
クリームはんだのメーカー比較で失敗する最大の理由は、メーカー名だけで判断してしまうことです。
実際の選定では、低温で実装したいのか、微細印刷を安定させたいのか、車載向けの信頼性を重視するのかで、選ぶべきメーカーは変わります。
しかも、同じ「鉛フリー」「ハロゲンフリー」「高信頼」と書かれていても、粉末サイズ、フラックス設計、残渣の性質、ボイドの出方、印刷寿命は同じではありません。
この記事では、主要メーカーの公開情報をもとに、どのメーカーがどの用途で候補になりやすいのかを整理します。
そのうえで、比較時に本当に見るべき項目、評価の進め方、よくある勘違いまで、わかりやすく解説します。 (千住金属工業)
クリームはんだメーカー比較の結論
クリームはんだメーカー比較の結論はシンプルです。
「どのメーカーが一番良いか」ではなく、「自社の工程条件に最も合うメーカーはどこか」で決めるのが正解です。
標準的なSMT量産で候補を広く持ちたいなら千住金属工業、タムラ、KOKIは外しにくいです。
低温実装や熱に弱い部品への配慮を重視するなら、千住金属工業、タムラ、日本スペリア社、Indium、MacDermid Alphaが有力候補になります。
車載や基地局のような高信頼用途では、タムラ、KOKI、MacDermid Alphaが比較対象に入りやすく、微細印刷や半導体寄りならIndiumやMacDermid Alpha、千住金属工業の微細対応製品が候補になりやすいです。 (千住金属工業)
ここで大切なのは、メーカー比較を「会社の格付け」にしないことです。
現場で効くのは、合金系、フラックス、粉末粒径、印刷安定性、濡れ性、ボイド、残渣、信頼性、工程サポートの9項目です。
この軸で見ると、たとえば低温に強いメーカーと、高温側で熱疲労に強いメーカーは一致しません。
また、微細印刷に強い製品が、そのまま車載高信頼に最適とは限りません。
メーカー比較で本当に必要なのは、製品名の暗記ではなく、「自社の不良モードを減らす材料を選ぶ」という視点です。 (ipcstore.jp)
まず押さえるべき比較の考え方
比較の第一歩は、材料そのものより先に、自社の困りごとを定義することです。
たとえば、現場で困っているのが印刷抜けなら、見るべきは粉末サイズと転写安定性です。
はんだボールやぬれ不足が課題なら、フラックス活性とリフロー条件との相性が重要になります。
車載や屋外用途でクラックやマイグレーションが怖いなら、残渣特性や熱サイクル後の挙動まで見なければいけません。
つまり、メーカー比較は製品カタログの比較ではなく、不良対策の比較です。
この順番を逆にすると、営業資料では良さそうに見えたのに、量産では歩留まりが落ちるという典型的な失敗が起こります。 (tamuracorp.com)
メーカー比較は「会社名」ではなく「用途」で決める
検索では「おすすめメーカー」を知りたい人が多いですが、実務では「用途別おすすめ」に置き換えた方が正確です。
たとえば千住金属工業は、家電から自動車、サーバまで幅広い用途に使われるソルダーペーストを展開し、低温ソリューションのMILATERAや室温保管向けRTPシリーズ、微小部品実装向けRGS800シリーズまで持っています。 (千住金属工業)
タムラは、一般実装、微細部品、洗浄用、高信頼性、低融点、JET対応、局所加熱対応までカテゴリが明確で、用途に応じた切り分けがしやすいメーカーです。 (tamura-ss.co.jp)
KOKIは、低ボイド、微細印刷、ハロゲンフリー、高信頼、低温、ディスペンス、パワー半導体向けの超低ボイドまで、課題別にラインアップが整理されているのが強みです。 (KOKI COMPANY LIMITED |)
このように、「どのメーカーが上か」ではなく、「どの課題に対して答えを持っているか」で見ると、比較が一気に現実的になります。
クリームはんだとは何か
クリームはんだは、メーカー公式では「ソルダーペースト」と表記されることが多い材料です。
千住金属工業は、ソルダーペーストを「はんだの微粉末と高粘性フラックスを混練した重要な接合材料」と説明しています。 (千住金属工業)
また、J-STD-004の解説では、フラックス材料の対象に「ソルダペースト」「クリームはんだ」が含まれることが示されています。
