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【2026年4月最新】ホルムズ海峡封鎖が基板実装の材料・副資材に与える影響を徹底調査|ヒタレックス入手困難の真因とナフサ依存全マップ

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【本記事の結論】
ホルムズ海峡封鎖により、レゾナック「ヒタレックス」をはじめとする基板実装用粘着フィルム、フラックス、ソルダーレジスト、エポキシ接着剤、FR-4基板まで広範囲に供給制約が発生中です。原因は単一品目の問題ではなく、日本のエチレン原料の95%を占めるナフサが中東依存74%という構造的脆弱性にあります。本記事では、ナフサクラッキング由来の派生製品を5系統に整理し、基板実装現場で影響を受ける13カテゴリの消耗品リスク評価、メーカー別値上げ状況、即時実施すべき対策を網羅解説します。

目次

1. ホルムズ海峡封鎖の現状(2026年4月27日時点)

ホルムズ海峡は世界の海上原油輸送量の約20%、LNG輸送量の約20%が通過する世界最重要の海上輸送路です。

2026年2月末以降の米国・イスラエル対イラン軍事衝突を契機に、海峡の通航は事実上停止状態に陥っています。

4月22日:イラン革命防衛隊によるコンテナ船拿捕

2026年4月22日、イラン革命防衛隊(IRGC)はホルムズ海峡通航中のパナマ船籍コンテナ船2隻(MSC Francesca、Epaminondas)を拿捕、3隻目に対しては発砲しました。

MarineTrafficの船舶追跡データによれば、22日以降の12時間でホルムズ海峡を通過した商船はギリシャ籍バルク船1隻のみ

平時の1日約130隻と比較すると、商業運航はほぼ停止しています。

4月12日:トランプ大統領による「逆封鎖」宣言

米CENTCOM(中央軍)は、ペルシャ湾とオマーン湾のイラン港湾に出入りする全船舶を対象に逆封鎖を実施中。

戦争危険保険料の急騰、機雷敷設リスク、船員安全への懸念から、多くの船社が自主的に通峡を回避しています。

停戦交渉は無期限延長で先行き不透明です。

欧州・アジア間航路は喜望峰経由へ

欧州・中東・アジアを結ぶ海運ルートは喜望峰経由となり、航海日数が10〜14日延長、燃料費・人件費・戦争危険保険料が運賃に上乗せされています。

中東を経由しない物流すら、保険料・運賃・サーチャージが上昇中です。

2. なぜ基板実装の材料が止まるのか|ナフサ依存構造の解剖

結論から言えば、日本のエチレン原料95%がナフサ依存、そのナフサ輸入の74%が中東由来という二重の脆弱性が原因です。

2-1. 日本のナフサ調達構造

ナフサは原油を蒸留して得られる粗製ガソリンで、石油化学のすべての出発点です。

世界のエチレン原料は、米国がシェール由来エタン主体、欧州はLPGも一定割合使用するのに対し、日本だけがナフサほぼ一本足の構造

さらにそのナフサの74%を中東に依存しているため、ホルムズ封鎖の影響をほぼ100%受けます。

2-2. エチレン設備の現状(2026年4月27日時点)

国内エチレン設備12基中、6基が減産または定修延長中:

  • 三菱ケミカル鹿島(茨城県神栖市、年産48.5万トン):3月6日から減産開始、5月から2か月間の定期修理を控える
  • クラサスケミカル大分(旧レゾナック、年産61.8万トン):2月から定修中、4月下旬以降の再稼働見込み
  • 東ソー四日市(年産49.3万トン):3月17日に「再稼働の無期限延期」を発表、その後4月末再稼働を目指すと修正
  • 京葉エチレン(住友化学・丸善石油化学合弁、千葉、年産69万トン):1月下旬からの定修後、再稼働を4月初旬に延期、再稼働後も低負荷運転見込み
  • 出光興産(徳山・千葉):3月6日に「封鎖長期化なら停止可能性あり」と取引先に通知

