
「日本にはいったい、どれだけの半導体工場があるのだろう?」
そう思ったことはないでしょうか。
テレビや新聞では「TSMC熊本工場」「ラピダス北海道」「キオクシア三重」といった巨大プロジェクトが連日報道されています。
でも実際には、それ以外にも日本全国に数多くの半導体工場が稼働していて、
私たちの暮らしや産業を支え続けています。
この記事では、2026年時点の日本全国の主要な半導体工場を、都道府県別に住所・電話番号・公式サイト・製造品目まで含めて網羅的にご紹介します。
製造業の調達担当者、就職・転職を考えている方、半導体産業に投資・関心を持つビジネスパーソン、すべての方に役立てていただける内容を心がけました。
単なるリスト記事ではなく、「なぜその工場がその場所にあるのか」「その製品が世界・日本の産業においてどんな意味を持つのか」という現場の視点も織り交ぜながら解説していきます。
ぜひ最後までお読みください。
2026年、日本の半導体工場はなぜ今これほど注目されているのか
日本の半導体工場が、今これほどまでに注目を集めているのには、明確な歴史的背景があります。
1980年代、日本は世界の半導体市場で約50%のシェアを持つ「半導体大国」でした。
NECや日立、東芝、富士通、三菱電機といった日本メーカーが世界の半導体市場を席巻していたのです。
しかし、1990年代以降の産業政策の転換、円高、台湾・韓国メーカーの台頭によって、日本の半導体産業は長い低迷期に入りました。
2020年代初頭には、日本の半導体メーカーの世界シェアは
約9%にまで縮小していたのが現実です。
転換点となったのが、2020〜2022年の世界的な半導体不足でした。
自動車が作れない。家電が届かない。
医療機器の製造が止まる。
これほど深刻な供給不足を経験し、日本政府と産業界は「半導体の国産製造能力こそが国家の安全保障と産業競争力の根幹である」という認識を新たにしました。
経済産業省は2021年6月に「半導体・デジタル産業戦略」を策定・公表し、
(参考:経済産業省「半導体・デジタル産業戦略」
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/semicon_digital.html)
その後、一企業への直接補助金も可能とする法整備を行いました。
この政策転換を受け、2024年から2026年にかけて、日本各地で半導体工場の新設・増設・再稼働が相次いでいます。
市場調査会社Knometa Researchによれば、2021年末時点での日本国内の半導体製造能力は世界全体の約15%に相当しており、台湾(約21%)に次ぐ規模を維持しています。
これはTSMCやMicronなどの外資系工場も含んだ数字ですが、日本が「製造大国」としての実力を持ち続けていることの証左でもあります。
では、具体的にどのような工場が、どの地域に存在しているのか。
都道府県別に詳しく見ていきましょう。
【北海道】2nmの最先端半導体に挑む「ラピダス千歳工場」
北海道は、2026年時点で日本全体の半導体産業の中で
最もホットな注目エリアとなっています。
その理由は、ただ一つ。
Rapidus株式会社(ラピダス)が、北海道千歳市に
世界最先端の2nmプロセス対応半導体工場を建設中だからです。
Rapidus株式会社(ラピダス)IIM-1工場
企業名:Rapidus株式会社(ラピダス)
所在地:北海道千歳市美々(IIM-1工場)
電話番号:011-232-5580(本社:東京都千代田区)
公式サイト:https://www.rapidus.inc
製造品目:2nmプロセス先端ロジック半導体(2027年量産開始予定)
ラピダスとは、ソニー・トヨタ自動車・デンソー・キオクシア・NTT・NEC・ソフトバンク・三菱UFJ銀行という日本を代表する大手8社が共同出資して2022年に設立した、半導体ファウンドリ(製造受託専業)の新会社です。
名前の由来はラテン語で「速い(Rapidus)」。
その名の通り、世界の半導体技術の最先端に追いつくために猛スピードで走り続けているプロジェクトです。
工場名の「IIM(イーム)」は、「Innovative Integration for Manufacturing」の略称で、単なる製造工場ではなく「革新的な製造統合拠点」というコンセプトを表しています。
技術面では、米IBMが開発済みの2nmプロセス技術と、ベルギーの研究機関imecが持つEUV(極端紫外線)露光装置技術を組み合わせて活用します。
2025年4月にパイロットラインを稼働させ、2027年の本格量産開始を目指しています。
量産が実現すれば、日本国内で生産される半導体としては史上最先端のプロセスとなります。
北海道千歳市が選ばれた理由は明確です。
