調達難は品番から始まらない――材料・規制・地政学で読む電子部品不足の新常識

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「また欠品か。」

調達の現場でそのひと言が出るたびに、担当者はメーカーに電話をかけ、代替品を探し、納期を交渉する。

しかし、そのルーティンの中で一度立ち止まって考えてほしいことがある。

その欠品は、本当に「突然」起きたのだろうか。

実は、電子部品の調達難は、品番が発行されるずっと前から、地球規模の動きによって準備されていることが多い。

コンゴのコバルト採掘現場で起きた出来事、ワシントンで署名された輸出規制の条文、台湾海峡の緊張感──これらはすべて、あなたの在庫管理システムに警告を出す前に、すでに動き始めているシグナルだ。

この記事では、電子部品不足を「材料」「規制」「地政学」という3つのレンズから読み解き、次のクライシスを予測するための思考フレームワークをお伝えする。

品番を追いかけるのをやめ、根本から調達戦略を見直すためのヒントを、ぜひ持ち帰ってほしい。


目次

電子部品不足の「本当の震源地」はどこにあるのか

電子部品が不足するとき、多くの現場では「メーカーの生産が追いつかない」という説明で終わる。

しかしそれは結果であって、原因ではない。

調達の現場で20年以上向き合ってきた経験から言えば、欠品の震源地は必ずといっていいほど「品番の外側」にある。

「品番中心主義」が生む認知の盲点

多くの調達システムは、品番(Part Number)を基軸として設計されている。

発注、在庫管理、リードタイム管理、代替品検索──すべてが品番という入口から始まる。

この設計は、安定した供給環境では非常に合理的だ。

しかし問題は、供給崩壊が「品番の外側」から始まること。

例えば、ある半導体メーカーが採用している特定の希少金属が輸出規制の対象になったとする。

その段階では、品番はまだ存在している。

ウェブサイトにも掲載されているし、見積もりも取れる。

しかし3ヶ月後、静かに「受注停止」のアナウンスが来る。

品番管理システムはそれを捕捉できない。なぜなら問題は品番ではなく、その部品を構成する材料の調達不能から始まっているからだ。

3つの震源地が交差するとき、最大の危機が生まれる

電子部品不足の震源地は、大きく3つに分類できる。

「材料制約」「規制変化」「地政学的断絶」だ。

そしてこの3つが同時に動いたとき、2020〜2021年に世界を混乱させたような「半導体ショック」が起きる。

実際、あの時期の自動車向け半導体不足は、単純な需要予測の失敗ではなかった。

新型コロナによる工場稼働停止(地政学的・物理的断絶)、台湾TSMC・韓国サムスンへの生産集中(地政学的脆弱性)、そして特定工場での化学薬品調達トラブル(材料制約)が複合した結果だった。

参考: 経済産業省「半導体・デジタル産業戦略」 https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/semicon_digital/index.html

現代の調達担当者に求められるのは、品番を管理するスキルではなく、これら3つの震源地を常時モニタリングし、前兆を読む「サプライチェーン・インテリジェンス」だ。


材料レンズで読む:鉱物・化学物質が部品供給を左右する仕組み

電子部品は、目に見えないほど多様な素材の集合体だ。

半導体の製造には70種類以上の元素が使われているとも言われており、そのうちのいくつかは、世界のごく限られた地域でしか産出されない。

この「材料の地理的偏在」こそが、調達リスクの隠れた源泉だ。

レアアース・レアメタルの地政学:生産地の集中が生むリスク

コバルト、リチウム、タンタル、ガリウム、ゲルマニウム──これらの名前を聞いて、自社の部品との関連をすぐに思い浮かべられる調達担当者は、残念ながらまだ少数派だ。

しかし現実を見れば、コバルトの約70%はコンゴ民主共和国で採掘されており(出典: USGS Mineral Commodity Summaries 2024 https://www.usgs.gov/centers/national-minerals-information-center/mineral-commodity-summaries)、ガリウムとゲルマニウムに至っては中国が世界生産の80%以上を占めている。