2-3. なぜ短期で解決しないのか

石油化学プラントは一度停止すると再稼働に数週間を要し、分解炉の再立ち上げには時間がかかります。

封鎖が短期解除されても物流資材・電子材料への影響は数か月にわたって残るのはこのためです。

さらに、エチレンからPEやPPが製品化され物流現場に届くまでには1〜2か月のリードタイムがあるため、3月の減産影響は4〜5月以降に本格化します。

3. ナフサ→基板実装製品への派生フロー全マップ

ナフサを約800〜850℃で熱分解(クラッキング)すると、5系統の基礎化学品が得られます。

基板実装で使う材料・副資材のほぼすべてが、この5系統のいずれかから派生しています。

3-1. 5系統の基礎化学品

基礎化学品主な誘導体基板実装での代表用途
エチレン(C2)PE、EVA、PVC、PET、PS、ABS粘着フィルム、ESD袋、電線、FPC基材、ICトレー
プロピレン(C3)PP、アクリル酸、PGMEA、IPA、PUアクリル粘着剤、ソルダーレジスト溶剤、洗浄剤、PUコート
ブタジエン(C4)SBR、NBR、SBS、ナイロン66合成ゴム粘着剤、コネクタハウジング
BTX(ベンゼン)フェノール、BPA、エポキシ樹脂、ナイロン6/66、PC、PUFR-4基板、ソルダーレジスト、銀ペースト、封止材、コネクタ
BTX(キシレン)PX→PTA→PET、PBT、PEN、無水フタル酸FPC基材、コネクタハウジング、PVC可塑剤

3-2. 詳細派生マップ

下表は基板実装で使う全カテゴリのナフサ派生フローです。★印は今回のホルムズ危機で特に影響が大きい品目を示します。

基礎化学品中間体基板実装関連の最終製品
エチレン
(C2)
PE(LDPE/LLDPE/HDPE)★粘着フィルム(ヒタレックス)、表面保護フィルム、ESD袋、防湿袋、ストレッチフィルム、電線絶縁
EVA / EAA / EVOHホットメルト接着剤、太陽電池封止材、バリアフィルム
VCM → PVC電線被覆、絶縁テープ、絶縁チューブ
VAM → PVAc / PVA水性接着剤、剥離フィルム
EO → EG → PET / PBT★PETフィルム(FPC基材、ラベル、カバーテープ)、PBT(コネクタ)
EO → PG誘導体界面活性剤、洗浄剤
スチレン★PS(キャリアテープ、保護トレー)、ABS(筐体、ICトレー)、SBR、SBS粘着剤
プロピレン
(C3)
PPICトレー、コンデンサフィルム、薬液ボトル、シリンジ
アクリル酸★アクリル系粘着剤(ダイシング/BG/保護テープ全般)、PMMA、SAP
アクリロニトリルABS、NBR(耐油パッキン)、炭素繊維前駆体
PO → ポリオール → PUポリウレタン接着剤、PUコンフォーマルコート、PU封止材
PO → PGMEA★ソルダーレジスト溶剤、フォトレジスト溶剤
クメン → フェノール → BPA / IPA / アセトン / MEK★エポキシ樹脂、ポリカーボネート、はんだ後洗浄、フラックス希釈、汎用工程洗浄
ブタジエン
(C4)
SBR / BR / NBR★粘着剤(ヒタレックスD系の合成ゴム成分)、耐油パッキン
SBS / SISホットメルト粘着剤、エラストマー
アジポニトリル → ナイロン66★コネクタハウジング、結束バンド
BTX
ベンゼン
BPA、フェノール樹脂★FR-4、CEM-1(紙フェノール基板)、エポキシ系全般
シクロヘキサン → カプロラクタムナイロン6(コネクタ、結束バンド)
アニリン → MDI → PUポリウレタン、コンフォーマルコート
アルキルベンゼン界面活性剤、洗浄剤
BTX
トルエン
TDI → PU軟質ポリウレタン、塗料、接着剤
トルエン(直接溶剤)★塗料溶剤、洗浄溶剤、フラックス溶剤
BTX
キシレン
PX → PTA → PET / PBT / PEN★PETフィルム(FPC、絶縁、ラベル)、PBT(コネクタ)、PEN
オルト → 無水フタル酸 → DOPPVC可塑剤、不飽和ポリエステル
キシレン(直接溶剤)★塗料溶剤、シンナー成分

4. 基板実装の重要4ライン|PE系・アクリル系・エポキシ系・PET系

4-1. エチレン → PE系(ヒタレックス直系のライン)

