つ「3つの共通点」を徹底的に解説します。

この記事を最後まで読むことで、あなたの工場が明日から取り組むべき生存戦略と、高収益体質へと生まれ変わるための具体的なロードマップが明確になるはずです。

目次

1. なぜ2026年のEMS市場において「価格」は武器にならないのか

EMS業界における「価格」という要素は、すでに競争優位性を生み出さない死んだ指標となっています。

顧客が工場を選定する際、見積もりの安さだけで決断を下す時代は完全に終わりを告げました。

コモディティ化の罠と海外巨大工場の台頭

汎用的な電子基板の実装や単純な組み立てにおいて、日本国内で価格競争に挑むことは自殺行為に等しいと言えます。

なぜなら、製造設備の高性能化とAIによる品質管理の自動化により、新興国の工場でも一定以上の品質が担保されるようになったからです。

数万台規模の大量生産において、圧倒的なスケールメリットを持つ海外巨大メガファクトリーに、単価で打ち勝つことは物理的に不可能です。

日本のEMSが生き残る道は、コモディティ化(汎用品化)した市場からいち早く脱出し、価格以外の明確な付加価値を提供することに尽きます。

価格を下げて受注を獲得する「負のスパイラル」から抜け出さなければ、設備投資はおろか人材育成すら不可能な状態に陥ります。

顧客が真に求めているのは「コスト削減」ではなく「事業リスクの排除」

現代のファブレス企業やメーカーがEMSに求めている最大の価値は、製品のライフサイクル全体を通じた「リスクの排除」です。

目先の製造原価が数パーセント安くなることよりも、発売日に確実に製品が市場に供給されることのほうが、顧客のビジネスにとって圧倒的に重要視されます。

例えば、部品の調達遅延によって新製品のローンチが1ヶ月遅れれば、顧客は数億円規模の機会損失とブランドイメージの低下を被ることになります。

だからこそ顧客は、「安く作る工場」ではなく「絶対にプロジェクトを止めない、信頼できるパートナー」を探し求めているのです。

この顧客の深層心理を理解し、リスクヘッジの仕組みを提供できる工場だけが、価格競争の土俵から降りることができます。

2. 指名買いされるEMS工場の共通点1:上流工程へ介入する「DFM提案力」

指名買いされる工場の最も大きな共通点は、顧客から渡された図面をそのまま製造するのではなく、設計段階から積極的に介入している点です。

DFM(Design for Manufacturing:製造性を考慮した設計)の提案能力こそが、これからのEMSにとって最強の武器となります。

設計図面をそのまま作る工場は不要になる

顧客から支給されたBOM(部品表)とガーバーデータに一切の疑問を持たず、ただマウンターを動かすだけのビジネスモデルはすでに限界を迎えています。

AIが自動で最適な実装ルートやはんだの塗布量を計算する現在、単なる「忠実な製造作業」に人間が高いマージンを支払う理由はありません。

言われた通りに作るだけならば、顧客は常に相見積もりを取り、最も安い業者へいつでも乗り換えることができます。

製造現場のプロフェッショナルとして、図面を見た瞬間に「ここをこう変更すれば、もっと歩留まりが上がる」と指摘できる能力が必須です。

この提案力がない工場は、今後AIと新興国工場の挟み撃ちに遭い、急速に存在意義を失っていくでしょう。

量産を見据えた設計最適化が顧客の総コストを下げる

DFMの提案は、結果として顧客の「トータルコスト(TCO)」を劇的に下げることに直結します。

製造原価を構成する要素のうち、実に7割以上が設計段階で決定されると言われています。

例えば、「このICパッケージを少し横にずらすだけで、リフロー工程での熱ムラが解消され、不良率が劇的に下がる」といった現場ならではの知見を顧客にフィードバックします。

また、入手困難な専用部品を市場流通量の多い汎用部品へ置き換える(代替部品提案)ことで、調達コストと納期遅延のリスクを同時に削減できます。

顧客は「製造単価が安い工場」よりも、「量産時のトラブルを未然に防ぎ、結果的に最も安く確実なプロジェクトを実現してくれる工場」を高く評価します。

開発初期段階から入り込むことで「切り替え不可」の存在になる

設計や試作の初期段階からプロジェクトに参画することで、他社への乗り換えを防ぐ強力なロックイン効果が生まれます。

製品開発のプロセスにおいて、あなたの工場のエンジニアが顧客の設計チームと直接コミュニケーションを取り、共に最適な構造を作り上げたとします。

量産段階に移行した際、顧客がわざわざ別の安い工場を探してきて、一から製造ノウハウを教え直すという選択をするでしょうか。

答えはノーです。

共に汗を流し、製品のクセや品質基準の裏側まで熟知しているあなたの工場に、そのまま量産を委託するのが顧客にとっても最も安全で合理的な判断となります。

これが、相見積もりを排除し「御社でなければ作れない」と言わしめる最強の指名買いメカニズムです。

3. 指名買いされるEMS工場の共通点2:地政学リスクを跳ね返す「サプライチェーンの透明性」

2つ目の共通点は、部品調達のネットワークが極めて強靭であり、その透明性が顧客に担保されていることです。

2026年という時代背景において、サプライチェーンの脆弱性は企業の存亡に関わる重大なリスクとなっています。

安さよりも「確実に部品が調達できること」が最優先される時代

経済産業省(https://www.meti.go.jp/)が継続して警鐘を鳴らすように、特定国への過度な依存や地政学的な緊張は、製造業に甚大なダメージをもたらします。