そのため、検索キーワードとしては「クリームはんだ」、メーカー公式や規格文脈では「ソルダーペースト」と理解しておくと混乱しません。 (japanunix.com)
ここで重要なのは、クリームはんだが単なる消耗品ではないことです。
合金粉末とフラックスの組み合わせで、印刷性、濡れ性、残渣、信頼性、コスト、工程自由度まで変わります。
つまり、クリームはんだは実装品質を左右する中心材料です。
部品や設備に比べて軽く見られがちですが、歩留まりと信頼性の両方に直結するため、材料選定の優先度はかなり高いと考えるべきです。 (ipcstore.jp)
クリームはんだとソルダーペーストの扱い
実務では、クリームはんだとソルダーペーストはほぼ同じ対象として扱って問題ありません。
ただし、比較記事を書くうえで気をつけたいのは、メーカーごとに表現が少し違うことです。
国内メーカーは「ソルダーペースト」「ソルダーペースト用フラックス」という表現が多く、海外メーカーは “Solder Paste” が基本です。
そのため、検索時は「クリームはんだ」「ソルダーペースト」「solder paste」を横断して確認すると、比較対象を漏らしにくくなります。 (千住金属工業)
比較前に知っておきたい規格
メーカー比較をするときは、J-STD-005とJ-STD-004を最低限押さえるべきです。
J-STD-005はソルダーペーストの要求事項に関する規格で、金属含有量、粘度、スランプ、はんだボール、粘着、ぬれといった試験方法と基準に触れています。 (ipcstore.jp)
J-STD-004はフラックス材料の分類と特性評価に関する規格で、ソルダーペーストやクリームはんだも対象に含まれます。 (japanunix.com)
つまり、メーカーのデータシートを見るときは、単に「高信頼」「高性能」という宣伝文句を見るのではなく、どの項目をどう評価している材料なのかを規格の言葉で読む必要があります。
この視点があるだけで、比較の精度は大きく上がります。
参考にしやすい一次情報は、ジャパンユニックスの解説ページとIPC Storeです。
- ジャパンユニックス J-STD-005:
https://www.japanunix.com/ipc/standard/solder_material/j-std-005/ - ジャパンユニックス J-STD-004:
https://www.japanunix.com/ipc/standard/solder_material/j-std-004/ - IPC Store J-STD-004:
https://shop.electronics.org/ipc-j-std-004/ipc-j-std-004-standard-only(japanunix.com)
クリームはんだメーカー比較で見るべきポイント
メーカー比較で見るべきポイントは多いように見えますが、現場で効く項目は絞れます。
特に大切なのは、合金系、フラックス設計、粉末粒径、印刷安定性、濡れ性、ボイド、残渣、信頼性、工程適合性の9つです。
J-STD-005が触れる評価項目も、この考え方とほぼ重なっています。 (ipcstore.jp)
ここを外して比較すると、たとえば「価格は安いが印刷が安定しない」「微細印刷はできるが熱サイクルに弱い」「低温実装はできるが落下衝撃に弱い」といった、後から効いてくる問題を見落とします。
逆に、この9項目で整理すれば、メーカーの違いがかなり見えやすくなります。
合金系
まず見るべきは合金です。
SAC305のような標準鉛フリー、低銀系、無銀系、Bi系低温、In入り低温、高信頼特殊合金などで、狙っている性能がまったく違います。
たとえば千住金属工業は低銀合金M40や低温ソリューションMILATERAを展開し、タムラはBi系低融点ソルダーペーストや高耐熱合金287シリーズを持っています。
KOKIも低Agの高信頼品や低温品を持ち、MacDermid AlphaはHRL3やInnolot MXEのような高信頼・低温・高耐久の特殊合金を前面に出しています。
IndiumもBi系・In系低温や低・中・高融点まで幅広く持っています。 (千住金属工業)