レゾナックのヒタレックス(現Adhesive Film)GS-1010は、基材PE・粘着剤合成ゴム系という構成で、まさにこの系統の典型です。

クリーム半田の試し印刷(ダミー印刷)の位置合わせや、基板素材の保護に使用される基板実装現場の必須消耗品です。

レゾナック自身のエチレン設備(クラサスケミカル大分)が定修遅延中で、自社内の原料供給にも制約が生じていることが、ヒタレックス供給逼迫の直接原因です。

同じPE系のESD袋、防湿袋、ストレッチフィルム、表面保護フィルム、電線絶縁材も同根のリスク下にあります。

4-2. プロピレン → アクリル粘着剤・PGMEA系

テープ類粘着層の主流であるアクリル系粘着剤は、プロピレン → アクリル酸経由。

ダイシングテープ、BG(バックグラインド)テープ、表面保護テープ、ESDテープすべてに使われます。

さらに重要なのはPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)

ソルダーレジストとフォトレジストの主流溶剤で、これが滞れば基板製造そのものが止まります。

IPA(イソプロパノール)もはんだ後洗浄、ステンシル洗浄、フラックス希釈の標準溶剤で、すでに値上げが進行しています。

4-3. BTX → BPA → エポキシ樹脂系(FR-4の根幹)

基板実装で最も重要なライン。ベンゼン → クメン → フェノール → ビスフェノールA(BPA)→ エポキシ樹脂は、以下すべての起点です:

  • FR-4基板(CCL:銅張積層板)、CEM-1、CEM-3、ハロゲンフリー基板、プリプレグ
  • ソルダーレジスト
  • UV硬化樹脂
  • 銀ペースト(導電性接着剤)
  • エポキシ接着剤、ICアンダーフィル
  • IC封止材(モールドコンパウンド)
  • エポキシ系コンフォーマルコート

BPAは派生鎖が長く、上流影響が川下に届くまでに時間差があります。

4〜5月時点で値上げ程度の品目も、6〜7月以降に出荷調整・受注停止に発展するリスクを織り込む必要があります。

4-4. キシレン → PET / PBT系

パラキシレン → PTA + EG → PET、PBT、PEN。PETフィルムはFPC(フレキシブル基板)基材、絶縁シート、ラベル、テープリールカバーに広く使用。

PBTはコネクタハウジング、リレーソケット、機構部品に多用されます。

5. 影響を受ける消耗品・副資材リスク評価マトリクス(13カテゴリ)

基板実装ラインで使用する消耗品・副資材・材料を、原料系統別にリスク評価した一覧です。

調達担当者は本表の「リスク」欄が「高」のカテゴリから優先的に在庫確認・代替評価を進めることを推奨します。

カテゴリ代表品目・ブランド例原料系統リスク
ステンシル印刷副資材ヒタレックス(レゾナック)GS-1010等、ダミー印刷フィルム、表面保護フィルムPE / PP
半導体プロセステープダイシングテープ(リンテックAdwill、住友ベークライトSumilite FSL、レゾナック、マクセル)、BGテープ(三井化学イクロステープ)PO+アクリル粘着
はんだ実装副材リフロー耐熱マスキングテープ、ステンシル清掃ロール紙PI / PE不織布中〜高
フラックス・洗浄剤ロジン系フラックス、IPA、エチルアルコール、フラックス希釈シンナーC2/C3系溶剤
ソルダーレジスト・絶縁材感光性ソルダーレジスト、PGMEA溶剤エポキシ+PGMEA
接着剤・封止材エポキシ接着剤、銀ペースト、ICアンダーフィル、UV硬化樹脂、コンフォーマルコート(PU/アクリル/エポキシ)BPA→エポキシ系
搬送・包装資材ICトレー(PP)、キャリアテープ(PS/PC)、カバーテープ、防湿袋(MBB)、ESDシールドバッグPP/PS/PE/PET
コネクタ・機構部品コネクタハウジング(ナイロン66/PBT/LCP)、リレー筐体、結束バンドBTX→PA/PBT
電線・絶縁チューブPVC電線被覆、熱収縮チューブ(PE系)、PEワイヤラベルVCM/PE
FR-4プリント基板(CCL)FR-4、CEM-1、CEM-3、ハロゲンフリー基板、プリプレグBPA→エポキシ
フレキシブル基板(FPC)PETフィルム基材FPC、ポリイミド基材FPC(PI側は影響中)PET(PX→PTA)中〜高
放熱・断熱材放熱グリス(シリコーン系→影響低)、放熱シート(アクリル/エポキシ系→影響高)、絶縁シートアクリル/エポキシ中〜高
クリーンルーム消耗品PEグローブ、指サック、無塵ワイパー、ESDマット(PVC/ゴム)、静電気対策シートPE/PVC/合成ゴム