石狩川水系による豊富で高品質な水資源。内陸部に位置する地震・津波リスクの低さ。冷涼な気候による冷却コストの削減。新千歳空港・高速道路・港湾への良好なアクセス。
半導体工場に必要な立地条件を、これほど高いレベルで満たしているエリアは日本でも稀です。
ラピダスの挑戦は、単なる一企業の話ではありません。
日本の半導体産業全体の命運を担うプロジェクトとして、業界内外から熱い視線を集め続けています。
【青森県】EV時代の要「富士電機津軽セミコンダクタ」
富士電機津軽セミコンダクタ株式会社
企業名:富士電機津軽セミコンダクタ株式会社
所在地:青森県五所川原市大字一野坪
電話番号:0173-38-5511
公式サイト:https://www.fujielectric.co.jp
製造品目:SiC(炭化ケイ素)パワー半導体(2024年量産開始)
青森県五所川原市で、富士電機グループのSiCパワー半導体専門工場が稼働しています。
「SiCパワー半導体」という言葉を初めて聞く方もいるかもしれません。
SiC(炭化ケイ素)は、従来のシリコン(Si)と比べて、高電圧・高温・高周波という過酷な条件下でも安定して動作できる半導体素材です。
最も身近な活用例がEV(電気自動車)です。
EVのモーターを制御する「インバータ」にSiCを使うと、電力損失が大幅に削減され、航続距離が伸び、充電時間が短縮されます。
トヨタ・ホンダ・Tesla・BMWなど、世界の主要EV・PHEVモデルへの採用が急拡大しており、SiCパワー半導体の需要は今後10年間で数倍規模に成長することが確実視されています。
富士電機はこの需要拡大を見越し、2019〜2023年度に当初計画1,200億円の設備投資を1,900億円へと大幅増額しており、津軽工場はその中核拠点として位置づけられています。
東北の地から、世界のEV化を支える半導体が生まれているのです。
【岩手県】フラッシュメモリの巨大拠点「キオクシア北上工場」
キオクシア株式会社 北上工場
企業名:キオクシア株式会社
所在地:岩手県北上市村崎野
電話番号:0197-72-1111
公式サイト:https://www.kioxia.com
製造品目:3D NANDフラッシュメモリ(K1棟・K2棟)
キオクシアは、東芝から2019年に分離独立したフラッシュメモリ専業メーカーです。
売上高ベースで国内トップの半導体製造企業であり、スマートフォン・SSD・データセンターに不可欠なNANDフラッシュメモリの世界大手として、韓国Samsung、米Western Digitalと激しいシェア争いを繰り広げています。
北上工場は、三重県四日市に次ぐキオクシア第2の主力拠点です。
K1棟(第1製造棟)に続き、K2棟(第2製造棟)の建設に
約1兆円が投じられており、完成後は北上工場単体の
生産能力が飛躍的に拡大します。
なぜ岩手県北上市なのかといえば、北上川水系の豊富な水資源と、内陸部の地盤安定性、そして東北自動車道沿いという物流の便が主な理由として挙げられます。
フラッシュメモリは現代のデジタル社会の「記憶」を担う部品です。
皆さんのスマートフォンに保存された写真・動画・アプリ、企業のサーバーに蓄積されたビッグデータ、その多くが、このような工場で作られたメモリチップの上に存在しています。
【山形県】精密機器の心臓部「セイコーエプソン酒田事業所」
セイコーエプソン株式会社 酒田事業所
企業名:セイコーエプソン株式会社
所在地:山形県酒田市新吹浦
電話番号:0234-25-2800
公式サイト:https://www.epson.jp
製造品目:液晶ドライバーIC・マイコン(MCU)・8インチライン月産3.4万枚規模
山形県は、全国でも有数の半導体・電子部品製造集積地です。
総務省統計局の経済構造実態調査(2023年版)では、従業員数ベースの電子部品・デバイス製造業において山形県が全国上位に位置しており、その存在感は首都圏を上回ります。
セイコーエプソンの酒田事業所では、腕時計・プリンター・プロジェクター・産業機器向けの液晶ドライバーICやマイコンを中心に製造しています。
「エプソンの製品は時計から始まった」という歴史的背景を持ち、精密機械製造の思想が半導体製造にも根付いているのが同社の強みです。
小型・省電力・高信頼性という特性で知られるエプソン製マイコンは、時計・ヘルスケア機器・工業用途で世界的な評価を確立しています。
【福島県】アナログ半導体の実力者「日清紡マイクロデバイス郡山工場」
日清紡マイクロデバイス株式会社 郡山工場
企業名:日清紡マイクロデバイス株式会社
所在地:福島県郡山市待池台
電話番号:024-951-3111
公式サイト:https://www.nisshinbo-microdevices.co.jp
製造品目:アナログIC・混載信号IC(民生・産業・車載向け)
旧新日本無線株式会社として長年の歴史を持つ日清紡マイクロデバイスは、アナログ・混載信号半導体に特化した専業メーカーです。
