
廃はんだは、処分対象として見られがちですが、実際には価値を持つ金属スクラップです。
とくに、錫の比率が高いもの、銀を含むもの、異物が少ないものは、買取対象として十分に成立します。
反対に、ボビンや樹脂が多い、種類が混ざっている、成分が不明、小ロットすぎるといった条件では、同じ「廃はんだ」でも価格が大きく下がります。
実際、公開されている2026年3月時点の買取例では、50/50はんだが約2,000円/kg、60/40はんだが約2,200〜2,500円/kg、鉛フリーはんだが約3,700円/kg、銀3%入りはんだが約10,000円/kgと、かなり差があります。 (非鉄金属スクラップの大畑商事)
この記事では、相場の目安だけでなく、なぜその差が生まれるのか、どうすれば査定を落とさずに売れるのか、そして法令面でどこに注意すべきかまで、現場で使える形で整理していきます。
結論から言えば、廃はんだの売却で大切なのは「相場を聞くこと」ではなく、「自社の廃はんだを相場に乗せられる状態にすること」です。
廃はんだの買取相場はどれくらいか
廃はんだの買取相場は、種類ごとの差が非常に大きいです。
そのため、「廃はんだはいくらですか」とひとことで聞いても、正確な答えは出ません。
まず見るべきなのは、鉛入りか、鉛フリーか、銀入りかという合金の違いです。
次に、異物混入、形状、ロット量、持込条件を確認します。
この順番で見ないと、相場感を誤ります。
2026年3月時点の公開買取例
公開されている国内事業者の価格例を見ると、相場の目安はかなり見えてきます。
2026年3月上旬の公開例では、半田(錫50%・鉛50%)が2,000円/kg、半田(錫60%・鉛40%)が2,200円/kg、別業者の持込価格では60%品が2,273円/kg税抜、税込2,500円/kgという例が確認できます。
また、鉛フリーはんだは3,700円/kg、銀入り半田ペーストは7,000円/kg、銀3%入りはんだは10,000円/kgという公開例もあります。 (非鉄金属スクラップの大畑商事)
ここで大切なのは、この金額を「全国共通の固定相場」と受け取らないことです。
これらはあくまで、各社が自社ヤード持込などの条件付きで公開している一例です。
税別か税込か、持込か引取か、分析後精算か即金かでも条件は変わります。 (非鉄金属スクラップの大畑商事)
つまり、相場を知る目的は「この金額で必ず売れる」と思うことではありません。
自社の廃はんだが、低位の価格帯なのか、高位の価格帯なのかを判断するための基準として使うことです。
相場を一律で言えない理由
廃はんだの価格を一律で言えない理由は、素材の中身が違うからです。
はんだは見た目が似ていても、実際の合金組成はかなり違います。
千住金属工業の公開情報でも、業界標準として広く使われるSn-Ag-Cu系のM705だけでなく、Agを含まないSn-Cu系のM20、高温用のSn-Sb系M10など、複数の系統が示されています。 (千住金属工業)
この違いは、そのまま金属価値の違いになります。
たとえば、銀が入れば価格は上がりやすいですし、鉛フリーでもAgレスや低銀系なら、同じ「鉛フリー」でも査定水準は変わります。
ここを知らずに「鉛フリーだから高いはず」と思い込むと、査定結果にギャップが出ます。 (千住金属工業)
さらに、国際的な錫市況も土台として影響します。
2026年3月初旬の市場データでは、LMEベースの錫価格はおおむね4.8万〜5.0万ドル/トン台で推移しており、こうした地金価格の変動が国内スクラップ価格にも波及します。 (Westmetall)
このため、廃はんだの相場は「金属相場+品位+歩留まり+異物控除」で決まると考えるのが最も実務的です。
廃はんだの価格を決める5つの要素

廃はんだの価格を左右する要素は多いように見えますが、実務では5つに整理できます。
1つ目が含有金属。
2つ目が異物混入。
3つ目が形状。
4つ目がロット量。
5つ目が継続性です。
この5つを押さえるだけで、見積の精度はかなり上がります。
含有金属の違いが最も大きい
もっとも大きいのは、やはり含有金属の違いです。
はんだの価値は、ほぼ金属組成で決まります。
錫の比率が高いほど基本価値は上がりやすく、さらに銀が加わると価格は跳ねやすくなります。
公開買取例でも、50/50より60/40のほうが高く、さらに鉛フリー、銀3%入りの順に高単価になっており、これは金属価値の差をそのまま反映した動きです。 (非鉄金属スクラップの大畑商事)
