
外国人技能実習生の受け入れ費用を考えるとき、最初に押さえるべき結論は明確です。
給与だけを見ても、正しい総額はわかりません。
実際には、監理団体に支払う監理費、技能実習計画の認定申請手数料、住居の準備費、法定福利費、帰国旅費、社内の教育・生活指導コストまで含めてはじめて、本当の受け入れ費用が見えてきます。 (オティット)
しかも、2026年3月時点では技能実習制度は現行制度として動いていますが、育成就労制度は2027年4月1日に施行予定です。
つまり今は、制度が変わる前に現行制度の費用構造を正しく理解し、無理のない受け入れ計画をつくることがとても大切な時期です。 (厚生労働省)
この記事では、外国人技能実習機構、JITCO、出入国在留管理庁、厚生労働省、日本年金機構の公表情報をもとに、外国人技能実習生の受け入れ費用を初期費用、月額費用、不定期費用に分けて整理します。
あわせて、見積書で見落としやすい隠れコストや、安く見える提案に潜む注意点までわかりやすく解説します。 (オティット)
外国人技能実習生の受け入れ費用の結論
外国人技能実習生の受け入れ費用は、団体監理型で考えるのが現実的です。
その理由は、2023年末時点で技能実習の受け入れの98.3%が団体監理型であり、企業単独型は1.7%にすぎないからです。
多くの企業にとって、比較対象になるのは「どの監理団体を通すか」「その監理費が妥当か」「給与以外の企業負担をどこまで見込むか」です。 (JITCO)
ここで先に数字を押さえると、外国人技能実習機構が2025年3月に公表した令和5年度の概要では、技能実習生1人当たりの月額監理費の平均は3万80円でした。
また、0円以上4万円未満の監理費に収まっている監理事業所が全体の82.0%を占めています。
つまり、月額監理費だけ見れば、実務上は2万円台後半から4万円弱のゾーンが一つの目安になります。 (オティット)
ただし、ここで注意が必要です。
この月額監理費は、あくまで監理団体に払う定期費用の目安です。
企業が実際に負担する総額は、これに賃金、社会保険、雇用保険、住居、光熱、家具家電、通勤、作業服、社内教育、生活支援のコストが加わります。
そのため、「月3万円前後で受け入れられる」と考えるのは完全に誤りです。 (オティット)
結論として、外国人技能実習生の費用を判断するときは、監理費ではなく「会社の総支出」で見るべきです。
そして見積りは、初期費用、月額費用、不定期費用の3層で組み立てるべきです。
この見方に変えるだけで、受け入れ後の資金計画がかなり安定します。
まず押さえるべき総額の考え方
費用の考え方はとてもシンプルです。
外国人技能実習生の受け入れ費用は、「監理団体へ払う費用」と「会社が雇用主として直接負担する費用」に分かれます。
前者には、職業紹介費、講習費、監査指導費、その他諸経費があります。
後者には、給与、社会保険、雇用保険、住居準備、家具家電、通勤、教育、生活支援などがあります。 (オティット)
この二つを一緒に見ないと、見積りは必ず甘くなります。
実務では、監理団体から提示される見積書は比較的きれいにまとまっています。
一方で、会社の内部で発生する人件費や生活支援の工数は、見積書に表れにくいです。
だから、表に出る費用より、表に出にくい費用の方が後から効いてくるのです。
監理費だけを見て判断してはいけない理由
監理費は重要です。
しかし、監理費だけでは判断できません。
たとえば、技能実習生の報酬は「日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上」でなければならず、単に最低賃金だけを見ればよいわけではありません。 (オティット)
さらに、健康保険・厚生年金保険の適用事業所に常時使用される人は、国籍に関係なく社会保険の被保険者になります。
雇用保険についても、加入要件を満たせば事業主が届出を行う必要があります。 (年金ネット)
つまり、費用の本体は監理費ではなく、雇用コスト全体です。
ここを外してしまうと、「監理費が安い団体を選んだのに、結局トータルでは高かった」という失敗が起きやすくなります。
2026年時点の制度前提
費用を考える前に、制度の現在地を確認しておく必要があります。
今の時点では、外国人技能実習制度はまだ現行制度です。
厚生労働省の案内でも、育成就労制度は令和9年4月1日に施行予定と示されています。 (厚生労働省)
この前提が大切なのは、今すぐ受け入れを考える企業にとって、費用の実務はまだ技能実習制度ベースで動いているからです。
制度が変わる予定があるからといって、2026年時点の受け入れ費用が空白になるわけではありません。
むしろ今は、「現行制度でかかる費用を正確に押さえたうえで、将来の制度移行に備える」ことが最適解です。 (厚生労働省)
技能実習制度はまだ現行制度