現場感覚で言えば、合金は「はんだが何度で溶けるか」だけの話ではありません。
熱疲労、落下、クリープ、コスト、相手材料との相性まで決める土台です。
だから、最初に合金系を固定せず、用途から逆算して候補を決めるのが正しい進め方です。
フラックス設計
次に重要なのがフラックスです。
同じ合金でも、フラックスが違えば印刷性、濡れ、残渣、SIR、マイグレーションリスク、洗浄性まで変わります。
J-STD-004はまさにそのフラックス材料の分類と評価のための規格です。 (japanunix.com)
KOKIは強力なぬれ性、低ボイド、ハロゲンフリー、低飛散、クラックフリー残渣など、フラックス由来の性能を整理して見せています。
日本スペリア社も、完全ハロゲンフリー、ブリッジ抑制、飛散防止、電解腐食抑制、銀食われ抑制、12カ月保管可能など、フラックス由来の選択条件を細かく公開しています。
MacDermid AlphaやIndiumも、ゼロハロゲン、ノークリン、低残渣、空気雰囲気・窒素雰囲気対応といった設計思想を明確に出しています。 (KOKI COMPANY LIMITED |)
フラックスは見えにくいぶん、比較で軽視されがちです。
しかし実際には、量産の安定性を決めるのは合金よりフラックスであることも珍しくありません。
特に残渣クラック、ICT透過、洗浄性、腐食性、外観性を気にする用途では、フラックス設計を最優先で見るべきです。
粉末粒径と微細印刷
微細印刷を考えるなら、粉末粒径は必須の比較項目です。
MacDermid AlphaのOM-565 HRL3はType 4、Type 5対応で01005サイズまでを挙げ、OM-353は180μm pad sizeでの印刷性能に言及しています。
Indium5.7LT-1はType 3、Type 4、Type 5-MCを用意し、Indiumの半導体向け製品群も低酸化・高真球度の粉末を強調しています。
千住金属工業のRGS800 Type6は0201チップ部品実装対応を打ち出し、タムラもType6の微細印刷向け製品を公開しています。 (MacDermid Alpha)
ここでのポイントは、微細印刷に強いことと、量産が安定することは完全には同義ではないということです。
粉末を細かくすれば印刷の解像度は上がりやすいですが、酸化や保管、ダレ、濡れ、コストのバランスが難しくなることもあります。
だから、微細印刷対応という言葉だけで判断せず、実際のパッドサイズ、ステンシル厚、アスペクト比、印刷停止時間を前提に見なければいけません。
ぬれ性・ボイド・残渣
現場で歩留まりに直結するのが、ぬれ性、ボイド、残渣です。
KOKIは低ボイド、超低ボイド、パワー半導体向け超低ボイドを前面に出しており、MacDermid Alphaも低温品でHiPやNWOの低減、高信頼品で優れたリフロー・合一性を訴求しています。
Indium5.7LT-1は空気雰囲気でも優れたぬれや、はんだボール・ビーディング抑制を特長にしています。
タムラの高信頼製品は残渣クラック抑制を明確に示しています。 (KOKI COMPANY LIMITED |)
この項目は、データシートの数字を見るだけでは足りません。
なぜなら、ボイドや残渣の見え方は、基板表面処理、部品構成、窒素の有無、プロファイル、印刷後放置時間でかなり変わるからです。
メーカー比較では、「この会社は低ボイドに強い」「この会社は残渣対策に強い」という方向感をつかみ、最後は自社条件で絞り込むのが現実的です。
信頼性評価
高信頼用途では、熱サイクル、落下衝撃、振動、クリープ疲労、電気化学信頼性まで見ます。
MacDermid AlphaのCVP-390V Innolot MXEは、厳しい環境下での熱機械的・電気化学的信頼性向上、-40~125℃および-40~150℃での性能、振動やドロップショックの改善を打ち出しています。
タムラの高信頼性製品も、自動車や基地局など屋外・高信頼用途への適性と、残渣クラック抑制を訴求しています。
千住金属工業も高信頼性ソルダペーストや低温での耐落下・耐熱疲労ソリューションを公開しています。 (MacDermid Alpha)
ここで大事なのは、「高信頼」の意味を自社で定義することです。
車載と産機と民生では、怖い故障モードが違います。