かつての半導体不足やパンデミックによる物流網の寸断を経験した企業は、もはや「平時の安さ」だけを信じて発注することはありません。

「もし台湾海峡で有事が発生したら、この部品はどう調達するのか」といった問いに対して、明確な代替案(セカンドソース)を提示できるEMSが選ばれます。

いくら製造単価を安く見積もっても、「部品が揃わずにラインが止まりました」という言い訳は、現代のビジネスでは絶対に通用しません。

独自の調達ルートを開拓し、グローバルなネットワークを駆使して「何があっても部品を掻き集める力」が、強力な付加価値として高く売れるのです。

トレーサビリティとカーボンフットプリントの完全把握

現代のEMSには、製品を構成するすべての部品が「どこから来て、どのように作られたか」を完全に証明する責任が求められています。

欧米市場を中心に環境規制や人権デューデリジェンスが厳格化する中、サプライチェーンの不透明さは顧客企業にとって致命的な法令違反リスクとなります。

電子情報技術産業協会(https://www.jeita.or.jp/)などの業界動向を見ても明らかなように、今後は製造工程におけるCO2排出量(カーボンフットプリント)の算出と提示が取引の絶対条件となります。

「我が社で作る基板は、再生可能エネルギー由来の電力を◯◯%使用し、使用部材の産地証明もクラウド上でリアルタイムに共有できます」と宣言できる工場は、それだけで圧倒的な競争優位性を持ちます。

これらデータの可視化と保証は、もはや環境活動ではなく、指名買いを獲得するための「必須の営業ツール」であると認識すべきです。

有事の際のリスク回避シナリオを提示できるか

優れたEMS工場は、見積もりを提出する際に、価格だけでなく「リスクマネジメントの提案書」を同時に提示しています。

顧客の設計図面を受け取った時点で、BOM(部品表)に潜む生産中止(EOL)リスクや、特定地域に依存している部品を瞬時に洗い出します。

そして、「このマイコンは2年後に供給不安のリスクがあるため、今のうちにこちらの代替品での設計変更を推奨します」といった提案を先回りして行うのです。

このようなリスク回避シナリオを提示された顧客は、あなたの工場を単なる外注先ではなく、自社のビジネスを守る「軍師」として信頼するようになります。

価格競争を仕掛けてくる競合他社がどれほど安い単価を出してきても、この安心感とリスクマネジメント能力を覆すことは不可能です。

4. 指名買いされるEMS工場の共通点3:特定領域への特化と「圧倒的なNPIアジリティ」

最後の共通点は、全ての顧客にいい顔をするのをやめ、特定のニッチ領域における「超特急の開発・試作力」を磨き上げていることです。

広く浅い対応力は、何の特徴もないコモディティ工場への道を直滑降で進むことになります。

何でも作れるは、何の特徴もないと同義である

「弊社は民生品から産業機器まで、なんでも高品質・低価格で製造できます」という営業文句は、今の時代、誰の心にも響きません。

顧客がインターネットで工場を検索する際、「なんでも屋」を探しているケースは皆無です。

彼らは「高周波基板の特殊なコーティング技術を持つ工場」や「極小チップの高密度実装に特化した工場」など、自社の特定の課題を解決できる専門家を探しています。

自社のリソースを分散させるのではなく、特定の技術や特定のロット帯に一点集中することで、初めてその領域における「第一人者」になることができます。

専門性を研ぎ澄ませることで、全国から、あるいは世界中から「この技術ならあの工場しかない」という指名検索を引き起こすことが可能になります。

多品種少量・超短納期での試作(NPI)を極める

指名買いされる工場は、NPI(New Product Introduction:新製品導入)と呼ばれる、開発段階での試作や超初期の量産立ち上げにおいて、圧倒的なスピードを誇ります。

スタートアップ企業や新規事業部門にとって、プロトタイプを一日でも早く市場に出してテストすることは、企業の生死を分ける最重要課題です。

「データをもらってから最短3日で実装基板を納品します」「開発現場の横に専用デスクを用意し、エンジニアと一緒にその場で修正しながら作ります」といったアジリティ(俊敏性)は、凄まじい価値を生みます。