コバルトはスマートフォンや電気自動車のバッテリー電極材に、ガリウムはパワー半導体(GaN)や高周波デバイスに不可欠だ。

つまり、コンゴの政情不安や中国の輸出政策が変わるだけで、あなたの工場のラインが止まるリスクが「今この瞬間も」存在している。

実際、中国は2023年7月にガリウムとゲルマニウムの輸出規制を実施し、市場に衝撃を与えた。

これは材料レベルの規制が、品番管理を完全に無効化した最近の事例として記憶しておくべきだ。

シリコンウェハから特殊ガスまで:半導体製造の「見えないボトルネック」

半導体チップ(品番)の不足が語られるとき、議論はしばしばファブ(製造工場)の生産能力に集中する。

しかし製造の現場を知る者なら、材料と化学品の制約がいかに根深いかを知っている。

半導体製造に使われる特殊ガス(例:ネオン、クリプトン、ヘリウム)は、その多くがウクライナやロシアで精製されていた。

2022年のロシアによるウクライナ侵攻後、世界の半導体業界がネオンガスの供給に戦々恐々としたことは記憶に新しい。

ネオンはリソグラフィ(回路の焼き付け工程)で使用する光源(エキシマレーザー)に必要なガスであり、これが枯渇すれば最先端チップの製造そのものが止まる。

品番のレベルで管理していては絶対に見えないリスクだ。

また、半導体製造に使われるフォトレジスト(感光性化学薬品)は、JSR、信越化学、東京応化工業など日本メーカーが世界シェアの大部分を握っている。

参考: 経済産業省「素材・化学産業の国際競争力と課題」 https://www.meti.go.jp/report/index.html

これは日本の強みであると同時に、何らかの理由でこれらの企業の生産が止まれば、世界のファブが連鎖的に打撃を受けるというリスクでもある。

材料視点を調達実務に落とし込む:BOM(部品表)の深掘り

では、材料レンズを実際の調達業務にどう活かすか。

最も実践的なアプローチは「サブスタンス・マッピング」だ。

自社製品のBOM(Bill of Materials)を起点に、各部品・材料が依存している鉱物・化学物質を1〜2段階掘り下げてリスト化する。

例えば:

  • リチウムイオン電池 → コバルト、リチウム、ニッケル → コンゴ、チリ、インドネシア依存
  • GaNパワーデバイス → ガリウム → 中国80%依存
  • MLCCセラミックコンデンサ → バリウム・チタン系誘電体材料 → 日本・中国メーカー寡占

このマッピングを持っていれば、ニュースで「中国がガリウム輸出規制を検討」という記事を見た瞬間に、自社への影響を即座に評価できる。

品番管理から材料管理へ──この発想の転換が、調達担当者の「次の一手」を決定的に変える。


規制レンズで読む:輸出規制・環境法が調達ルートを塗り替える現実

「規制対応はコンプライアンス部門の仕事」と思っている調達担当者は、今すぐその認識を改める必要がある。

輸出規制・環境規制・安全保障規制は、今や調達の可能性そのものを左右する最重要変数だ。

米国輸出規制(EAR)の強化:品番が「使えなくなる日」が来る

2022年10月、米国商務省は対中半導体輸出規制を大幅に強化した。

特定の性能以上のAIチップ・半導体製造装置・関連ソフトウェアについて、米国の許可なく中国への輸出・再輸出を禁止するものだ。

参考: U.S. Bureau of Industry and Security (BIS) https://www.bis.doc.gov/

この規制の影響は、直接の輸出にとどまらない。

米国の技術・ソフトウェアが一定割合以上含まれる製品は、たとえ日本企業が製造したものであっても、米国の許可なく中国へ販売できない(Foreign Direct Product Rule: FDPR)。

つまり、日本のサプライヤーから購入した部品が「知らないうちに規制対象」になっていたというケースが現実に発生している。

調達担当者が規制から目を背けていられた時代は終わった。

ECCNコード(Export Control Classification Number)の確認は、大口取引において事実上の必須業務になりつつある。

RoHS・REACH・PFAS規制:「使える材料」が法律で狭まっていく

環境規制も、部品調達を根本から変えるファクターだ。

EU RoHS指令(有害物質使用制限指令)は、電気・電子機器における特定有害物質(鉛、水銀、カドミウム等)の使用を制限する。

2024年以降はその対象品目・物質リストがさらに拡大されつつある。

RoHS指令の最新情報: European Commission https://environment.ec.europa.eu/topics/waste-and-recycling/rohs-directive_en