JITCOの制度説明でも、技能実習制度は技能実習計画に基づき、最長5年の枠組みで運用される制度として整理されています。
第1号、第2号、第3号と段階が分かれ、優良な監理団体・実習実施者であれば第3号まで進むことができます。 (JITCO)
この制度構造は費用にも直結します。
なぜなら、1年目と2年目以降では、必要な申請、試験、監理内容、帰国対応の考え方が変わるからです。
また、5年受け入れを前提にする場合は、3年で終わるケースよりも、長期の住環境整備や昇給設計まで含めて考える必要があります。
団体監理型が大半である理由
団体監理型が大半である理由は、制度運用の現実にあります。
監理団体は、技能実習計画の作成指導、入国後講習、定期監査、相談対応、宿泊施設の確認などを担います。
JITCOの説明では、監理団体は少なくとも3か月に1回以上の定期監査を行い、在籍技能実習生の4分の1以上との面談や生活環境の確認も行うことが必要です。 (JITCO)
つまり、監理費は単なる紹介手数料ではありません。
制度を適正に回すための監督・支援コストです。
この実務があるからこそ、極端に安い監理費には慎重になるべきだ、という視点が生まれます。
外国人技能実習生の受け入れ費用の内訳

費用の内訳は、大きく3つに分けると整理しやすくなります。
初期費用、毎月かかる費用、不定期にかかる費用です。
この三つに切って見れば、見積書の読み違いがかなり減ります。
初期費用
初期費用には、監理団体への職業紹介費や講習費、募集・選抜に要する費用、入国後講習時の手当などが含まれます。
外国人技能実習機構の2022年公表資料では、監理費の初期費用の平均は1人当たり34万1,402円でした。
また、技能実習計画の認定申請手数料は、外国人技能実習機構の案内で1件1名当たり3,900円です。
認定申請も変更認定申請も同額で、申請前に指定口座へ振り込む形になっています。 (オティット)
在留資格認定証明書交付申請については、出入国在留管理庁の案内で手数料はかかりません。
この点は見落とされがちですが、少なくともCOEそのものに手数料が発生するわけではありません。 (法務省)
ここに、会社側では別途、寮の敷金礼金、寝具、家電、自転車、作業服、通勤手段の準備などが乗ってきます。
この部分は地域や会社方針で差が大きいため全国一律の相場は言えませんが、実務では初期費用を押し上げやすい代表項目です。
毎月かかる費用
毎月かかる費用の中心は、給与と監理費です。
令和5年度のOTIT概要では、技能実習生1人当たりの月額監理費の平均は3万80円でした。 (オティット)
一方で、給与は最低賃金以上であればよい、という単純な話ではありません。
技能実習生の報酬は、日本人が同等の業務に従事する場合と同等以上であることが必要です。 (オティット)
それでも概算の下限イメージを持ちたい場合は、厚生労働省の令和7年度地域別最低賃金の全国加重平均1,121円を一つの参考にできます。
仮に月160時間で置くと、賃金だけで約17万9,360円です。
ここに月額監理費平均3万80円を足すと、監理費込みで月20万9,440円になります。
ただし、この金額には社会保険、雇用保険、住居、光熱、通勤、教育コストはまだ入っていません。 (厚生労働省)
つまり、実務で見るべき月額は「給与+監理費」では終わりません。
ここに法定福利費と生活支援費が乗ると考えるのが正しい見方です。
不定期にかかる費用
不定期費用は、見積りが甘くなりやすい盲点です。
OTITの2022年公表資料では、不定期費用の平均は1人当たり15万4,780円でした。
主な内訳として、一時帰国に係る渡航費、帰国のための渡航費、来日時の初回渡航費などが挙げられています。
また、在留資格の変更や在留期間更新が必要な場面では、出入国在留管理庁の2025年改定後の手数料がかかります。
公式PDFでは、在留資格の変更や在留期間の更新は窓口申請6,000円、オンライン申請5,500円と案内されています。 (法務省)
試験費用、健康診断、急な通訳対応、トラブル時の交通費なども、この不定期費用に入りやすいです。
見積り段階でここをゼロにしてしまうと、後から資金計画が崩れやすくなります。
公式データで見る監理費の相場
相場感をつかむには、民間サイトの「だいたいこれくらい」ではなく、公式資料を見るのが確実です。
このテーマでは、外国人技能実習機構の公表値が最も使いやすい指標になります。
月額監理費の平均
令和5年度に実習監理の実績があった3,554監理事業所を対象にしたOTITの概要では、技能実習生1人当たりの月額監理費の平均は3万80円でした。
内訳分布を見ると、2万円以上4万円未満が61.5%で最も多く、0円以上2万円未満が20.5%、4万円以上6万円未満が15.0%でした。 (オティット)
