
日本のコネクタ市場を調べると、「市場規模はいくらか」「主要メーカーはどこか」「今後何%成長するか」といった情報は比較的簡単に見つかります。
ところが、製造業の営業や新規事業という立場で調べ始めると、そこで一度止まります。
市場が伸びることは分かった。では、自社は誰に何を売ればいいのでしょうか。
コネクタそのものを製造していない会社であれば、なおさらです。
僕が今回「日本のコネクタ産業2027-2030」を調査した理由もここにあります。市場規模と主要メーカーだけを並べても、製造業の実務では次の行動につながりにくいからです。
そこで今回の記事では、日本のコネクタ市場を「大きいか、小さいか」という視点ではなく、どの用途で、どんな技術が必要になり、その製品を作るためにどんな工程があり、そこからどんな営業先が見つかるのかという順番で整理します。
結論から言えば、これからコネクタ産業を見るときは「市場全体が何%伸びるか」だけを追うより、AIサーバー、車載・EV、FA・ロボットなど用途別に分け、さらに製造工程まで一段下へ降りて見る方が、営業や新規参入には使いやすいと考えています。

▶【PDF140ページ+Excel】日本のコネクタ産業2027-2030|
日本のコネクタ市場は「伸びる・縮む」だけでは判断できない
コネクタ市場を見るときに最初に注意したいのは、「コネクタ」という一つの市場が存在しているように見えて、実際には用途によって必要な性能が大きく違うことです。
スマートフォン内部の小型コネクタと、AIサーバーの高速伝送コネクタ、自動車の高電圧コネクタ、工場設備で使われる耐環境コネクタを同じ物差しだけで比較することはできません。
実際、ヒロセ電機の製品情報を見るだけでも、データセンター向けには高速基板接続や高電流電源接続、車載向けにはEthernet対応や高電圧品、産業機器向けには耐環境性や通信性能など、用途ごとに異なる製品群が展開されています。
日本航空電子工業(JAE)でも、2026年には車載ECU向け小型コネクタ、産業用ロボット向け複合コネクタ、V2G対応コネクタ、自走ロボットの自動充電向けコネクタなどが相次いで公表されています。
ここから分かるのは、「コネクタ市場が伸びる」という言葉だけでは情報の粒度が粗すぎるということです。
製造業の営業として考えるなら、次の質問は「市場が伸びますか」ではありません。
「どの用途で、何が変わるのか」です。
データ通信速度が上がるのか。電流が大きくなるのか。小型化するのか。耐熱性が必要になるのか。防水性能が求められるのか。振動対策が必要なのか。
仕様が変われば、材料も変わります。端子形状も変わります。金型、成形、めっき、組立、検査方法も変わる可能性があります。
ここまで分解して、初めて市場の成長と自社の仕事がつながります。
国内コネクタ生産額は3,000億円を超えた

では、日本国内では実際にどの程度のコネクタが生産されているのでしょうか。
JEITAが掲載している経済産業省生産動態統計ベースの数字では、2024年の国内コネクタ生産金額は292,602百万円、つまり約2,926億円でした。生産数量は23,911,820千個です。
2025年になると、生産金額は311,298百万円、約3,113億円まで増え、生産数量も24,874,915千個となっています。
金額だけを見ると、「国内コネクタ市場は順調に伸びている」と言いたくなります。
しかし、ここで終わると実務では判断を誤ります。
2024年と2025年を比較する
2024年から2025年にかけて、生産金額も生産数量も増えています。
ただし重要なのは、コネクタは一個当たりの金額が一定の商品ではないということです。
数円、数十円クラスのものもあれば、高速伝送、高電流、高信頼、特殊環境向けなど、はるかに付加価値の高い製品もあります。
したがって、生産金額の増加をそのまま「すべてのコネクタ需要が増えている」と読むことはできません。
さらに今回制作した「日本のコネクタ産業2027-2030」の公開ページでは、2026年1〜7月について、生産金額が前年同期比107.6%である一方、生産数量は93.1%だったことを整理しています。つまり公開ページ上の集計では、「金額が増えている一方、数量は減っている」という逆方向の動きが確認されています。