アナログ半導体は「デジタル全盛時代」においても需要が衰えない根強い市場を持ちます。
センサが検出した温度・圧力・音・光などのアナログ信号をデジタル信号に変換する「橋渡し役」として、IoT・スマートホーム・自動車・医療機器のあらゆる場所に組み込まれているからです。
郡山工場は、東北地方のアナログ半導体製造を支える重要拠点として機能しています。
【茨城県】世界の自動車を動かす「ルネサスエレクトロニクス那珂工場」
ルネサスエレクトロニクス株式会社 那珂工場
企業名:ルネサスエレクトロニクス株式会社
所在地:茨城県ひたちなか市大字市毛882番地
電話番号:029-279-1111(本社代表)
公式サイト:https://www.renesas.com/jp
製造品目:車載・産業用マイコン・SoC(40nm以降のロジック半導体)
ルネサスエレクトロニクスは、日立製作所・三菱電機・NECの各半導体事業が統合して誕生した
日本最大の半導体専業メーカーです。
マイコン(マイクロコントローラー)の分野では、世界市場シェアでトップクラスに位置しており、特に車載マイコン分野では圧倒的な存在感を持ちます。
「世界を走る自動車の約3台に1台に、
ルネサスの半導体が搭載されている」とも言われる企業です。
那珂工場は同社の主力ロジック半導体を製造する中核的な製造拠点で、茨城県内の電子部品・EMS産業との連携も深く、地域の半導体サプライチェーンを支える要(かなめ)となっています。
(参考:ルネサスエレクトロニクス公式サイト
https://www.renesas.com/jp)
【群馬県】車載パワーデバイスを支える「ルネサス高崎工場」
ルネサスエレクトロニクス株式会社 高崎工場
企業名:ルネサスエレクトロニクス株式会社
所在地:群馬県高崎市宮元町182
電話番号:027-321-1111
公式サイト:https://www.renesas.com/jp
製造品目:SiCパワー半導体・アナログ半導体(車載・産業向け)
高崎工場は、ルネサスにおけるパワー半導体・アナログ半導体製造の主要拠点として機能しています。
EV化の加速に伴い、車載用SiCパワー半導体の需要が急増しており、高崎工場の戦略的重要性は
年々高まっています。
那珂工場(ロジック)と高崎工場(パワー・アナログ)の二つの主力工場が、ルネサスの製造基盤を支えています。
【神奈川県】DRAMの未来を研究する「マイクロンメモリジャパン相模原」
マイクロンメモリジャパン合同会社 相模原技術センター
企業名:マイクロンメモリジャパン合同会社
所在地:神奈川県相模原市中央区小山1丁目
電話番号:042-750-1800
公式サイト:https://www.micron.com/ja-jp
製造品目:次世代DRAMの研究開発(製造は広島工場が担当)
米Micron Technology(マイクロン・テクノロジー)は、Samsung、SKハイニックスと並ぶ世界3大DRAMメーカーの一つです。
相模原技術センターはMicron日本法人のR&D拠点として機能し、次世代メモリ技術の研究開発を担っています。
製造の主力は後述する広島工場が担いますが、神奈川のR&D拠点で生まれた技術が世界のデータセンター・AIサーバーに実装されるDRAMに結実しています。
関東圏は製造よりもR&D・本社機能・セールスエンジニアリングが集中するエリアという特性があり、マイクロンの相模原がその典型例といえます。
【山梨県①】閉鎖から10年、奇跡の復活「ルネサス甲府工場」
ルネサスエレクトロニクス株式会社 甲府工場
企業名:ルネサスエレクトロニクス株式会社
所在地:山梨県甲斐市西八幡
電話番号:055-276-1111
公式サイト:https://www.renesas.com/jp
製造品目:SiパワーMOSFET(300mmウエハ対応、2024年再稼働)
甲府工場の歴史は、日本の半導体産業の縮図そのものです。
旧日立製作所の半導体工場として稼働し、6インチ・8インチラインを持っていたこの工場は、2014年に経営判断によって閉鎖されました。
ところが2022年、ルネサスはここに約900億円を投じて12インチ(300mm)ウエハ対応のSiパワーMOSFET生産ラインとして再稼働させることを決断しました。
一度閉鎖した工場を大規模投資で甦らせるというのは、日本の製造業においても極めて稀な事例です。
この意思決定の背景には、EV・脱炭素化によってパワー半導体の需要が急増する確信があります。
「市場の変化が、眠っていた工場を目覚めさせた」
製造業の現場に関わってきた者として、このような事例に出会うたびに、産業の底力を感じます。
【山梨県②】Si系パワー半導体の主力「富士電機山梨工場」
富士電機株式会社 山梨工場
企業名:富士電機株式会社