熱疲労が怖いのか、落下衝撃が怖いのか、湿熱と電食が怖いのかで、選ぶべき製品は変わります。
高信頼という言葉をそのまま受け取らず、どの試験に強いのかまで掘るのがプロの比較です。
サポート体制と供給安定性
材料選定では、製品性能だけでなく、問い合わせ対応、工程提案、地域サポート、切替時支援も重要です。
KOKIは60を超える国と地域でのネットワークを案内し、技術サポートや分析ノウハウを強みにしています。
タムラ、千住金属工業、日本スペリア社も製品カテゴリや問い合わせ導線が明確で、日本国内での相談のしやすさがあります。 (KOKI COMPANY LIMITED |)
実装現場では、材料が良くても、立ち上げ時に伴走してもらえないと苦労します。
特に、既存ペーストから切り替える場面では、印刷条件、拭き取り間隔、予熱条件、雰囲気条件まで調整が必要になることがあります。
だから、メーカー比較では「営業が来るか」よりも、「工程課題に対して技術で返してくれるか」を見た方が失敗しません。
主要メーカー6社を比較

ここからは、主要メーカーを用途目線で整理します。
なお、ここでの比較は公開情報ベースです。
最終判断は、必ず自社基板、自社部品、自社プロファイルでの評価で行ってください。
千住金属工業
千住金属工業の強みは、裾野の広さと、量産現場で使いやすい選択肢の豊富さです。
公式サイトでは、ソルダーペーストが家電から自動車、サーバまで幅広く使われる重要材料であることを説明し、供給方法、加熱方法、洗浄有無、主要特性を一覧で確認できる構成になっています。 (千住金属工業)
さらに、低温ソルダリングソリューションMILATERAでは、耐熱疲労性と落下耐性に配慮した低温材料群を展開しています。
室温輸送・室温保管に対応したRTPシリーズや、0201対応のRGS800 Type6など、いまの量産現場で効くテーマをしっかり押さえている点も強いです。 (千住金属工業)
千住金属工業が向いているのは、標準量産を軸にしながら、低温、微細、低銀、省工程まで広く比較したいケースです。
逆に言えば、「特殊工程専業」というより、「本命候補として最初に外しにくい総合型メーカー」という見方がしっくりきます。
量産の安定感と選択肢の厚みを重視するなら、真っ先に見ておきたいメーカーです。 (千住金属工業)
タムラ
タムラの強みは、カテゴリの切り分けが非常にわかりやすいことです。
公式サイトには、一般実装用、微細部品実装用、洗浄用、高信頼性、低融点、中融点、JET対応、局所加熱対応、低温接合材料まで並び、用途で選びやすい構造になっています。 (tamura-ss.co.jp)
特に注目したいのは、高信頼性と低温の両輪です。
高信頼性Pbフリーソルダーペーストでは、車載、基地局、建設機器などを想定し、残渣クラック抑制や高耐熱合金を打ち出しています。
低融点Pbフリーソルダーペーストでは、大気リフローでのはんだ付けや安定印刷性を訴求しています。
微細部品向けでは、Type6を用いた狭ピッチ・高密度実装も公開されています。 (tamuracorp.com)
タムラが向いているのは、用途がはっきりしている案件です。
「車載寄り」「洗浄前提」「JETを使いたい」「微細印刷が必要」といった条件が明確なとき、候補の絞り込みがしやすいです。
比較記事の文脈では、実務で使いやすい整理がされたメーカーとして評価しやすい1社です。 (tamura-ss.co.jp)
KOKI
KOKIの強みは、課題ベースで製品を探しやすいことです。
公式製品一覧では、低ボイド、微細印刷、マイクロパターン、ジェットディスペンス、レーザー、PoP、高信頼、低Ag、低温、超低ボイドといった形で、現場の困りごとに直結する製品群が並んでいます。 (KOKI COMPANY LIMITED |)
また、開発ページでは、ソルダーペーストに対して「強力なぬれ」「低ボイド」「低飛散」「ハロゲンフリー」「微細印刷」「クラックフリー残渣」「高信頼」「低温」「ディスペンス」といった開発テーマを明示しています。
さらに、パワー半導体向けには、超低ボイドを重要テーマとして掲げています。 (KOKI COMPANY LIMITED |)
KOKIが向いているのは、ボイド、残渣、パワーデバイス、微細、ジェットなど、明確な技術課題から選びたいケースです。
