RoHS指令対応証明書とは?書き方・フォーマット・分析データとの違いを完全解説【最新版】

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EU(欧州連合)域内へ電気・電子機器を輸出する企業にとって、RoHS(ローズ)指令への対応は避けては通れない壁です。

しかし、いざ取引先から「RoHSの対応証明書を提出してください」と言われたとき、具体的にどのような書類を用意すればよいか即答できる担当者は意外と多くありません。

なぜなら、実は「RoHS指令対応証明書」という名前の、政府が発行する単一の公的な賞状のようなものは存在しないからです。

この記事では、長年環境規制対応のコンサルティングを行ってきた専門家の視点から、実務現場で求められる「証明書」の正体、正しい作成方法、そして分析データとの違いについて徹底的に解説します。

曖昧な理解のまま書類を提出することは、将来的なリコールや取引停止のリスクを招きます。

この記事を読めば、自信を持ってコンプライアンス対応ができるようになるでしょう。

目次

そもそも「RoHS指令対応証明書」という公的書類は存在しない

まず最初に、最も重要な誤解を解いておく必要があります。多くの人がイメージする「お墨付きの証明書」は、RoHS指令においては存在しません。

RoHS指令は、製造者自身が「この製品は規制物質を含んでいません」と宣言する「自己適合宣言(Self-Declaration)」の仕組みを採用しているからです。

自己適合宣言(DoC)と技術文書の仕組み

EU市場に製品を出す最終製品メーカー(完成品メーカー)は、自らの責任において「EU適合宣言書(EU Declaration of Conformity:DoC)」を作成する必要があります。

これが、法的な意味での最終的な「証明書」に当たります。

しかし、このDoCを作成するためには根拠が必要です。

製品を構成する何千、何万という部品の一つひとつがRoHS指令の閾値(いきち)以下であることを証明しなければなりません。

そのために作成・保管が義務付けられているのが「技術文書(Technical File)」であり、この中に、サプライヤーから集めた各種データが含まれます。

つまり、皆さんが「RoHS証明書」と呼んでいるものの正体は、この技術文書の一部として保管される「部品単位での不使用証明書」や「分析データ」のことを指しているのです。

CEマーキングとの関係性

RoHS指令は、CEマーキングを貼付するための必須要件の一つです。

製品にCEマークがついているということは、自動的に「RoHS指令にも適合しています」と宣言していることと同義です。

もし、含有物質の管理が不十分なままCEマークを貼って輸出した場合、文書偽造とみなされ、巨額の罰金や製品回収命令を受ける可能性があります。

そのため、各企業はサプライチェーンの末端まで遡って「証明」を求めるのです。

実務で求められる「3つの証明書類」とその役割

では、具体的にどのような書類を用意すればよいのでしょうか。

ビジネスの現場では、大きく分けて以下の3つの形式が「証明書」として流通しています。

1. 不使用証明書(Non-use Warranty)

最も一般的な形式です。

「当社が納入する製品には、RoHS指令で規制されている10物質が、閾値を超えて含まれていません」ということを、サプライヤーの責任者が署名・捺印して保証する書類です。

「RoHS指令対応証明書」「非含有保証書」などと呼ばれることもあります。

これは法的な公文書ではありませんが、企業間の売買契約における品質保証の一部として非常に重要な効力を持ちます。

2. 精密分析データ(ICPデータ)

不使用証明書が「宣言(言葉)」であるのに対し、こちらは「証拠(数値)」です。

第三者分析機関(SGS、Intertek、日本分析化学テストセンターなど)に部材を提出し、実際に化学分析を行った結果のレポートです。

主にICP-AES(誘導結合プラズマ発光分光分析)などの手法が使われるため、通称「ICPデータ」と呼ばれます。

不使用証明書の裏付けとして、セットで提出を求められることが一般的です。

3. 成分情報伝達ツール(chemSHERPA等)

近年、紙(PDF)の証明書に代わって主流になりつつあるのが、デジタルデータによる情報伝達です。

日本では経済産業省主導で開発された「chemSHERPA(ケムシェルパ)」が業界標準となっています。

XML形式のデータで、どの部材に・どの物質が・どのくらい含まれているかを詳細に記述します。

大手メーカーを中心に、紙の証明書ではなくchemSHERPAデータの提出を必須とするケースが増えています。

【雛形あり】RoHS不使用証明書の書き方と必須項目

自社で部品を製造し、納入先へ「不使用証明書」を発行する場合のポイントを解説します。

フォーマットは各社自由ですが、以下の要素が抜けていると、納入先から再提出を求められる可能性が高いです。

記載すべき5つの重要要素

  1. 対象製品の特定: 品名、品番(型番)を正確に記載します。シリーズ品をまとめて記載する場合もあります。
  2. 適用される規制の明確化: 「EU RoHS指令(2011/65/EU)およびその修正指令((EU) 2015/863)」に適合している旨を明記します。単に「RoHS対応」と書くだけでは、古い基準(6物質)なのか最新(10物質)なのか曖昧になるため、指令番号や物質数(10物質)を記載するのがベストです。
  3. 規制物質と閾値: 鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBB、PBDE、およびフタル酸エステル4種(DEHP, BBP, DBP, DIBP)の名称と、それぞれの最大許容濃度(閾値)を記載します。通常はカドミウムが0.01wt%、その他は0.1wt%です。
  4. 免責事項・適合の根拠: 「本保証は、部材メーカーからの情報および当社の管理実績に基づく」といった根拠を記載します。
  5. 署名・捺印: 品質保証責任者などの役職・氏名、発行日、社印を記載します。