所在地:山梨県南アルプス市徳行
電話番号:055-283-5555
公式サイト:https://www.fujielectric.co.jp
製造品目:Si系パワー半導体(8インチウエハ対応、主力量産工場)
山梨工場は、富士電機のパワー半導体製造における主力量産工場として位置づけられています。
8インチ(200mm)ウエハラインを持ち、IGBT・パワーMOSFETを大量生産します。
エレベーター・エスカレーター・産業用モーター・太陽光発電システムのパワコン(パワーコンディショナー)——これらすべてに、このような工場から生まれたパワー半導体が使われています。
「縁の下の力持ち」という言葉が、これほど似合う工場はないでしょう。
山梨県は甲府盆地を中心とした内陸型の産業集積地で、半導体・電子部品関連企業が多数立地しており、基板実装を含むサプライチェーン全体が県内で完結できる環境が整っています。
【長野県】パワー半導体のマザー工場「富士電機松本工場」
富士電機株式会社 松本工場
企業名:富士電機株式会社
所在地:長野県松本市筑摩
電話番号:0263-25-5111
公式サイト:https://www.fujielectric.co.jp
製造品目:パワー半導体(IGBT・パワーMOSFET)、マザー工場として量産ラインの技術開発も担当
長野県は、総務省統計局の経済構造実態調査(2023年版)において電子部品・デバイス・電子回路製造業の従業員数で全国1位を誇る、知る人ぞ知る「半導体大国」です。
松本市・上田市・伊那市・飯田市など、
県内各地に電子部品・半導体関連工場が点在しており、
特に精密機器・計測器・医療機器向けの
高信頼性製造に強みを持つ企業が集積しています。
富士電機の松本工場は、パワー半導体のマザー工場として、新プロセスや新製品の量産立ち上げ技術を開発し、山梨工場・津軽工場などへ横展開する役割を担っています。
マザー工場というポジションは、単に規模が大きいだけでなく、「製造ノウハウの源泉」として極めて高い技術的価値を持ちます。
【石川県】300mmラインで復活した東芝系工場「加賀東芝エレクトロニクス」
加賀東芝エレクトロニクス株式会社 能美工場
企業名:加賀東芝エレクトロニクス株式会社
所在地:石川県能美市緑が丘
電話番号:0761-51-3111
公式サイト:https://www.toshiba-aj.co.jp
製造品目:IGBT・SiCパワー半導体(300mm/12インチライン、2024年第1期完了)
東芝デバイス&ストレージの製造子会社として、
加賀東芝エレクトロニクスは石川県能美市で
パワー半導体の製造を担っています。
300mm(12インチ)対応の大口径ウエハラインを新設し、2024年に第1期工事が完了しました。
ウエハの口径が大きいほど、1枚のウエハから取れる半導体チップの数が増え、製造コストが大幅に削減されます。
12インチへの移行は、コスト競争力の大幅な向上を意味します。
2024年1月の能登半島地震は石川県全体に大きな打撃を与えましたが、能美市の工場エリアは被害が比較的軽微で、復旧・継続稼働しています。
地域経済の復興という観点でも、この工場の稼働継続が持つ意味は非常に大きいといえます。
【静岡県】アナログ半導体の世界的大企業「TIジャパン富士工場」
テキサス・インスツルメンツ ジャパン合同会社 富士工場
企業名:テキサス・インスツルメンツ ジャパン合同会社
所在地:静岡県富士市大淵
電話番号:0120-981-672(TIジャパン問合せ)
公式サイト:https://www.ti.com/jp
製造品目:アナログ半導体・組み込みプロセッサ(民生・産業・車載向け)
Texas Instruments(TI)は、アナログ半導体の世界最大手メーカーです。
「アナログ半導体」とは、温度・音・電流・光といったリアル世界の連続的な物理量を処理するICのことで、デジタル半導体と異なり、設計の奥深さと製造の精度が品質を大きく左右します。
TIのアナログ半導体は、その高精度・高信頼性から、工場の制御装置・自動車のECU(電子制御ユニット)・医療診断機器・スマートメーターなど、「正確さが命」の用途に広く採用されています。
富士市という立地は、東海道沿線の交通インフラと豊富な水資源(富士山麓の湧水)が半導体製造に適した環境を提供しています。
(参考:Texas Instruments 日本公式サイト
https://www.ti.com/ja-jp/about-ti/company/ti-in-japan.html)
【京都府・滋賀県】SiCで世界を制する「ローム本社工場・滋賀工場」
ローム株式会社 京都本社工場・滋賀工場
企業名:ローム株式会社
所在地:京都府京都市右京区西院溝崎町21(本社工場)
電話番号:075-311-2121
公式サイト:https://www.rohm.co.jp