ここで注意したいのは、「鉛フリー=必ず高値」ではないことです。
鉛フリーはんだには、Sn-Ag-Cu系、Sn-Cu系、Sn-Sb系など複数のタイプがあります。
Agを含む標準系は高くなりやすいですが、Agを含まない鉛フリーは、同じ名称でも査定が違ってきます。 (千住金属工業)
このため、売却前に「鉛フリーです」と伝えるだけでは不十分です。
可能なら製品名、メーカー名、MSDS/SDS、購入時仕様書、社内材料表のいずれかを添えることが重要です。
成分が明確になるだけで、買い手は再分析リスクを下げられるため、査定が安定しやすくなります。
異物混入と形状で査定は大きく下がる
次に大きいのが、異物混入です。
同じ成分のはんだでも、ボビン付きのソルダーワイヤー、樹脂ケース付き、基板片やゴミが混ざったもの、フラックス残が多いものは、そのまま減額要因になります。
実際、公開価格でも「プラスチック等のボビンに巻かれているものは減額」と明記されています。 (ウチダメタル)
理由は単純です。
精錬所や回収業者から見れば、金属以外のものは利益ではなく処理コストだからです。
たとえば、はんだドロスやペースト残は、見た目の重量がそのまま金属重量ではありません。
酸化物、フラックス、容器残、異物が混ざるほど、歩留まりが下がり、査定も慎重になります。
その結果、同じ「10kg」でも、きれいな棒はんだ端材と、混ざり物の多い残材では評価がまったく違います。
実務で差がつくのは、この部分です。
高い相場表を見て期待するより先に、「余計なものをどこまで落とせるか」を考えたほうが、最終手取りは大きくなります。
ロット量と継続性で単価は変わる
量がまとまるほど査定が上がりやすいのも、廃はんだの特徴です。
これは特別な話ではなく、分析、回収、輸送、事務の固定コストがあるからです。
少量スポットより、月次で一定量が出る案件のほうが、買い手は条件を出しやすくなります。
たとえば、10kg未満の単発案件では手数が重く感じられても、毎月30kg、50kg、100kgと継続して出るなら、見積の出し方そのものが変わることがあります。
ここで見落とされやすいのが、「単価だけ」を比較してしまうことです。
実際には、引取費、梱包条件、分析手数料、最低ロット、入金条件まで見ないと、総額比較になりません。
このため、相見積もりでは「kg単価」だけでなく、「控除条件」「最低ロット」「定期回収可否」を必ず揃えて比較すべきです。
高く売れやすい廃はんだと安くなりやすい廃はんだ
高く売れやすい廃はんだには、共通点があります。
それは、成分が明確で、異物が少なく、再資源化しやすいことです。
逆に安くなりやすいものは、成分が不明で、混合状態で、歩留まりが読みにくいものです。
つまり、価格差は「価値の差」だけでなく、「扱いやすさの差」でもあります。
鉛フリー・銀入りは高くなりやすい
高く売れやすい代表は、鉛フリーの高錫系と銀入りはんだです。
公開されている価格例でも、鉛フリーはんだが3,700円/kg、銀入り半田ペーストが7,000円/kg、銀3%入りはんだが10,000円/kgという水準が確認できます。
50/50や60/40に比べると、明確に高い価格帯です。 (非鉄金属スクラップの大畑商事)
なぜ高いのか。
答えは、再生後に回収できる金属価値が高いからです。
特に銀入りは、含有率がわずかでも査定に効きます。
また、鉛フリー化はRoHS対応の流れの中で広く進み、業界ではSn-Ag-Cu系が標準材料として普及してきました。
千住金属工業も、M705を業界標準組成として位置づけています。 (千住金属工業)
ここでの実務ポイントは、見た目で判断しないことです。
銀入りかどうかは、現場の記憶だけでは危険です。
ラベル、箱、SDS、購買履歴、型番が残っているなら、必ず査定時に添付してください。
このひと手間で、「不明品扱い」から「既知材扱い」に変わることがあります。
50/50・60/40・ペースト残・ドロスは状態差が大きい
一方で、50/50や60/40の鉛入りはんだは、昔から流通量が多い一方、状態差による価格ブレも大きいです。
公開例では、50/50が2,000円/kg、60/40が2,200〜2,500円/kg程度で推移していますが、これはあくまで比較的分かりやすい条件の例です。
実際には、巻き線、汚れ、他金属混入、フラックス過多で減額されやすいです。 (非鉄金属スクラップの大畑商事)