6. メーカー別 値上げ・出荷調整 公表状況一覧

2026年4月時点で公表されている主要な値上げ・出荷調整・受注停止の動き。

電子材料系は塗料・建材分野からタイムラグを伴って波及するため、4月下旬〜5月以降に同様の動きが連鎖する可能性が高いと予想されます。

メーカー対象製品内容時期
日本ペイントシンナー製品全般75%値上げ4/25発表
関西ペイントシンナー製品50%以上値上げ・出荷制限4/13出荷分〜
サンスター技研シーリング材・接着剤30%以上値上げ
シャープ化学工業溶剤系製品40%以上値上げ
TOTOユニットバス新規受注停止→4/20再開4/13〜
LIXIL住宅設備樹脂供給制限による影響を公表
住友化学(シンガポール)エチレン・アクリル樹脂原料フォースマジュール宣言3月
三菱ケミカルエチレン(鹿島)減産開始(年産48.5万t)3/6〜
出光興産エチレン(千葉・徳山)停止可能性を取引先に通知3/6
クラサスケミカル大分(旧レゾナック)エチレン(年産61.8万t)定修中、再稼働遅延2月〜
パナソニック インダストリー銅張積層板・プリプレグ2025年1月価格改定後、再改定の可能性監視中
住友ベークライト食品包装用フィルム・シート価格改定(電子材料への波及監視)4/6発表

7. ヒタレックスの代替候補と注意点

7-1. 代替メーカー候補

レゾナックのヒタレックスから乗り換える場合、PE基材粘着フィルムを取り扱うのは以下のメーカーです:

  • 日東電工:SPVシリーズ(自動車塗膜用、内装用、金属板用)
  • 住友スリーエム:表面保護フィルム各種
  • サンエー化研:PEフィルム表面保護材
  • 菱江化学:金属板用表面保護フィルム
  • スミロン:自動車塗膜用・一般用表面保護フィルム
  • トラスコ中山:OEM品取扱い

7-2. 切替時の3つの注意点

注意点1:根本的な代替にはならない
全社が同じナフサ→エチレン→PEのラインに乗っているため、構造的リスクは共有しています。並行発注で在庫日数を分散させる目的での切り替えに留まる点を理解しておく必要があります。

注意点2:本番投入前の評価が必須
PE基材であってもグレード(密度、フィルム厚、表面処理)が異なり、ステンシル印刷時のフィルムへの濡れ性、剥離力、静電気特性が変わります。少量試用評価なしの本番投入は不良発生リスクが高いため避けるべきです。

注意点3:バイオマス由来PEは即時代替にはなりにくい
レゾナックはバイオマス由来ポリエチレンシートを提案していますが、増産には時間がかかり即座の代替供給源にはなりません。中長期の選択肢として評価する価値はあります。

8. 今すぐ実施すべき対策|即時/短期/中期の3段階

8-1. 即時実施(〜1週間)

  1. 全消耗品・副資材の品番別現行在庫日数を棚卸する。Excelなどで「品番/メーカー/月使用量/現在庫/日数換算/供給元」を一覧化。
  2. メインサプライヤーへ書面で確認:①現行受注分の納期確定状況、②次回値上げ通知の有無、③今後3か月の供給可能数量。
  3. PE基材粘着フィルム(ヒタレックスGSシリーズ等)は並行サプライヤー(日東電工、サンエー化研、菱江化学等)への見積依頼を即開始。
  4. ソルダーレジスト、コンフォーマルコート、エポキシ接着剤、銀ペースト等のエポキシ系材料は、品番ごとに代替メーカーの評価データを確認。
  5. フラックス・洗浄剤(IPA、エチルアルコール、シンナー類)の在庫日数を、危険物倉庫の保管上限と照らして見直し。

8-2. 短期対応(〜1か月)