製造品目:SiCパワー半導体・ショットキーバリアダイオード・MOSFET・
カスタムIC・オペアンプ(幅広い半導体製品)
ロームは、京都に本社を構える日本の誇る半導体専業メーカーです。
創業は1958年。
電子部品・半導体の設計から製造・販売まで一貫して手掛ける「垂直統合型」のビジネスモデルが強みで、品質管理と製品バリエーションの豊富さが高く評価されています。
特にSiCパワー半導体においては、世界市場で10〜15%程度のシェアを持つと言われており、Bosch・BYD・海外主要EV/パワーエレクトロニクスメーカーとの取引実績は業界内でも群を抜いています。
2022〜2026年度にSiC関連に最大1,700億円を投じる計画を公表しており、EV化・脱炭素化を背景とした需要急拡大に積極的に対応しています。
製品ラインナップは、トランジスタ・ダイオード・MOSFET・オペアンプ・カスタムICまで幅広く、「アナログ・ディスクリート半導体の総合百貨店」とも呼べる存在です。
近畿圏は、京都・滋賀・大阪を中心に電子部品・EMS企業の集積度が日本でも最高レベルであり、特に医療機器・FA機器・計測器向けの高信頼性基板実装に強い企業が多数立地しています。
【滋賀県】センサ・制御の巨人「オムロン草津工場」
オムロン株式会社 草津工場
企業名:オムロン株式会社
所在地:滋賀県草津市岡本町
電話番号:077-565-1111
公式サイト:https://www.omron.co.jp
製造品目:MEMS・光センサ・制御用半導体デバイス(FA・医療・社会インフラ向け)
オムロンは、FA(ファクトリーオートメーション)・ヘルスケア・社会システムを主軸とする日本を代表する制御機器メーカーです。
草津工場ではMEMS(微小電気機械システム)や光センサなど、精密センシングデバイスを製造しています。
MEMSとは、マイクロスケールの機械的要素と電子回路を一体化した半導体デバイスで、スマートフォンの加速度センサ、自動車のエアバッグセンサ、血圧計・体温計の圧力センサなど日常生活のいたるところで活躍しています。
「人と機械が調和する社会の実現」を企業理念に掲げるオムロンのセンサ技術は、IoT・スマートファクトリー時代の核となる技術として今後ますます重要性を増します。
【三重県①】日本最大の半導体出荷額を誇る巨人「キオクシア四日市工場」
キオクシア株式会社 四日市工場
企業名:キオクシア株式会社
所在地:三重県四日市市山之一色町1番地
電話番号:059-350-5100
公式サイト:https://www.kioxia.com
製造品目:3D NANDフラッシュメモリ(Y1〜Y7棟、Western Digitalと共同運営)
キオクシア四日市工場は、日本最大規模の半導体製造拠点です。
総務省統計局の経済構造実態調査(2023年版)において、三重県の電子部品・デバイス製造業の製造品出荷額が全国1位となっているのは、この四日市工場の存在なしには語れません。
Y1棟からY7棟(第7製造棟)まで7つの製造棟が立ち並ぶこの工場では、スマートフォン・SSD・データセンター向けの3D NANDフラッシュメモリを大量に製造しています。
2022年10月にY7棟の竣工式が行われ、四日市工場としての拡張はこのY7棟をもって完了しています。
今後のキオクシアの設備投資は、岩手県北上工場のK2棟を中心に展開されます。
スマートフォンに保存した写真は、実はこの四日市の工場で生まれたメモリチップに記録されているかもしれません。
「最も身近で、最も気づかれない工場」のひとつです。
【三重県②】国内希少なファウンドリ「UMCジャパン三重工場」
UMCジャパン株式会社 三重工場
企業名:UMCジャパン株式会社
所在地:三重県桑名市大字和泉
電話番号:0594-31-6111
公式サイト:https://www.umcj.com
製造品目:ロジック半導体(55/40/28nmプロセス、300mmウエハ対応ファウンドリ)
UMCジャパンは、TSMCに次ぐ台湾第2位の半導体ファウンドリ「UMC(聯華電子)」の日本法人です。
ファウンドリ(Foundry)とは、半導体の設計は行わず、他社から設計図(回路設計データ)を受け取って製造のみを行う「製造受託専業」の企業形態です。
日本国内で300mmウエハ対応の微細ロジックプロセスを持つファウンドリは極めて少なく、UMCジャパンはその希少な存在のひとつです。
生産計画では、2027年までに月産1万枚、2029年までに月産4万枚という拡大を目指しており、自動車・産業機器・IoT向けの28nmプロセスを国内で安定調達できる体制構築を進めています。
「国内でロジック半導体を調達したいが、TSMCやラピダス以外の選択肢を知らない」という調達担当者にとって、UMCジャパンは重要な候補先として知っておくべき企業です。