この数字からわかるのは、月額監理費が3万円前後というのはかなり現実的な水準だということです。
逆に、極端に高い場合は何が含まれているかを確認し、極端に安い場合は何が含まれていないかを確認する必要があります。
ここを確認せずに契約すると、後から別名目で追加費用が出ることがあります。
3年・5年で見た監理費の目安
3年、5年という長いスパンで見ると、監理費だけでもまとまった金額になります。
OTITの2022年公表資料では、初期費用と各号の定期費用年額を合計した平均として、技能実習2号までの3年間で約141万円、技能実習3号までの5年間で約198万円と示されています。
ここで重要なのは、この数字が「監理費等」の目安であり、給与や社会保険、住居費を含まないことです。
つまり、監理費だけで3年間約141万円かかる以上、会社が実際に払う総額はそれよりかなり大きくなります。
この構造を知らずに「3年で数十万円程度」と考えるのは危険です。
技能実習計画認定申請などの公的手数料
公的手数料は、件数が増えると意外と無視できません。
技能実習計画の認定申請手数料は、1件1名当たり3,900円です。 (オティット)
在留資格認定証明書交付申請は無料です。 (法務省)
在留資格変更や在留期間更新は、2025年4月以降、窓口6,000円、オンライン5,500円になっています。 (法務省)
1人あたりでは小さく見えても、複数名受け入れると積み上がります。
しかも、公的手数料は期限管理とセットです。
書類不備や再申請が出れば、金額以上にスケジュールコストが大きくなります。
見落としやすい隠れコスト
ここからが、実務では最も大事なところです。
受け入れ費用で本当に差が出るのは、見積書に出やすい監理費ではなく、会社が社内で抱える隠れコストです。
給与と法定福利費
まず大きいのが、給与と法定福利費です。
技能実習生の報酬は日本人と同等以上が原則であり、単に「最低賃金を払えばよい」という理解では足りません。 (オティット)
さらに、健康保険・厚生年金保険に加入している適用事業所に常時使用される人は、国籍に関係なく被保険者になります。
雇用保険の要件を満たす場合も、事業主が資格取得届を出す必要があります。 (年金ネット)
このため、会社が見るべき数字は「額面給与」ではありません。
額面給与に、会社負担分の社会保険料や雇用保険料を上乗せした実支出で見る必要があります。
ここを忘れると、月額費用が想定より重くなります。
住居・家具家電・通勤
住居費も大きな支出です。
JITCOのハンドブックでは、技能実習生のために適切な宿泊施設を確保する必要があり、寝室は1人4.5㎡以上とされています。
また、食費や居住費などを技能実習生が定期的に負担する場合は、十分に説明したうえで合意し、その費用が実費等で適正である必要があります。
つまり、会社は単に安い部屋を用意すればよいわけではありません。
基準を満たす部屋を用意し、家具家電や寝具、生活導線、通勤手段まで整えなければ、結局は運用で詰まります。
実務では、ここを節約しすぎると、生活不満、定着不安、近隣トラブルにつながりやすいです。
社内教育・生活指導・通訳対応
技能実習は、採用して終わりではありません。
JITCOのハンドブックでは、実習実施者は技能実習責任者、技能実習指導員、生活指導員を配置しなければならないと整理されています。
技能実習責任者は過去3年以内に講習修了が必要です。
この体制は、会社にとって人件費そのものです。
現場で教える時間、生活相談に乗る時間、病院対応、役所対応、トラブル対応、母国語通訳の手配などは、見積書に出にくいのに確実に発生します。
受け入れ費用を正しく見たいなら、この社内工数をゼロで置いてはいけません。
費用を安く見せる見積書に注意
費用で失敗する企業には共通点があります。
それは、「合計額が安い」ことを優先しすぎて、費用の中身を確認していないことです。
監理費が極端に安い場合の見方
監理団体は、実習計画の作成指導、入国後講習、3か月に1回以上の監査、相談対応、生活環境確認など、かなり多くの実務を担います。 (JITCO)
そのため、監理費が極端に安い場合は、二つの見方が必要です。
一つは、本当に効率化できているのか。
もう一つは、本来必要な支援や監査が薄くなっていないか、です。
JITCOの説明では、監理費はあらかじめ用途と金額を明示したうえで徴収することが必要です。
OTITの監理費表でも、費用は適切に精算し、実費を徴収するとされています。 (JITCO)
だから、安さを見るときは、単価ではなく内訳を見るべきです。
「何が入っていて、何が別料金か」を聞けるかどうかで、見積りの質は大きく変わります。
本人負担にしてはいけない費用
ここは必ず押さえたいポイントです。
JITCOのハンドブックでは、監理団体から徴収される監理費を、直接または間接に技能実習生に負担させてはいけないと明記されています。