日本の実装現場では、「課題解決型で比較しやすいメーカー」として相性が良い印象です。
単純な総合力だけでなく、「この不良を減らしたい」に答えやすい点が、KOKIの大きな魅力です。 (KOKI COMPANY LIMITED |)
日本スペリア社
日本スペリア社の強みは、絞り込み条件の細かさです。
公式サイトでは、低温はんだ付け用、自動はんだ付け機対応、レーザー対応、微細接合用、耐クラック・耐衝撃用、BGA/CSP/MCM用、完全ハロゲンフリー、電解腐食抑制、銀食われ抑制、12カ月保管可能など、多様な条件で製品を絞り込めます。 (鉛フリーはんだの株式会社日本スペリア社)
また、無酸化はんだクリームのページでは、合金組成、フラックス、粒子範囲、粘度・フラックス含有量、粉末粒子形状を用途に応じて組み合わせられることが示され、BGA・CSP実装向けにも触れています。 (鉛フリーはんだの株式会社日本スペリア社)
日本スペリア社が向いているのは、条件が細かい案件です。
たとえば、低温だけでなく、衝撃、腐食、銀食われ、保管性まで含めて詰めたい場合、候補に入れやすいです。
比較表では見落とされがちですが、実際にはかなり細かい要求に応えやすいメーカーです。 (鉛フリーはんだの株式会社日本スペリア社)
MacDermid Alpha
MacDermid Alphaの強みは、グローバル高信頼・低温・微細の3点です。
一般SMT向けではOM-5100のような歩留まり重視の低残渣ノークリン製品があり、低温向けではOM-565 HRL3が175℃ターゲットリフロー、HiPやNWO低減、01005対応、Type 4/5対応を打ち出しています。 (MacDermid Alpha)
高信頼領域ではCVP-390V Innolot MXEが強力です。
公開データシートでは、245℃の標準リフロープロファイルを維持しつつ、厳しい環境での熱機械的・電気化学的信頼性を高め、-40~125℃、-40~150℃での性能や振動・ドロップショック改善を訴求しています。 (MacDermid Alpha)
さらに、OM-353は180μm級の超微細印刷に触れています。
つまりMacDermid Alphaは、低温、超微細、高信頼のいずれかがテーマに入る案件で、比較優先度が上がりやすいメーカーです。
特に海外案件、車載、先端パッケージ寄りの比較では、候補から外しにくい存在です。 (MacDermid Alpha)
Indium Corporation
Indiumの強みは、半導体・先端実装・低温材料の層の厚さです。
半導体向けソルダーペーストでは、標準ノークリン、超低残渣ノークリン、水洗浄、フラックスレス技術、低・中・高融点まで幅広い合金を持ち、低酸化・高真球度粉末を訴求しています。 (indiumcorporation)
低温材料のIndium5.7LT-1は、Bi系・In系低温合金向けの空気リフロー対応、ハロゲンフリー、ノークリン、優れたぬれ、はんだボール・ビーディング抑制、Type3/4/5-MC対応を公開しています。
また、Durafuse LTでは、低温リフローで高い落下衝撃信頼性を狙う混合合金系も案内されています。 (indiumcorporation)
Indiumが向いているのは、半導体寄り、微細実装寄り、低温寄りの比較です。
とくに、単なる民生量産よりも、パッケージ寄りや先端性のある実装条件で候補になりやすいメーカーです。
国内量産の相談しやすさだけでなく、材料技術そのものを比較軸に置くなら、非常に強い1社です。 (indiumcorporation)
用途別おすすめメーカー
ここでは、用途別に優先候補を整理します。
繰り返しますが、これは公開情報から見た「候補の方向性」です。
最終決定は、自社評価で行ってください。
車載・高信頼用途
車載や基地局、屋外機器では、熱サイクル、振動、残渣クラック、電気化学信頼性が重要になります。
この用途では、タムラ、KOKI、MacDermid Alphaが有力候補です。
タムラは高信頼性Pbフリーソルダーペーストとして車載・基地局向けや残渣クラック抑制を明示しています。
KOKIは高信頼、クラックフリー残渣、パワー半導体向け超低ボイドといった方向が明確です。