【広島県①】世界最先端DRAMの聖地「マイクロンメモリジャパン広島工場」
マイクロンメモリジャパン合同会社 広島工場
企業名:マイクロンメモリジャパン合同会社
所在地:広島県東広島市八本松飯田
電話番号:082-422-5111
公式サイト:https://www.micron.com/ja-jp
製造品目:DRAM(月産4万枚・300mm換算)、2025年以降は1γプロセス最先端DRAMへ移行
この工場の歴史は、日本の半導体産業の「敗北と再生」を象徴するエピソードを持っています。
かつてここには、日本の誇りだったDRAMメーカー「エルピーダメモリ」の工場がありました。
日立・NEC・三菱電機の各DRAMは事業統合し、エルピーダとして再出発しましたが、2012年に世界的なDRAM価格暴落の影響で経営破綻しました。
その工場を米Micron Technologyが買収し、継続稼働させたのが今の広島工場です。
皮肉なことに、日本人の手を離れた後も、この工場は日本の地でDRAMを作り続けています。
2025年以降は、世界最先端とされる「1γ(ガンマ)世代」のDRAMの量産を予定しており、AI・データセンター向HBM(広帯域幅メモリ)需要への対応も視野に入れています。
広島工場は、日本が失ったDRAM産業の「記憶」を
今なお刻み続けている場所です。
【広島県②】社会インフラを支えるパワーデバイス「三菱電機福山工場」
三菱電機株式会社 パワーデバイス製作所 福山工場
企業名:三菱電機株式会社
所在地:広島県福山市緑町1番1号
電話番号:084-942-3101
公式サイト:https://www.mitsubishielectric.co.jp
製造品目:Siパワー半導体(IGBT中心)・300mmライン構築中
この工場には、面白い誕生秘話があります。
もともとシャープが保有していた液晶パネル工場だったこの建屋を、三菱電機が2021年に取得し、パワー半導体工場へと転換したのです。
液晶工場の「巨大クリーンルーム」という既存インフラをそのまま活用できるため、新設に比べてコストと時間を大幅に削減できました。
これは「既存ファブ(工場)の転用(リパーパシング)」という手法で、半導体不足の解消を急ぐ製造業界で注目を集めたアプローチです。
8インチ(200mm)Siパワー半導体ラインを2022年から稼働させ、さらに12インチ(300mm)ラインも構築中です。
三菱電機のパワー半導体は、新幹線・エレベーター・電力インフラ・工業用FA機器など、日本の社会インフラの根幹を支えています。
【熊本県①】日本の半導体戦略の最前線「JASM(TSMC熊本工場)」
JASM株式会社(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)
企業名:JASM株式会社
所在地:熊本県菊池郡菊陽町原水
電話番号:096-299-4100
公式サイト:https://www.jasm.co.jp
製造品目:22/28nm・12/16nm FinFETロジック半導体(第1工場)、第2工場建設中
2024年12月、日本の半導体産業にとって歴史的な瞬間が訪れました。
JASM(ジャスム)の熊本第1工場が量産を開始したのです。
JASMとは、台湾のTSMC(台湾積体電路製造)が筆頭株主(過半数出資)、ソニーセミコンダクタソリューションズ(SSS)が約20%未満、デンソーが約10%超を出資して設立した合弁会社です。
投資総額は1兆円超で、日本政府がその約半額に相当する補助金を拠出するという、前例のない官民一体プロジェクトです。
22/28nm、および12/16nm FinFETという「準先端」プロセスの半導体を製造するこの工場は、日本国内で以前は量産が難しかった微細プロセス半導体の国産供給を可能にします。
現地熊本を訪れた際、地域の方々から「工場が来てから街が変わった」という声を多く聞きました。
周辺の飲食店・ホテル・住宅・道路が急速に整備され、台湾からの出向者とその家族750名が移住したことで、菊陽町は文字通り「別の街」に変貌しています。
工場一つが地域経済・社会に与える影響の大きさを、改めて実感しました。
(参考:JASM公式サイト https://www.jasm.co.jp)
【長崎県】世界シェアNo.1イメージセンサの産地「ソニーSSM長崎TEC」
ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング株式会社 長崎TEC
企業名:ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング株式会社
所在地:長崎県諫早市津久葉町
電話番号:0957-22-5111
公式サイト:https://www.sony-semicon.co.jp