この数字から直ちに「高価格品へのシフトが原因だ」と断定することはできません。製品構成、価格改定、為替、集計対象など複数の要因を確認する必要があります。
しかし少なくとも、数量だけを追う場合と金額だけを追う場合では、市場の見え方が変わるということは分かります。
金額と数量を両方見る理由
営業先を探すときには、この違いが非常に重要です。
大量に使われる汎用品と、高速・高電圧・高信頼といった高付加価値品では、必要になる材料、設備、品質保証、検査工程が違います。
仮に市場全体の数量が伸びていなくても、高速化や高電圧化が進む領域で製品単価や要求仕様が上がっているなら、特殊材料、精密加工、めっき、検査、測定、評価装置などには営業機会が生まれる可能性があります。
逆に、市場全体の金額が増えているからといって、汎用品だけを扱う会社にも同じ割合で需要が増えるとは限りません。
僕はここを、コネクタ市場を見るときの最初の分岐点だと考えています。
「市場は伸びるか」ではなく、「何が変わった結果、金額が動いているのか」を見る。
その方が営業先を選びやすくなります。

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AIサーバー・車載・FAでは求められるコネクタが違う
2027年から2030年に向けてコネクタ市場を見るなら、用途を分ける必要があります。
今回の調査では、AIサーバー・データセンター、車載・EV・SDV、FA・ロボット、医療・計測・高信頼分野を重点領域として整理しました。
この四つは同じコネクタ産業の中にありますが、営業対象となる会社も製造工程も同じではありません。
AIサーバー・データセンター
AIサーバーではGPUそのものが注目されがちですが、サーバー内部やネットワーク機器には多数の接続点があります。
高速信号、基板間接続、電源接続、ケーブル接続、光接続などです。
ヒロセ電機もデータセンター向けに、ネットワークスイッチ、サーバー、電源ユニットを対象とした高速接続・電源接続ソリューションを展開しています。高速基板接続では56Gbpsクラスやそれ以上の高速伝送を想定した製品も紹介されています。
ここで材料メーカーや加工会社が見るべきなのは、「AIサーバーが何台売れるか」だけではありません。
高速化によって端子や基板接続にどのような精度が求められるのか。電力密度の上昇によって電源接続がどう変わるのか。高速銅接続と光接続の役割分担がどう変化するのか。
こうした技術変化から工程を逆算する方が、具体的な商材につながります。
車載・EV・SDV
車載では、高速通信だけでなく、高電圧、防水、耐熱、耐振動、シールド、高信頼性など複数の条件が重なります。
さらに、ADASや車載カメラ、ECU間通信、e-Axle、インバーター、バッテリー周辺など、車の電子化が進むほど接続ポイントも複雑になります。
ヒロセ電機は2026年に車載Ethernet対応の高速伝送用シールドコネクタや高電圧対応製品を公表しています。JAEも車載ECU向けやVehicle-to-Gridに対応する製品を展開しています。
つまり「EVが増えるからコネクタが増える」という単純な話ではありません。
電圧、通信速度、搭載位置、温度、振動、防水、組立方法などの要求仕様が変わるため、その周囲にある材料や加工、検査設備にも変化が波及します。
FA・ロボット
FA・ロボットでは、また条件が変わります。
産業Ethernet、可動部配線、複合I/O、電源と信号の一体化、AMRやAGVの自動充電などが関わってきます。
JAEは2026年に産業用ロボット向け小型高密度複合コネクタや、自走ロボットの自動充電用コネクタを発表しています。
ロボット用途であれば、単にコネクタメーカーだけを見るのではなく、ロボット本体、制御装置、ハーネス、ケーブル、センサー、充電設備まで接続関係を広げて考える必要があります。
これが「市場から営業先へつなげる」という意味です。
コネクタメーカー一覧だけを作っても営業先は決まらない
コネクタ市場を調査すると、最初にやりたくなるのがメーカー一覧の作成です。