MacDermid AlphaはInnolot MXEで熱機械信頼性、振動、ドロップショックの改善を打ち出しています。 (tamuracorp.com)
千住金属工業も高信頼材料や低温での耐熱疲労・耐落下を持つため、熱弱部品を含む高信頼案件では十分に候補に入ります。 (千住金属工業)
微細印刷・半導体実装用途
微細印刷や半導体実装では、粉末粒径、転写安定性、残渣の広がり、微小パッドでの合一性が重要です。
この用途では、Indium、MacDermid Alpha、千住金属工業、タムラが有力です。
Indiumは半導体向けソルダーペースト群を広く持ち、低酸化粉末と多様なフラックス系を公開しています。
MacDermid Alphaは01005、180μm級、Type4/5といった微細実装情報が明確です。
千住金属工業はRGS800 Type6で0201対応を打ち出し、タムラもType6微細印刷向けを公開しています。 (indiumcorporation)
微細用途では、カタログスペックよりも、実際のステンシル条件との相性が支配的です。
そのため、候補は多めに持ちつつ、実印刷評価で速く絞るのが正解です。
低温実装・熱弱部品用途
低温実装が必要なケースでは、千住金属工業、タムラ、日本スペリア社、Indium、MacDermid Alphaが有力です。
千住金属工業はMILATERAやL29-145HFなど、低温と耐落下・耐熱疲労の両立を訴求しています。
タムラはBi系低融点ソルダーペーストを持ち、大気リフローでの実装や安定印刷を案内しています。
日本スペリア社は低温はんだ付け用の絞り込みができ、IndiumはBi系・In系低温の5.7LT-1、MacDermid Alphaは175℃ピークを狙うOM-565 HRL3を公開しています。 (千住金属工業)
ただし、低温はんだは万能ではありません。
部品保護には効きますが、熱疲労、機械強度、既存はんだとの混在、リワーク性などの別課題が出ることがあります。
低温化はゴールではなく、別のトレードオフを引き受ける設計だと理解しておくと失敗しにくいです。 (MacDermid Alpha)
コスト重視の汎用用途
コスト重視の汎用用途では、低銀系や歩留まり重視の標準材料を比較すると効率的です。
千住金属工業は低銀合金M40を展開し、タムラは低銀1.0Agの213シリーズ、217シリーズを案内しています。
KOKIも0.1Ag、1.1Agの低コスト高信頼ラインを公開しています。
MacDermid AlphaもOM-5100のような歩留まり重視の標準品があります。 (千住金属工業)
ここでのコツは、材料単価だけを見ないことです。
印刷不良やリフロー不良で歩留まりが落ちれば、安い材料でも総コストは高くなります。
だから、汎用品比較でも「価格」と「初回合格率」はセットで見るべきです。
Jet・レーザー・特殊工程用途
特殊工程では、最初から対応を明示しているメーカーを優先した方が早いです。
タムラはJET対応Pb-Freeソルダーペーストや局所加熱対応をカテゴリとして持っています。
KOKIもジェットディスペンス、レーザー、マイクロパターン、PoP用途の製品を一覧で示しています。
日本スペリア社もジェットディスペンス、レーザーはんだ付け対応で絞り込みが可能です。 (tamura-ss.co.jp)
特殊工程は、標準リフロー以上に材料と設備の相性が強く出ます。
そのため、この領域ではメーカー選定より先に、「設備名」「吐出方式」「狙う吐出量」「雰囲気条件」をそろえて相談するのが近道です。
選定で失敗しない評価手順
クリームはんだの選定で失敗しない方法は、いきなり1社に決めないことです。
最初に要求仕様を決め、次に3社程度で比較し、最後に工程条件込みで絞るのが最も再現性があります。
要求仕様を先に言語化する
最初に整理すべきなのは、次の項目です。
- 部品最小サイズ
- ステンシル厚み
- リフロー雰囲気
- 基板表面処理
- 洗浄の有無
- 重要不良モード
- 必要信頼性試験
- コスト制約
- 保管条件
この要求仕様がないままメーカー比較をすると、議論がすべて抽象的になります。
営業資料が立派でも、自社の困りごとに合っていなければ意味がありません。