また、ペースト残やドロスは、単純に「はんだの延長」と考えないほうが安全です。
ペースト残にはフラックス分が含まれ、ドロスには酸化物が多く含まれます。
つまり、名目重量と回収可能金属重量が一致しにくいのです。
このタイプは、売れないわけではありません。
ただし、棒はんだやワイヤー端材に比べて評価が慎重になりやすく、分析や現物確認前提になるケースが増えます。
だからこそ、同じ箱に何でも入れないことが重要です。
棒はんだ端材、ワイヤー端材、ペースト残、ドロスは、それぞれ別管理にしてください。
この分別だけで、査定の納得感が大きく変わります。
廃はんだを高く売るための実務ポイント
廃はんだを高く売るために最も効くのは、相場予想ではありません。
分別と情報整理です。
これは地味ですが、実務では最も再現性があります。
市況を個社で動かすことはできませんが、自社の出し方は変えられるからです。
分別保管だけで査定は変わる
結論から言うと、混ぜないことが最大の値上げ策です。
鉛入りと鉛フリーを混ぜない。
銀入りと通常品を混ぜない。
ペースト残と棒はんだ端材を混ぜない。
ボビン、紙箱、樹脂容器、基板片をできるだけ外す。
この基本だけで、査定の精度は大きく上がります。
買い手から見ると、分別済みの廃はんだは再資源化の見通しが立ちやすく、検収も早くなります。
逆に混合品は、最悪の場合「低いほうに合わせた概算査定」になりがちです。
現場でありがちなのは、「どうせ全部はんだだから一緒でいいだろう」という保管です。
これは最も損をしやすいパターンです。
もし分別の手間を最小化したいなら、排出地点で容器を分けてください。
後工程で分けるより、発生時点で分けるほうが確実で、社内ルールにも落とし込みやすいです。
見積依頼時に伝えるべき項目
見積依頼の精度を上げるには、伝える情報を揃えることが重要です。
最低限、次の項目はまとめておくべきです。
・種類(50/50、60/40、鉛フリー、銀入りなど)
・形状(棒、線、ペースト、ドロス、端材)
・概算重量
・異物の有無
・ボビンや容器の有無
・メーカー名、型番、SDSや仕様書の有無
・単発か継続発生か
・持込か引取希望か
・所在地
この情報がそろっていれば、買い手はかなり具体的に返答できます。
逆に、「廃はんだがあります。いくらですか」だけでは、まともな比較ができません。
写真も有効です。
全体写真、拡大写真、ラベル写真、重量が分かる写真の4点があるだけで、話が早くなります。
相見積もりで比較すべきポイント
相見積もりでは、単価だけを比較してはいけません。
ここを間違えると、見かけ上の高値に飛びついて、実際は手取りが低くなることがあります。
比較すべきなのは、次の4点です。
・kg単価
・分析後精算か、事前確定か
・引取費や運賃の有無
・異物控除、容器控除、最低ロット条件
たとえば、kg単価が高く見えても、引取費が別、最低ロット未満で減額、分析結果で再調整という条件なら、実質的には普通の見積ということがあります。
反対に、単価は少し低くても、引取込み、継続回収あり、入金早めなら、現場運用ではこちらのほうが優秀です。
廃はんだ売却は、単発の高値狙いより、継続してブレなく回せる体制づくりのほうが、長期的な利益につながります。
買取と産業廃棄物処理の境界
廃はんだで見落とされやすいのが、ここです。
売れるものなら何でも「有価物」で終わる、と考えるのは危険です。
実際には、廃棄物該当性は総合判断で見られます。
環境省は、物の性状、排出状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無、占有者の意思などを総合的に勘案して判断する考え方を示しています。 (環境省)
有価物か廃棄物かは総合判断になる
大事なのは、「お金になるから即セーフ」ではないことです。
実際、環境省は廃棄物該当性について、単に有償売却かどうかだけでなく、実態全体で判断する考え方を示しています。
占有者が不要とし、通常の取扱い形態や性状から見て廃棄物に当たるなら、適正処理の考え方から逃れられません。 (環境省)
廃はんだも同じです。
成分が明確で、継続的に資源として売買され、適正に保管されているなら有価売却として進めやすい一方、混合状態、汚染、管理不備、行先不明といった状態では、問題が生じやすくなります。
特に電子機器由来の金属スクラップ全般では、不適正保管や処理が環境問題につながることが指摘されています。 (環境省)