  1. 代替メーカー品の少量サンプル評価を開始(ステンシル印刷の濡れ性、剥離力、静電気特性、はんだ付け性)。
  2. 安全在庫の積み増し:喜望峰ルート前提でリードタイム+12〜16日として発注点を再計算。
  3. 販売契約のフォースマジュール条項、価格スライド条項、デマレージ条項の発動条件を法務部門と確認。
  4. 戦争危険保険サーチャージの転嫁交渉を開始。
  5. FR-4基板(CCL)の調達について、複数メーカー(パナソニック インダストリー、レゾナック、AGC、台湾系・中国系)の供給状況を確認。

8-3. 中期対応(〜3か月)

  1. マルチソーシング体制の構築:主要副資材について最低2社以上の認定サプライヤー化。
  2. ナフサ非依存品の評価:バイオマス由来PE、リサイクル由来樹脂、無溶剤系材料への部分置換可能性。
  3. BCP(事業継続計画)の見直し:ホルムズ封鎖が長期化した場合の生産継続判断基準、顧客への遅延通知プロトコルを整備。
  4. 顧客への価格改定交渉:自社販売契約への燃料費・運賃・原料費スライド条項の挿入。

9. よくある質問(FAQ)

Q1. ホルムズ海峡封鎖はなぜ基板実装に影響するのですか?

日本はエチレン原料の約95%をナフサに依存し、ナフサ輸入の約74%が中東由来です。

ホルムズ海峡封鎖でナフサ供給が逼迫すると、エチレン・プロピレン・ブタジエン・BTXの全5系統の石油化学製品が同時に減産となります。

基板実装で使う粘着フィルム、フラックス、ソルダーレジスト、エポキシ接着剤、FR-4基板、コネクタ、包装資材のほぼすべてがこの石油化学派生品のため、面的な供給制約が発生します。

Q2. ヒタレックスが入手困難な根本原因は何ですか?

ヒタレックス(レゾナック旧日立化成、現Adhesive Film)は基材がポリエチレン(PE)、粘着剤が合成ゴム系またはアクリル系で構成されています。

基材PEはナフサ→エチレン→PEの直系派生品であり、製造元レゾナックのエチレン設備(クラサスケミカル大分、年産61.8万トン)も定修中で再稼働遅延のため、自社内の原料供給にも制約が出ています。

Q3. ヒタレックスの代替品はありますか?

PE基材粘着フィルムは住友スリーエム、日東電工(SPVシリーズ)、サンエー化研、菱江化学、スミロンなどが供給しています。

ただし全社が同じナフサ→エチレン→PEのラインに乗っているため、根本的な代替にはなりません。

並行発注で在庫日数を分散させる目的での切り替えが現実的です。

フィルム厚や粘着力が異なるため、本番ラインへの投入前に少量試用評価が必須です。

Q4. 今すぐ取るべき対策は何ですか?

①全消耗品・副資材の品番別在庫日数を1週間以内に棚卸する。

②メインサプライヤーへ書面で現行受注の納期確定状況・次回値上げ通知の有無・3か月供給可能数量を確認する。

③PE基材粘着フィルム、エポキシ系材料、フラックス・洗浄剤について並行サプライヤー2社以上から見積を取得する。

④販売契約のフォースマジュール条項と価格スライド条項を法務確認する。

⑤戦争危険保険サーチャージの転嫁交渉を開始する。

Q5. FR-4基板やソルダーレジストへの影響は?

FR-4基板の主原料はエポキシ樹脂で、ベンゼン→クメン→フェノール→ビスフェノールA(BPA)→エポキシ樹脂という長い派生鎖を経由します。

ソルダーレジスト、銀ペースト、IC封止材、コンフォーマルコート、UV硬化樹脂もすべて同じエポキシ系統です。

BTX(ベンゼン・トルエン・キシレン)は今回のナフサ不足で同時に逼迫しており、4〜5月時点で値上げが進行、6〜7月以降は出荷調整・受注停止に発展するリスクが高いと予想されます。

Q6. ホルムズ海峡封鎖はいつ解除されますか?