さらに注目すべきはPFAS(ペルフルオロアルキル化合物)規制だ。

PFASは「永遠の化学物質」とも呼ばれる難分解性物質で、半導体製造工程・電子部品の絶縁材料・コーティング材に広く使われている。

EUでは2025年以降、PFASの大規模使用規制が段階的に施行される見通しであり、使用中の部品・材料の代替を迫られるメーカーが続出することが予想される。

「今使っている部品が、数年後に販売できなくなる」──これは決して他人事ではない。

特に医療機器・産業機器・車載機器のように製品ライフサイクルが長い分野では、規制変化への対応が製品の市場継続性を左右する。

安全保障貿易管理(日本版):外為法改正と調達担当者の責任

日本でも、外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく安全保障貿易管理が強化されている。

特に「みなし輸出規制」の拡充(居住者・非居住者への技術提供を輸出とみなす規定の明確化)は、開発・調達・製造が国際的に展開されている企業にとって見逃せない。

参考: 経済産業省 安全保障貿易管理 https://www.meti.go.jp/policy/anpo/index.html

調達担当者が「注文して届ければいい」という受動的な役割を超え、自社のサプライチェーンが規制にどう接しているかを能動的に把握することが、今や組織防衛の一環となっている。


地政学レンズで読む:米中対立・台湾リスクが製造業にもたらす構造変化

2010年代まで、地政学は「外交官と政治学者の話題」だった。

しかし2020年代に入り、地政学は製造業の調達担当者にとって「明日の納期に直結する話題」になった。

この変化の速度と深度は、多くの現場でまだ十分に認識されていない。

「ひとつの工場」への依存がいかに危険か:台湾TSMC問題

世界の先端半導体(5nm以下)の製造能力は、現時点でTSMC(台湾積体電路製造)に90%以上が集中している。

この事実が持つ意味を、数字で確認してほしい。

スマートフォン、PC、データセンター、自動車、医療機器──現代の電子機器の心臓部は、ほぼすべて台湾の一社が製造している。

台湾海峡において何らかの軍事的・政治的緊張が高まった場合、または台湾で大規模自然災害(地震・台風)が発生した場合、世界の電子機器産業は連鎖的・壊滅的な打撃を受ける可能性がある。

これは誇張ではない。

2023年のHarvard Business Reviewでも「台湾有事シナリオにおける経済的打撃は1兆ドル規模」という試算が報告されている。

参考: TSMC公式IR情報 https://investor.tsmc.com/english

チャイナ・プラス・ワン戦略の限界と本質

台湾リスク・中国リスクへの対応策として、多くの企業が「チャイナ・プラス・ワン」を採用してきた。

中国以外のアジア拠点(ベトナム、タイ、インド、マレーシア等)を加えることで、リスク分散を図る戦略だ。

しかしここに、見落とされがちな落とし穴がある。

製造拠点を移しても、材料・部品のサプライチェーン上流は依然として中国・台湾依存のままというケースが多い。

ベトナムで組み立てても、そこに使われる半導体は台湾製、化学薬品は中国製──では「プラス・ワン」で何のリスクが減ったのか。

真のチャイナ・プラス・ワン戦略は、製造だけでなく「原材料・中間材・部品の調達ルートそのものの多様化」まで含めて初めて意味を持つ。

参考: ジェトロ「チャイナ・プラス・ワン戦略の現状と課題」 https://www.jetro.go.jp/

半導体補助金競争と「ブロック経済化」の加速

米国CHIPS法(2022年成立)、欧州Chips Act(2023年成立)、日本の半導体戦略(ラピダス支援等)──各国が国家資金を投じて自国内または友好国での半導体製造能力を確保しようとしている。

参考: 米国CHIPS and Science Act https://www.commerce.gov/tags/chips-and-science-act

この動きは一見、「供給の多様化=リスク低減」に見える。

しかし実態は、世界のサプライチェーンが「米国陣営」と「中国陣営」に分断されていく「テクノロジー・ブロック化」の加速だ。

日本企業にとってこれは、「どの陣営のサプライチェーンに接続するか」という、かつてない戦略的決断を迫られることを意味する。

すでに、特定の中国製部品を使用した製品は米国政府調達から排除されるという規制が現実化している。

顧客が政府・防衛関連である場合、または将来的にグローバル市場への展開を考えている場合、今の調達判断が5年後の市場アクセスを閉じるリスクがある。


3つのレンズを統合する:調達リスクマップの作り方

ここまで、材料・規制・地政学という3つのレンズを個別に見てきた。

実際の調達リスクは、これら3つが複雑に絡み合って発生する。

重要なのは、3つを統合した「調達リスクマップ」を自社用に作ること。

ステップ1:部品・材料の「依存構造の可視化」

まず、自社の主要製品・部品のBOM(部品表)を出発点に、以下の情報を紐づける。

  • 製造地・調達地(国・地域)
  • 使用鉱物・主要化学材料
  • 規制ステータス(RoHS適合、輸出規制コードECCN等)
  • 代替品の有無・代替コスト