J-STD-005が扱う評価項目に沿って、何を重視するのかを先に言葉にするだけで、候補はかなり絞れます。 (ipcstore.jp)
3社比較で試作する
現実的には、1社に決め打ちするより、3社比較が安全です。
たとえば、総合型1社、課題特化型1社、低温または高信頼型1社という組み合わせにすると、差が見えやすいです。
具体的には、千住金属工業・タムラ・KOKI、または千住金属工業・MacDermid Alpha・Indiumのような比較が組みやすいです。 (千住金属工業)
試作では、印刷直後だけでなく、印刷停止後再開、連続印刷、リフロー後外観、X線、SIR、TCTまで含めて見ます。
この時点で、カタログでは読めない差がかなり出ます。
データシートより先に現場条件を疑う
最後に強く伝えたいのは、データシートを疑うのではなく、自社条件を疑うことです。
材料のせいに見える不良でも、実際にはマスク開口、版離れ、印刷圧、予熱不足、窒素濃度不足、部品反りが原因ということはよくあります。
とくにHiP、NWO、はんだボール、残渣外観は、工程条件の影響が大きいです。 (MacDermid Alpha)
プロの選定は、「良い材料を探す」より「自社条件に勝てる材料を探す」に近いです。
この視点を持つだけで、メーカー比較はかなり実践的になります。
よくある質問
国内メーカーと海外メーカーはどちらが有利ですか
国内サポートや日本語対応、量産立ち上げ支援を重視するなら、千住金属工業、タムラ、KOKI、日本スペリア社は相談しやすいです。
一方で、半導体寄り、超微細、高信頼、海外案件まで含めて比較するなら、MacDermid AlphaやIndiumも非常に有力です。 (千住金属工業)
結論としては、国内か海外かで決めるより、工程と用途で決める方が失敗しません。
低温はんだは本当に万能ですか
万能ではありません。
低温化で熱ダメージを減らせる一方、合金系が変わることで熱疲労や衝撃、リワーク性など別の課題が出ることがあります。
だから、低温は「便利な逃げ道」ではなく、「目的に合えば非常に強い選択肢」と考えるのが適切です。 (千住金属工業)
Type4、Type5、Type6はどう選べばいいですか
一般に、より微細な印刷ほど細かい粉末が必要になります。
MacDermid AlphaはType4/5、IndiumはType3/4/5-MC、千住金属工業とタムラはType6の微細用途を公開しています。 (MacDermid Alpha)
ただし、細かければ必ず良いわけではありません。
酸化、コスト、保管、ダレとのバランスがあるため、最小部品サイズとマスク条件から逆算して選ぶべきです。
ハロゲンフリーは必須ですか
必須かどうかは、製品要求と顧客要求次第です。
KOKI、日本スペリア社、Indium、MacDermid Alphaはいずれもハロゲンフリーやゼロハロゲンの訴求製品を持っています。 (KOKI COMPANY LIMITED |)
ただし、ハロゲンフリーであることだけでは十分ではありません。
必要なのは、印刷性、ぬれ、残渣、電気信頼性を含めて成立しているかどうかです。
価格だけで選んではいけないのはなぜですか
材料単価が安くても、印刷不良、ボイド、HiP、リワーク増加でトータルコストが上がるからです。
低Ag系や汎用品は魅力がありますが、歩留まりや信頼性まで含めて評価しないと、本当の意味で安い材料は見つかりません。 (千住金属工業)
まとめ
クリームはんだメーカー比較で最も重要なのは、メーカーの知名度ではなく、自社の工程課題に合うかどうかです。
総合力で候補に入れやすいのは、千住金属工業、タムラ、KOKIです。
条件が細かい案件や特殊工程では、日本スペリア社が効きやすいです。
低温、微細、半導体、高信頼まで含めて広く比較するなら、MacDermid AlphaとIndiumも強力な候補です。 (千住金属工業)
そして、選定の正解は1社を絶賛することではありません。
自社の部品、基板、マスク、リフロー、信頼性条件を言語化し、それに勝てる材料を見つけることです。
この順番で比較すれば、検索段階の「どこが良いのか」から、実務段階の「どれを試すべきか」まで一気に進められます。

