
1. エグゼクティブ・サマリー:受動部品市場を襲う「AIインフレ」の第2波
2026年4月第5週、受動部品市場は「汎用品の安定」と「ハイエンド品の枯渇」という二極化が極致に達しています。
4月1日に発動された村田製作所の価格改定(15%〜35%増)およびSamsung Electro-Mechanics(SEMCO)の二桁増値上げは、流通在庫の単価を即座に押し上げました。
特に、1台のAIサーバーが数万個のMLCCを消費する現状において、製造キャパシティはAI・車載向けに優先配分(アロケーション)されており、一般産業機器向けの納期は 16週〜24週 へと悪化。
さらに、銀やパラジウムといった貴金属価格の高騰を受け、Yageo(国巨)などの抵抗器メーカーも二次値上げの検討に入っています。
コネクタ分野でもTE Connectivityの5%〜12%のグローバル値上げが完全適用され、実装原価の構造的底上げが確定しました。
2. カテゴリ別動向:MLCCと抵抗器の需給激震
村田製作所 (Murata):4月1日付値上げの「実効化」と供給優先度
村田製作所が3月中旬に通知した価格改定は、4月の受注分より完全に適用されています。
- 実施内容: AIサーバー向け高容量MLCC、車載グレード(AEC-Q200)、RF/マイクロ波用部品を中心に 15%〜35% の値上げ。
- 背景: 2026年のAIインフラ成長に伴い、製造ラインの稼働率が限界に達しており、設備投資費用を販売価格へ転嫁。
- 供給状況: 同社は「AIサーバー向けMLCC需要は2030年まで年平均30%で成長する」と予測しており、非AI向けの汎用品ラインを縮小・転換する動きが見られます。
Samsung Electro-Mechanics (SEMCO):フィリピン新工場稼働までの「空白期間」
韓国SEMCOも4月より二桁%の値上げを強行しました。
- 現状: 2026年内のキャパシティは既に予約で埋まっており、フィリピンの新工場が稼働する2027年まで供給不足が解消されない見通しです。
- リードタイム: 高端(ハイエンド)製品の納期は、昨年末の10週から現在は 14週〜16週 へ延伸しています。
Yageo (国巨):貴金属高騰に伴う「二次値上げ」の予兆
世界最大のチップ抵抗器メーカー、Yageo(ヤゲオ)は、銀(Ag)やパラジウム(Pd)の価格高騰を理由に、さらなる価格調整を検討しています。
- コスト要因: 太陽光パネルとAIサーバー需要の重複により銀価格が高止まり。
- 市場予測: すでに4月から新単価が適用されていますが、原材料のインフレが止まらない場合、6月〜7月にかけて再度の値上げ(サーチャージ導入)の可能性が浮上しています。
【一次ソース】
- Top Multilayer Ceramic Capacitor Manufacturers 2026 Update – Unibetter (2026/03/30)
- Electronic Components Price Rise 2026: AI-Driven & Sustained – OneRiverTronics (2026/03/16)
3. コネクタ市場:TE Connectivityのグローバル値上げ完全適用
コネクタ最大手のTE Connectivityによる価格改定が、4月末を境に商流の隅々まで浸透しました。
TE Connectivity:全製品ポートフォリオの価格改定
- 実施内容: 自動車用、高速通信用、産業オートメーション用コネクタ、およびセンサー製品において 5%〜12% の値上げ。
- 適用実態: 4月28日現在のディストリビュータ(Mouser, DigiKey等)のシステム価格は、昨年度末比で明確に上昇しています。
- 影響: TEの動きは、MolexやAmphenolといった競合他社の価格戦略にも影響を与えており、コネクタ業界全体で「低価格・多売」から「高付加価値・高単価」へのシフトが加速しています。
【一次ソース】
4. EOL(生産終了)およびPCN(変更通知):実装現場への重要アラート
2026年4月末、基板実装の継続性に直結する重要通知です。
| メーカー | カテゴリ | 内容 / ステータス | 重要期限 / 注意点 |
| TE Connectivity | 丸形コネクタ | EOL通知: 2120946-1等の特定アセンブリ廃止。 | 2026年4月2日完了済。市場在庫のみ。 |
| Nippon Chemi-Con | 電解コンデンサ | Khu/Lhuシリーズへの統合推奨。 | 旧シリーズの縮小と新世代品への移行加速。 |
| Nichicon | 電解コンデンサ | エッチング箔供給不足に伴う 納期16週延伸。 | 自社生産ライン以外のアルミ箔調達が困難。 |
| Yageo | 抵抗器 | 銀・パラジウム高騰による新単価の完全適用。 | 2Q BOmコストの底上げ(+15-20%)。 |
【一次ソース】
- TE Connectivity 2120946-1 EOL Status – DigiKey
- Aluminum Electrolytic Capacitors Market Forecasts to 2031 – Mordor Intelligence
5. 市場在庫とリードタイム:木曜日版「枯渇警戒リスト」
現在、特にアロケーション(割当)が厳格化されている受動部品のリストです。
| 部品カテゴリ | 対象メーカー | リードタイム / 状況 |
| 高容量MLCC (1210/1812) | 村田 / SEMCO | 26週〜40週。AIサーバー向けに優先供給。 |
| 高圧アルミ電解コンデンサ | 日本ケミコン / ニチコン | 16週〜24週。エッチング箔の生産枠制限。 |
| 厚膜チップ抵抗器 (汎用) | Yageo / Panasonic | 12週〜16週。原材料高騰による受注制限。 |
| 高速バックプレーンコネクタ | TE / Molex | 20週〜30週。データセンター拡張により需要激増。 |
6. 調達・設計部門への「今すぐ行うべき3つのアクション」
- 村田製作所/SEMCOの「新価格回答」に基づく予算修正: 4月から最大35%の値上げが適用されています。昨年度比でBOMコストが大幅に上昇するため、利益率の再計算と、必要に応じた顧客への価格改定通知を本日中に準備してください。
- アルミ電解コンデンサの「新世代品」への置き換え評価: 日本ケミコンのKhu/Lhuシリーズなど、メーカーが注力する新世代品は供給が優先されます。旧世代品(EOLリスク高)を使用している場合、今週中に代替認定を指示してください。
- コネクタの「全価値課税」リスクの再確認: 米国セクション232関税の運用変更により、コネクタを含むPCBA全体の価値に対して25%の関税が課される可能性があります。対米輸出製品については、通関士とインボイスの再精査を週末までに行ってください。
【免責事項】
本レポートは2026年4月30日時点の公開情報を基に作成されています。
受動部品・コネクタ市場は原材料相場とAI投資の動向に極めて敏感であるため、最終的な判断はメーカー公式通知および一次代理店からの最新回答に基づいて行ってください。