この作業を通じて、自社サプライチェーンの「見えない集中リスク」が浮かび上がる。

「全製品に搭載しているマイコンが、すべて同一ファブ(台湾)製だった」という発見は、この作業をしなければ一生気づかない。

ステップ2:シナリオ別の影響評価

次に、以下のようなシナリオを設定し、各シナリオが自社の調達に与える影響を評価する。

シナリオA:中国が希少金属(ガリウム・ゲルマニウム)の輸出全停止 → 影響範囲:GaNデバイス・赤外線センサ・光ファイバー部品など

シナリオB:台湾海峡で軍事的緊張が高まり、TSMCの出荷が60日間停止 → 影響範囲:自社製品のうち先端プロセス品を使用する全品番

シナリオC:EUがPFAS規制を2025年に予定通り施行 → 影響範囲:PTFE絶縁線材・特定フッ素系コーティング部品

このシナリオ評価により、「何が起きたとき、自社は何日で止まるか」という具体的な数字が見えてくる。

ステップ3:リスク優先順位の設定と対応戦略の立案

シナリオ評価をもとに、リスクを「発生可能性」と「ビジネスインパクト」の2軸でマッピングする。

優先度が高いリスクから順に、以下の4つの対応戦略を割り当てていく。

回避(Avoid):そのリスクに晒されない調達ルートに切り替える 転嫁(Transfer):保険・契約条項でリスクを分担する 軽減(Mitigate):在庫積み増し・代替品開発でインパクトを下げる 受容(Accept):発生可能性・影響が低く、コスト対効果が低い場合は甘受する

重要なのは、すべてのリスクに対応しようとしないことだ。

リソースには限界があり、優先順位なき対応は「全部中途半端」という最悪の結果を生む。


現場で使える調達レジリエンス戦略:今日から始める5つのアクション

理論を理解しても、現場で動かなければ意味がない。

ここでは、月曜日の朝から取り組める具体的なアクションを5つ紹介する。

アクション1:サプライヤーへの「材料・調達地ヒアリング」を定期実施する

多くの調達担当者は、サプライヤーに「品番・納期・価格」しか聞かない。

今日から、年1〜2回のサプライヤー定期ヒアリングに「主要原材料の調達地」「製造工程で使用する化学材料」「第3国調達の有無」という質問を追加してほしい。

このひと手間が、材料制約リスクの早期発見につながる。

サプライヤーの中には、自社でもリスクを把握しきれていない企業が多く、こうした質問がサプライヤー自身の意識改革につながるケースも少なくない。

アクション2:「2nd Source」の確保を戦略的に進める

単一ソース(シングルソーシング)は、効率の観点から合理的に見える。

しかし現代のリスク環境では、主要部品については必ず2nd Source(第2調達先)を保有することがリスク管理の基本だ。

2nd Sourceは「使える状態」で確保することが重要であり、承認だけ取って実績ゼロの名目上の代替品では意味がない。

年に数回、意図的に2nd Sourceから発注し、品質・物流・リードタイムを実際に確認しておく。

この「実弾訓練」が、いざというときの切り替えスピードを劇的に高める。

アクション3:規制情報のモニタリング体制を整える

輸出規制・環境規制の更新を、リアルタイムで追いかける仕組みを作る。

最低限チェックしておきたいサイトは以下だ。

これらのサイトのRSSフィードやニュースレターを購読するだけで、重要な規制変化を見逃すリスクが大幅に下がる。

大企業であれば専任のコンプライアンス担当者との定期情報共有会議の設置を、中小企業であれば商社や業界団体を通じた情報収集体制の整備を強く勧める。

アクション4:地政学インテリジェンスを調達判断に組み込む

地政学リスクの情報収集は、専門家でなくても可能だ。

信頼性の高いレポートを定期的に読むことが、肌感覚を養う最短ルートだ。

推奨する情報ソース:

「地政学リスクは自分には関係ない」と感じている調達担当者にこそ、これらのレポートを月1回読む習慣をつけてほしい。

世界の動きと自社の在庫リスクが「つながる感覚」が生まれ、情報を取りに行く解像度が劇的に上がる。

アクション5:「戦略在庫」の概念を経営層に提言する

コスト削減のプレッシャーの中、在庫を増やすことへの抵抗感は根強い。

しかし現代のサプライチェーン環境では、「戦略在庫」はコストではなく「事業継続コスト」として位置づける必要がある。

重要なのは、すべての部品を増やすのではなく「リスクが高く代替困難な部品」に絞って在庫を積むことだ。

前述の調達リスクマップで優先度が高いと判定された部品について、3〜6ヶ月分の安全在庫を保有する。

このコストと、供給断絶により製造ラインが止まった際のコストを比較すれば、経営層への説得材料は十分に揃う。

数字で語ること──それが調達担当者の提言を「コスト要求」から「経営判断」に変える唯一の方法だ。


FAQ:電子部品調達の疑問に答える

Q1. 半導体不足はいつ解消しますか?