製造品目:CMOSイメージセンサ(スマートフォン・車載・産業向け)
「スマートフォンのカメラが、これほど美しく撮れるようになった」
その技術の中心に、長崎で作られたセンサがあります。
ソニーのCMOSイメージセンサは、
iPhone・Samsung Galaxy・各社ハイエンドスマートフォンに採用され、
2024年時点で世界市場シェア約50%を維持している
日本の半導体産業の「最後の砦」ともいえる製品群です。
長崎TEC(テクノロジーセンター)は、ソニーセミコンダクタソリューションズ(SSS)の製造子会社として、CMOSイメージセンサの主力生産を担っています。
2021〜2023年度に9,000億円という桁外れの設備投資を実施し、製造能力の大幅な拡充を果たしました。
車載向けイメージセンサ(自動運転・ADAS用)の需要急増にも対応すべく、高解像度・低ノイズ・高ダイナミックレンジという要求水準が日々高まる市場に応え続けています。
長崎という地が、世界の「見る力」を支えているのです。
【福岡県】SiC量産の最前線「ローム・アポロ筑後工場」
ローム・アポロ株式会社 筑後工場
企業名:ローム・アポロ株式会社
所在地:福岡県筑後市大字山ノ井
電話番号:0942-52-5111
公式サイト:https://www.rohm.co.jp
製造品目:SiCパワー半導体(6→8インチ口径拡大中)
ローム本社の製造子会社として、筑後工場は2022年からSiC専用新棟の稼働を開始しました。
当初は6インチ(150mm)ウエハラインで稼働し、需要拡大に合わせて8インチ(200mm)ラインへの口径拡大を進めています。
ウエハの口径を150mmから200mmに拡大すると、1枚のウエハから取れるチップ数が約1.8倍に増加し、製造コストが大幅に下がります。
ロームのSiCは特に欧州・北米のEVメーカーから高い信頼を得ており、筑後工場の増強はグローバルな脱炭素化の要請に直接応えるものです。
福岡県は九州最大の産業集積地であり、筑後市周辺には基板実装・EMS企業も多数立地しており、半導体製造を支えるサプライチェーンが県内で形成されています。
【宮崎県①】SiCウエハから一貫製造「ロームセミコンダクター宮崎 国富工場」
ロームセミコンダクター宮崎株式会社 国富工場
企業名:ロームセミコンダクター宮崎株式会社
所在地:宮崎県児湯郡国富町
電話番号:0985-75-2111
公式サイト:https://www.rohm.co.jp
製造品目:SiCパワー半導体・SiCウエハ(一貫製造)
旧ソーラーフロンティア社が保有していた太陽光パネル工場の建屋を取得し、SiCパワー半導体工場として転用した国富工場は、「SiCウエハの製造からデバイス製造まで一貫して行う」という点で、業界内でも希少な存在です。
通常、SiCサプライチェーンは以下のように分断されています。
SiCウエハメーカー → SiCエピタキシャルウェハメーカー →
デバイスメーカー → パッケージングメーカー
この複数の工程を、国富工場では一つの拠点内で統合することで、品質管理の一元化とサプライチェーンリスクの低減を実現しています。
東芝デバイス&ストレージとの共同申請により経済産業省の助成金も決定しており、宮崎という地方から世界のEV産業を支える先端製品が生まれることになります。
【宮崎県②】高音質の源泉「旭化成マイクロシステム延岡工場」
旭化成マイクロシステム株式会社 延岡工場
企業名:旭化成マイクロシステム株式会社(AKM)
所在地:宮崎県延岡市旭町
電話番号:0982-35-1111
公式サイト:https://www.akm.com/jp
製造品目:高精度アナログIC・DAC・ADC
(高級オーディオ・スマートフォン・産業計測向け)
「AKM」のブランド名で世界中のオーディオ愛好家に知られる旭化成マイクロシステムは、D/Aコンバーター(DAC)・A/Dコンバーター(ADC)の高精度製品で世界的に高い評価を受けているメーカーです。
ソニーのウォークマン、ヤマハのオーディオアンプ、海外の超高級オーディオブランドにも採用されており、「AKMのDACを使っているかどうか」がハイファイオーディオ機器の品質の指標になるほどその名は業界に浸透しています。
延岡という宮崎県の地方都市から、世界最高峰の音質体験を支えるチップが生まれている——
これは、日本のものづくりが持つ底力を示す象徴的なストーリーだと感じています。
(参考:旭化成マイクロシステム公式サイト
https://www.akm.com/jp/products/)
【熊本県②・大分県】電力制御と大規模アナログ半導体製造の拠点
三菱電機株式会社 パワーデバイス製作所 熊本工場(新設)
企業名:三菱電機株式会社
所在地:熊本県菊池市七城町
電話番号:0968-25-1111
公式サイト:https://www.mitsubishielectric.co.jp