この段階において、顧客はコストを気にしていません。

最速で形にしてくれる工場に対しては、通常レートの数倍のプレミアム価格であっても喜んで支払います。

そして前述した通り、このNPIのフェーズで強固な信頼関係を築くことで、その後の量産フェーズも自動的に受注できるという必勝パターンが完成するのです。

医療、航空宇宙、次世代モビリティなど認証ハードルの高い領域を狙う

価格競争から完全に隔離されたブルーオーシャンで戦うためには、参入障壁が極めて高い産業領域に特化することが有効な戦略です。

例えば、医療機器製造業登録や、航空宇宙産業向けの品質マネジメントシステム(JIS Q 9100)、車載向けのIATF 16949などの認証取得です。

これらの領域は、人の命に関わるため、品質保証に対する要求が常軌を逸するほど厳しく、大半のEMS工場は手間を嫌って参入しません。

しかし、一度その厳格な基準をクリアし、認証と実績を手に入れれば、顧客の側から「品質基準を満たせる工場が他にないから」という理由で指名買いが殺到します。

高いハードルを越えるための先行投資と組織改革の苦労は、後に「価格競争ゼロの安定した高利益率」という形で必ず報われます。

5. 下請け体質から脱却するための具体的なアクションプラン

ここまで解説した3つの共通点を理解しても、行動を起こさなければ工場の未来は変わりません。

明日から社内で実行すべき、具体的なステップを提示します。

自社の隠れた強みを棚卸しする

まずは、現在自社で稼働している案件のなかで「なぜか顧客がずっと離れない案件」や「他社が嫌がるような面倒な案件」をリストアップしてください。

その「面倒くささ」の裏にこそ、他社には真似できないあなたの工場独自のノウハウと強みが隠されています。

現場の職人が当たり前のようにこなしている細かな調整や、部品メーカーとの泥臭い交渉力が、実は強力な付加価値であることは珍しくありません。

この無自覚な強みを徹底的に言語化し、会社の公式な「ソリューション」としてパッケージ化することが第一歩です。

営業担当者を「ソリューション提案型」へ育成する

次に、御社の営業部門の役割を根本から定義し直す必要があります。

これまでの営業の仕事が「顧客の御用聞き」をして「安い見積もりを出して仕事をもらってくる」ことであったなら、今日からその業務は禁止すべきです。

これからの営業担当者は、製造現場の知識を持ち、顧客の課題をヒアリングして解決策を提案する「テクニカルセールス(技術営業)」でなければなりません。

顧客の設計者に直接会い、「この図面をこう変えれば、当社のラインで最適化され、納期が2週間縮まります」とプレゼンテーションできる人材を育成してください。

権威性のある外部機関や最新トレンドとの連携

自社のリソースだけで限界を感じる場合は、外部の知見を積極的に取り入れることが成功の近道です。

最新のAIを駆使したサプライチェーン管理ツールの導入や、大学などの研究機関との共同研究など、外部の権威性を自社のブランドに組み込んでください。

また、最新の国際規格や環境基準の動向をいち早くキャッチアップし、それを顧客への提案材料として活用することで「常に先を行く情報感度の高いパートナー」という印象を与えることができます。

自社内に閉じることなく、外部との連携を通じて自社の提供価値をアップデートし続ける姿勢が重要です。

6. EMSの価格競争に関するよくある質問(FAQ)

Q1. DFM提案をしたいが、社内に設計がわかるエンジニアがいません。どうすればいいですか?

設計の専任者がいなくても、製造現場の「やりにくさ」をフィードバックするだけで立派なDFM提案の第一歩になります。現場の作業員が感じている「この部品ははんだ不良が起きやすい」「この配置だと手作業の手間が増える」といった生の声をまとめ、顧客に根拠とともに伝える仕組みを作るところから始めてください。

Q2. ニッチな領域に特化すると、市場規模が小さすぎて売上が下がるのではないですか?

汎用市場で低い利益率で数を追うよりも、ニッチ市場で高い利益率を確保する方が、企業の存続可能性は格段に高まります。また、インターネットを活用した適切なマーケティング(SEOなど)を行えば、ニッチな強みであっても全国、あるいは世界中から見込み客を集めることが十分可能です。

Q3. サプライチェーンの透明化には莫大なシステム投資が必要なのではないですか?

最初から数千万円規模の巨大システムを導入する必要はありません。まずは主要な部品の代替品リスト(セカンドソース)のエクセル管理や、一部の重要顧客に対するクラウドベースの工程進捗共有など、身の丈に合ったSaaS型の安価なツールを活用してスモールスタートを切ることが重要です。

7. まとめ:「作れる」から「不可欠なパートナー」への進化

2026年版のEMS生存戦略において、最もお伝えしたい結論は一つです。

それは、「モノを作るだけの機能」から「顧客のビジネスを成功に導く不可欠なパートナー」へと、自らの存在定義をアップデートせよということです。

  1. 開発上流から入り込み、共に最適な設計を作り上げるDFM提案力。
  2. 予測不能な時代において、確実に製品を世に送り出すための強靭なサプライチェーン。
  3. 誰も真似できないスピードと専門性で、顧客の新規事業を後押しするNPI対応力。

この3つの柱を構築できた工場に、価格競争を挑んでくる競合はもう現れません。

日本の製造現場が持つ「真面目さ」「緻密さ」「すり合わせの技術」は、本来、世界で最も高く評価されるべき価値を持っています。

その価値を安売りすることなく、正当な利益を得て、次世代の技術と人材に投資する。

それこそが、誇り高き日本のモノづくりを守り抜く唯一の道なのです。

明日から、顧客に対する「見積もり提出」のやり方を一つ変えることから、あなたの工場の新しい歴史が始まります。

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