また、食費や居住費などを本人負担にする場合でも、実費等で適正であることが必要です。
つまり、会社の都合で本来の受け入れコストを技能実習生へ転嫁する発想は通りません。
ここを曖昧にすると、制度違反リスクだけでなく、信頼関係そのものが崩れます。
失敗しない費用シミュレーションの作り方
費用シミュレーションは、難しく考える必要はありません。
大切なのは、漏れなく入れることです。
初年度の見積り式
初年度は、次の式で考えると整理しやすいです。
初年度総額
= 初期監理費
+ 技能実習計画認定申請手数料
+ 賃金12か月
+ 月額監理費12か月
+ 会社負担の法定福利費
+ 住居初期費用
+ 家具家電・寝具・通勤準備
+ 社内教育・通訳対応費
この式にすると、最初から「監理費以外」を入れられます。
現場では、この一手間だけで見積り精度が大きく上がります。
たとえば、月160時間、全国加重平均1,121円を仮置きした場合、賃金だけで月17万9,360円です。
これに月額監理費平均3万80円を足すと、監理費込みで月20万9,440円になります。
さらに初期監理費平均34万1,402円と認定申請手数料3,900円を加えると、初年度の入口だけでも相当な金額になることがわかります。 (厚生労働省)
3年総額の見積り式
3年総額は、初年度総額をそのまま3倍してはいけません。
理由は、初期費用は初年度に集中し、2年目以降は在留関係費用、試験費用、昇給、帰国費など別の支出構造になるからです。
考え方としては、次の形が実務向きです。
3年総額
= 初年度総額
+ 2年目年間費用
+ 3年目年間費用
+ 試験・更新・帰国に関する不定期費用
監理費等だけでも、OTITの参考値では3年間で約141万円です。
ここに賃金と法定福利費が毎月乗る以上、3年総額は「思ったよりかなり大きい」と考える方が安全です。
監理団体に確認すべき質問
見積り精度を上げるには、次の三点を確認すると効果的です。
一つ目は、月額監理費に何が含まれているかです。
二つ目は、初期費用と不定期費用の発生条件です。
三つ目は、会社側で別途準備が必要なものが何かです。
この質問をすると、見積書の透明度が一気に上がります。
特に、「この費用は必ず発生するのか」「人数が増えたら1人当たり単価はどう変わるのか」「緊急対応や通訳は別料金か」は、最初に確認しておく価値があります。
FAQ
外国人技能実習生1人あたり毎月いくらかかりますか
監理費だけなら、OTIT公表の令和5年度平均は月3万80円です。
ただし、会社の実際の毎月支出は、これに給与、法定福利費、住居、通勤、生活支援コストが加わります。
そのため、毎月いくらかという問いには、「監理費だけでなく総雇用コストで見るべき」というのが正確な答えです。
給与は最低賃金でよいですか
最低賃金だけでは判断できません。
技能実習生の報酬は、日本人が同等の仕事に従事する場合と同等以上である必要があります。
最低賃金は下限の参考にはなりますが、それだけで制度要件を満たすとは限りません。
住居費は本人負担にできますか
できます。
ただし、何でも取ってよいわけではありません。
食費、居住費などを本人に負担してもらう場合は、十分に説明したうえで合意し、その金額が実費等で適正である必要があります。
3年間でいくら見ておけばよいですか
公式に公表されている監理費等の参考値では、3年間で約141万円です。
ただし、これは給与や社会保険、住居費を含みません。
実際の会社負担総額は、それよりかなり大きくなります。
だからこそ、監理費だけでなく、賃金と社内コストを含めて試算する必要があります。
2027年以降はどう考えるべきですか
2026年3月時点では、技能実習制度は現行制度です。
育成就労制度は2027年4月1日に施行予定です。
今すぐ受け入れを検討する企業は、まず現行制度で費用を正確に把握し、その上で将来の制度変更に備えて監理団体や専門家と情報更新を続けるのが現実的です。
まとめ
外国人技能実習生の受け入れ費用は、監理費だけで判断してはいけません。
本当に見るべきなのは、初期費用、毎月の監理費、給与、法定福利費、住居、教育、通訳、帰国対応まで含めた総額です。
公式情報で押さえておきたい基準は明確です。
月額監理費の平均は3万80円。
3年の監理費等の参考値は約141万円。
技能実習計画認定申請手数料は1件1名3,900円。
技能実習生の報酬は日本人と同等以上。
監理費を本人に負担させることはできません。
実務で失敗しないコツは、費用を安く見せる見積りではなく、漏れなく積み上げた見積りをつくることです。
特に、住居、法定福利費、社内教育工数を見落とさないことが重要です。
ここまで見えていれば、監理団体の見積書を受け取ったときも、かなり冷静に判断できます。