製造品目:SiCパワー半導体(8インチ/200mm対応、2026年4月稼働予定)
三菱電機は熊本県菊池市に、8インチ(200mm)SiCウエハ対応の新工場を建設中です。
6インチから一気に8インチへの移行は、大口径化によるコスト削減と生産能力拡大を同時に実現しようという先進的な判断です。
既存の熊本工場(6インチ)の能力増強と合わせて約1,000億円を投じており、2026年4月の稼働を目指しています。
JASMとともに熊本県が「九州の半導体メッカ」として再び全国に名を轟かせる背景のひとつです。
テキサス・インスツルメンツ ジャパン合同会社 大分工場(DMIC)
企業名:テキサス・インスツルメンツ ジャパン合同会社
所在地:大分県中津市大字是則
電話番号:0979-22-5111
公式サイト:https://www.ti.com/jp
製造品目:アナログ半導体(産業・車載・通信向けIC)
大分工場は、TIの日本における主力製造拠点で、長年にわたってアナログ半導体を大量生産しています。
「DMIC(Denshi Monozukuri Innovation Center)」とも称され、日本の製造技術とTIのグローバルな製品ラインナップを組み合わせた生産体制を維持しています。
大分県中津市は工業団地の整備が進んでおり、電子部品・半導体関連企業が集積するエリアとして知られています。
日本全国の半導体工場・産業マップから見えてくるもの
ここまで北海道から九州まで、日本全国の主要半導体工場をご紹介してきました。
改めて全体を俯瞰すると、いくつかの重要な傾向が浮かび上がります。
九州・熊本への集中投資が際立っている
JASM(TSMC熊本)・三菱電機熊本工場・ソニー長崎TEC・ローム筑後・ローム国富(宮崎)・TI大分
九州は現在、日本で最も活発な半導体投資エリアとなっています。
1980〜90年代に「シリコンアイランド」と呼ばれた九州の半導体産業が、数十年の時を経て再び日本の中心となりつつあります。
パワー半導体への集中投資が続いている
ローム・富士電機・三菱電機・東芝・ルネサスがこぞってSiCパワー半導体への投資を拡大しています。
その背景には、世界的なEV化・脱炭素化という巨大な需要の波があります。
パワー半導体はまさに「脱炭素社会の半導体」であり、日本メーカーが世界で存在感を発揮できる数少ない分野です。
外資系企業の日本製造拠点も重要
マイクロン(広島)・TI(静岡・大分)・UMCジャパン(三重)
外資系企業の日本工場も、日本の半導体製造能力の重要な一翼を担っています。
これらは単なる「外国企業の工場」ではなく、日本のエンジニアリング力と日本の産業インフラが評価されて立地しているものです。
日本の製造技術への信頼が、今もなお世界に存在することを示しています。
半導体工場を知ることは、日本の未来を知ること
この記事を通じて、日本全国の主要半導体工場をご紹介してきました。
北の大地・北海道で2nm半導体に挑むラピダスから、南の熊本でTSMCが世界基準の製造ラインを動かすJASMまで。
一見バラバラに見える工場の点が、つながると「日本の半導体産業の復興という大きな地図」が浮かび上がります。
半導体は「産業のコメ」と言われます。
農業にとってのコメがそうであるように、半導体は現代の産業すべての基盤です。
「国内製造能力を高めること」は、食料安全保障と同じ意味で、「産業・経済・安全保障のすべてにわたる自給体制の確立」を意味します。
日本が再びこの分野で世界に存在感を取り戻す日は、この記事でご紹介した工場群が着実に稼働し続けることで確実に近づいています。
この記事が、皆さんの半導体産業への理解を深め、就職・転職・調達・投資・学習の参考情報として活用していただければ幸いです。
参考情報・公式リンク
経済産業省「半導体・デジタル産業戦略」:
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/semicon_digital.html
内閣府「令和6年版 経済財政白書」:
https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je24/index.html
総務省統計局「経済構造実態調査(2023年版)」:
https://www.stat.go.jp/data/kkj/index.html
SEMI Japan(半導体製造装置・材料の業界団体):
https://www.semi.org/ja
一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA):
https://www.jeita.or.jp/
世界半導体市場統計(WSTS):
https://www.wsts.org/