均質材料(Homogeneous Material)の定義と注意点

RoHS指令対応で最も間違いやすいのが「均質材料」の概念です。

RoHSの閾値は、製品全体に対する重量比ではなく、「機械的に分離不可能な最小単位の材料」ごとの濃度で判断されます。

例えば、「メッキされたネジ」の場合、「ネジ全体」で分析してはいけません。

「鉄の母材」と「表面のメッキ層」は別々の均質材料です。それぞれ個別に閾値以下である必要があります。

証明書を作成する際も、この均質材料レベルで管理ができていることを前提とする必要があります。

適用除外用途(Exemption)の記載方法

技術的に代替技術がない特定の用途については、規制物質の使用が期限付きで認められています。

これを「適用除外(エグゼンプション)」と呼びます。

例えば、特定の合金中の鉛などはよく使われる除外項目です(例:銅合金中の4wt%までの鉛など)。

もし自社製品がこの適用除外を利用している場合は、証明書に「適合(適用除外:6(c)を使用)」のように、明確に除外項目番号を記載する必要があります。

これを隠して(あるいは知らずに)「含有なし」として提出すると、虚偽報告となります。

信頼性を担保するための「分析データ」の読み方

不使用証明書を作成するためには、原材料メーカーから分析データを取り寄せる必要があります。

しかし、ただ集めれば良いわけではありません。

なぜ「紙の証明書」だけでは不十分なのか

サプライヤーが「入っていません」と言っていても、意図せず混入しているケース(コンタミネーション)や、サプライヤー自身が規制を理解していないケースがあります。

過去には、リサイクル樹脂を使用した際に、前の製品に含まれていた規制物質が混入し、完成品メーカーで検出されて大問題になった事例があります。

そのため、不使用証明書という「誓約」だけでなく、分析データという「エビデンス」を確認し、ダブルチェックを行うのがプロの管理手法です。

有効期限と更新頻度の業界慣習

RoHS指令自体には、分析データの「有効期限」についての法的規定はありません。

10年前のデータでも、材料の組成が変わっていなければ論理的には有効です。

しかし、業界の慣習(顧客要求)として「発行から1年以内」または「2年以内」のデータを求められることが非常に多いです。

これは、サプライヤーが勝手に材料や製造プロセスを変更する「サイレントチェンジ」のリスクを低減するためです。 もし顧客から「最新のデータを出して」と言われたら、法的な義務はなくとも、ビジネス上の信頼維持のために再分析を行う必要があります。

サプライチェーン管理の効率化とトラブル回避術

最後に、実務担当者を悩ませるサプライヤー管理のコツをお伝えします。

サプライヤーが協力してくれない時の対処法

海外のサプライヤーや、小規模な町工場などでは「RoHS?証明書?うちはそんなの出せないよ」と言われることがあります。 この場合、以下のステップを試みてください。

  1. フォーマットを提供する: 相手が書き方を知らないだけの場合が多いです。自社で用意した簡易的なフォーマットを渡し、「ここにサインするだけで良い」とハードルを下げます。
  2. Webサイトの公開情報を探す: 大手メーカーの汎用部品であれば、公式サイトでRoHS対応状況や証明書ダウンロードが可能な場合があります。
  3. 自社で分析する(最終手段): どうしても書類が入手できない、あるいは信頼性が低い場合は、蛍光X線分析装置を使って自社でスクリーニング検査を行うか、外部機関に分析を依頼します。このコストをリスクヘッジとして割り切る判断も必要です。

意図しない混入(コンタミネーション)を防ぐには

社内の製造工程でRoHS非対応品(例えば、特定の古いハンダや、規制物質を含む接着剤など)が混在していると、作業ミスで混入する恐れがあります。

  • 識別管理: RoHS対応品と非対応品の保管棚を明確に分ける。
  • 見える化: 対応品には緑色のラベルを貼るなど、視覚的に区別する。
  • 教育: 現場の作業員に、なぜ混入がいけないのか教育を行う。

まとめ:正しい証明書管理が企業の信頼を守る

RoHS指令対応の証明書は、単なる事務手続きではありません。

自社の製品が環境に配慮され、法規制を遵守していることを示す重要な「品質保証」の一部です。

  1. RoHS指令に「公的な証明書」はなく、自己適合宣言が基本である。
  2. 実務では「不使用証明書」「分析データ」「chemSHERPA」が使われる。
  3. 「均質材料」の概念と「適用除外」を正しく理解して記載する。

これらを正しく理解し、適切なエビデンスを管理することで、EU市場でのビジネスチャンスを広げ、取引先からの信頼を強固なものにしてください。

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