2026年4月27日時点で停戦交渉は無期限延長されており、解除時期は予測困難です。

さらに重要な点として、石油化学プラントは一度停止すると再稼働に数週間を要するため、封鎖が短期で解除されても物流資材・電子材料への影響は数か月続く可能性が高いです。

最低3か月、可能性として6〜12か月の長期化シナリオを織り込んだBCP策定が推奨されます。

Q7. 中小規模の基板実装会社でも対策できますか?

中小規模ほど影響を受けやすいため、優先度の高い対策に集中してください。

まず①現行在庫の品番別棚卸しと、②メインサプライヤーへの納期確認書面送付、この2点を1週間以内に必ず実施。

続いて③消費量上位5品目について代替メーカーへ見積依頼、④顧客への遅延発生時の連絡プロトコル整備、を進めます。

マルチソーシング化やBCP整備は時間がかかるため、目先の在庫切れ防止と顧客対応を優先しましょう。

10. まとめ|面的供給危機への構造的アプローチ

ヒタレックスの供給制約は、ホルムズ危機が引き起こすサプライチェーン地殻変動の「氷山の一角」に過ぎません。

基板実装の現場で日常的に使用される消耗品・副資材のほぼすべてが、ナフサクラッキングから派生する5系統のいずれかに連なっています。

したがって対策は、「ヒタレックスの代替品探し」という個別品目対応ではなく、「ナフサ依存度の高い品目を全社レベルで棚卸し、優先度をつけて並行調達体制を組む」という構造的アプローチが必要です。

特にエポキシ樹脂系(FR-4基板、ソルダーレジスト、接着剤、封止材)は、現代エレクトロニクスの根幹であり、ベンゼン → BPAという長い派生鎖を経由するため、上流の影響が川下に届くまでに時間差があります。

4〜5月時点では値上げ程度で済んでいる品目も、6〜7月以降に出荷調整・受注停止に発展するリスクを織り込んでおくべきです。

当面は週次でホルムズ通航状況・エチレン稼働率・主要メーカー発表を監視し、適応的に対応することが現実的な選択です。

本記事は2026年4月27日時点の公開情報に基づく整理ですが、情勢は数時間単位で変化しています。

実務判断時には主要サプライヤーからの直接情報、保険会社・物流会社の最新通知を必ず併せて確認してください。

参考情報・出典

  • 三菱UFJ銀行経営企画部経済調査室「ホルムズ海峡の事実上封鎖と世界経済への影響」2026年4月3日
  • ジェトロ「中東リスクと物流(2)日本と中東の貿易とホルムズ海峡封鎖の影響」2026年4月
  • ロジスティクス・トゥデイ「製造業の受注停止急拡大、ナフサ依存の急所直撃」2026年4月13日
  • ロジスティクス・トゥデイ「エチレン設備、追加停止回避もナフサ価格は2倍」2026年4月5日
  • ロジスティクス・トゥデイ「石化プラント減産、物流資材不足が4月迫る」2026年3月9日
  • Spectee「ホルムズ海峡封鎖が日本の製造業サプライチェーンに与える影響」2026年3月
  • global-scm.com「ホルムズ海峡危機:情勢と実務リスク」2026年4月19日/4月24日更新
  • 時事ドットコム「ナフサ危機、住宅に波及」2026年4月14日
  • 日本経済新聞「ホルムズ海峡封鎖、生活への影響は?値上げ・出荷停止商品一覧」2026年4月24日
  • 帝国データバンク「ナフサ不足、国内製造業の3割で『調達リスク』の可能性」2026年4月17日
  • レゾナック株式会社 ヒタレックス一般特性表(2022年)、ダイシングテープ製品情報
  • 石油化学工業協会(JPCA)公表データ
  • Astute Analytica「はんだフラックス市場規模・シェア予測レポート」2026年1月

執筆・監修について

基板実装

基板実装ドットコム編集部
PCB/EMS業界に特化した調達・サプライチェーン情報の発信メディア。基板実装業界での10年以上の調達・SCM実務経験を持つ編集者と、化学業界アナリストの監修体制で、業界動向を一次情報ベースで分析・発信しています。本記事は2026年4月27日時点で公表されている政府機関、業界紙、メーカー公式発表、海運業界データを基にした独自整理です。

免責:本記事は一般的な情報整理を目的としており、特定企業・取引への助言ではありません。

実務判断時は必ずご自身のサプライヤー・法務部門・専門家へご確認ください。

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