特定の品番・カテゴリによって状況は大きく異なる。

汎用品(標準ロジックICや受動部品)は2023年以降に需給が緩和傾向だが、先端プロセスを使う高性能AI・車載向け半導体については、需要の急増と生産能力の構造的不足から、2026年以降も慢性的なタイト感が続くと予測されている。

「半導体不足が解消した」という情報を鵜呑みにせず、品番ごと・カテゴリごとに市場動向を分けて評価することが重要だ。

Q2. 輸出規制によって、日本企業の調達にどんな影響がありますか?

米国の対中輸出規制(EAR強化・FDPR)により、米国技術を含む製品・部品の中国向け販売に制限が生じている。

日本企業が特に注意すべきは、自社製品に使用する半導体・製造装置・ソフトウェアが規制対象に該当するかどうかの確認だ。

また、中国サプライヤーからの調達においても、第三国経由での規制回避は摘発リスクを伴う。

自社のサプライチェーン全体のコンプライアンス体制を点検することを強く勧める。

Q3. 中小製造業でも調達リスクマップは作れますか?

作れる。むしろ中小企業こそ、リスクが顕在化したときのダメージが大きいため、早期着手が重要だ。

最初から精緻なものを目指す必要はない。

自社の主要製品3品について、使用部品の調達地と代替品の有無をリストアップするだけでも、大きな気づきが得られる。

市販の調達リスク管理ツール(例:Resilinc、Interos等)も選択肢になるが、まずはExcelで「簡易版リスクマップ」から始めることを勧める。

Q4. 「チャイナ・プラス・ワン」で本当にリスクは減りますか?

製造拠点を分散するだけでは不十分だ。

材料・部品の調達ルート、製造装置、設計ソフトウェアまで含めたバリューチェーン全体を見直さない限り、「名目上の分散・実質的な集中」になるリスクがある。

チャイナ・プラス・ワンの真価は、最終組み立てだけでなく、Tier2・Tier3の材料調達まで多様化できてはじめて発揮される。

Q5. PFASやRoHS規制への対応はいつから始めるべきですか?

今すぐ始めるべきだ。

特にPFASは、使用禁止が確定してから代替材料・代替部品を探すのでは間に合わない可能性が高い。

代替材料の性能評価・量産検証には最低でも1〜2年を要するケースが多く、規制施行の2〜3年前には動き始めることが現実的な目安となる。

EU REACH規則のSVHC(高懸念物質)候補リストを定期チェックし、自社部品との照合を継続することが対応の第一歩だ。

参考: ECHA(欧州化学物質庁)SVHCリスト https://echa.europa.eu/candidate-list-table

Q6. 地政学リスクは「情報収集」だけで十分ですか?

情報収集は始まりに過ぎない。

収集した情報を「自社の調達判断」に結びつけるプロセスこそが重要だ。

例えば「台湾海峡緊張のニュースを見た→自社の台湾依存部品のリストを確認→在庫状況を評価→必要ならば緊急調達を稟議」という一連の意思決定フローを、事前に組織として設計しておくことが求められる。

地政学インテリジェンスを調達業務に組み込む「プロトコル」を持つことが、次のクライシスに備える企業と、後手に回る企業の分かれ目だ。


まとめ:品番の外側を見る調達担当者が、次の時代を生き残る

電子部品の調達難は、品番から始まらない。

コンゴの鉱山、ワシントンの政策立案室、台湾海峡の海域──これらすべてが、あなたの調達業務に影響を与えている。

この記事でお伝えした3つのレンズ(材料・規制・地政学)は、次のクライシスを「驚き」ではなく「想定内」にするための思考ツールだ。

品番を管理するだけの調達から、サプライチェーンの根本を読む調達へ。

この転換は一夜にはできないが、今日から一歩踏み出すことは誰にでもできる。

まず、自社の主要部品1つを選び、「この部品の材料は何か、どこで作られているか」を調べることから始めてほしい。

その小さな問いが、調達戦略の新しい地平を開く第一歩になる。


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