迷う場合は、自己判断で押し切るべきではありません。
自治体の廃棄物担当部署、契約予定の回収業者、法務・環境部門とすり合わせることが重要です。
マニフェストやJWNETが必要になる場面
産業廃棄物として委託処理する場合は、マニフェスト管理が必要になります。
電子マニフェスト制度は、排出事業者、収集運搬業者、処分業者の3者が情報処理センターを介してやり取りする仕組みで、全国の情報処理センターとして日本産業廃棄物処理振興センターが運営しています。 (公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター)
実務で参考になる公式情報は、公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター(JWNET)です。
URLは https://www.jwnet.or.jp/jwnet/about/ です。 (公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター)
また、紙マニフェスト運用では、排出事業者や処理業者に5年間の保存義務があることが自治体案内でも整理されています。
運搬終了や処分終了の返送確認も重要です。 (city.amagasaki.hyogo.jp)
つまり、廃はんだが「売却案件」なのか「処理委託案件」なのかで、必要な運用は変わります。
ここを曖昧にしたまま進めるのが、一番危険です。
廃はんだ買取のよくある質問
少量でも売れますか
売れる可能性はあります。
ただし、少量だと引取や分析の固定コストが重くなるため、持込限定、最低ロット設定、もしくは他金属と合わせた回収提案になることがあります。
少量案件ほど、事前に写真、重量、成分情報を揃えておくことが重要です。
ボビン付きやフラックス入りでも大丈夫ですか
大丈夫な場合はあります。
ただし、そのまま高く売れるとは限りません。
実際にボビン付きは減額と明記している公開価格例があります。
フラックスや容器が多いほど、金属歩留まりが下がるためです。 (ウチダメタル)
相場は毎日変わりますか
厳密には変わります。
廃はんだの土台には、錫を中心とした地金相場の動きがあります。
2026年3月初旬のLME系データでも、数日のあいだに水準が動いています。 (Westmetall)
ただし、実務では毎日1円単位で追うより、
「今月は強いか、弱いか」
「継続契約で条件を固定するか」
を考えたほうが判断しやすいです。
参考として、国際市況の確認先にはLME Tin https://www.lme.com/metals/non-ferrous/lme-tin があります。 (lme.com)
証明書や成分表は必要ですか
必須ではないこともありますが、あると圧倒的に有利です。
SDS、仕様書、製品ラベル、メーカー型番、購買履歴があると、査定側は再分析の負担を減らせます。
とくに鉛フリーや銀入りは、証拠資料があるだけで査定の精度が上がりやすいです。
鉛フリー合金の種類を把握する参考としては、千住金属工業のはんだ合金ページが分かりやすいです。
URLは https://www.senju.com/ja/products/soldering_materials/alloy/ です。 (千住金属工業)
まとめ
廃はんだの買取相場を正しく見るうえで、最も大切なのは「平均価格」を追うことではありません。
自社の廃はんだが、
どの合金で、
どれだけ純度が高く、
どれだけ分別され、
どれだけ継続的に出るのか。
この4点を整理することです。
実際の公開例では、2026年3月時点で50/50が約2,000円/kg、60/40が約2,200〜2,500円/kg、鉛フリーが約3,700円/kg、銀3%入りが約10,000円/kgという価格差が見られます。
この差は、見た目ではなく、含有金属と歩留まりの差です。 (非鉄金属スクラップの大畑商事)
したがって、廃はんだを高く売る近道は、次の3つに集約されます。
種類を混ぜないこと。
成分情報を残すこと。
単価だけでなく、控除条件まで含めて比較すること。
さらに、売却なのか、産業廃棄物としての委託処理なのかを曖昧にしないことも重要です。
マニフェストやJWNETの対象になる場面では、法令に沿った運用が必須です。 (公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター)