会社名、所在地、売上、主力製品などを並べれば業界地図ができたように感じます。
しかし、営業に使うのであれば、それだけでは足りません。
たとえばヒロセ電機、日本航空電子工業、I-PEX、イリソ電子工業、日本圧着端子製造、SMK、山一電機、KEL、TE Connectivity、日本モレックス、アンフェノールなど、企業名を並べること自体はそれほど難しくありません。
検索すれば多くの企業が見つかります。
問題は、その次です。
自社が精密プレス会社だった場合、どこへ営業するのか。
樹脂材料メーカーならどこか。
画像検査装置メーカーならどこか。
めっき薬品メーカーならどこか。
ハーネス加工設備を扱う会社ならどこか。
ここでは企業名だけでは判断できません。
どんな製品を作っているのかを確認し、さらにその製品の製造工程まで降りる必要があります。
今回の調査でも、50企業・事業体について、単なる会社名だけではなく、確認できた製品・用途、国内拠点、拠点の役割、営業仮説、次に確認する項目、公式情報の出典まで整理しています。
「メーカー一覧」は調査のゴールではなく、営業先を探すための入口と考えた方がよいでしょう。
コネクタを製造工程まで分解すると営業機会が見える
コネクタを一つの完成品として見ると、自社とは関係のない市場に見える会社もあります。
しかし製造工程まで分解すると景色が変わります。
代表的には、
金属材料
樹脂材料
精密プレス
金型
射出成形
めっき
自動組立
画像検査
圧着
ハーネス加工
測定
信頼性評価
梱包・供給
といった工程があります。今回のレポートも、この「完成品から工程へ逆算する」という考え方で整理しています。
ここが、検索上位にあるメーカーランキングだけでは見えにくい部分です。
たとえば自社が画像検査装置メーカーなら、「コネクタメーカー50社」というリストを見るだけでは不十分です。
端子の微細化が進んでいるのか。高速化で寸法精度要求が上がっているのか。自動組立比率が高い製品なのか。どの国内拠点で量産・評価しているのか。
そこまで確認して初めて、「この工場なら検査工程の提案余地があるのではないか」という営業仮説になります。
同じことは金型、プレス、成形、めっき、測定機器、商社にも当てはまります。
市場調査を営業に使う場合、会社名を増やすことより、「なぜこの会社へ営業するのか」という仮説を一社ずつ作れることの方が重要です。
本社ではなく国内拠点の「役割」を見る
もう一つ、今回の調査で強く意識したのが国内拠点です。
営業リストでは本社所在地が中心になりがちですが、製造業では本社だけを見ても案件の場所が分からないことがあります。
設計はA県。
試作・評価はB県。
量産はC県。
購買窓口は本社。
という会社もあり得ます。
そこで「日本のコネクタ産業2027-2030」では、公開情報で確認できた国内63拠点を整理しました。都道府県、市区町村、確認できた拠点の役割などをExcelに収録しています。
ここで特に注意したのが、
「工場が存在する」ことと、「狙っている製品をその工場で製造している」ことは同じではない
という点です。
Webサイトに工場名が載っていたとしても、対象品番の製造場所まで公開されているとは限りません。
したがって、公開情報で確認できないものは「未確認」として残しています。
一見すると、不完全なデータに見えるかもしれません。
しかし営業では、この「未確認」が役立ちます。
「この拠点では車載用コネクタを生産していますか」
「金型は内製ですか」
「端子プレスは国内ですか」
「めっき工程は自社ですか、外注ですか」
「画像検査はどの工程で行っていますか」
といった、最初に確認すべき質問へ変換できるからです。
Web調査だけで全部を埋めようとするより、「ここから先は相手に聞かなければ分からない」と境界線を引く方が、営業データとしては安全です。
50企業・63拠点を調べて見えてきたこと
今回、日本で事業展開する国内外50企業・事業体と63国内拠点を整理して改めて感じたのは、「コネクタ産業」という言葉だけでは広すぎるということでした。
AIサーバー向け高速接続に強い企業。
車載に強い企業。
産業用丸形コネクタに強い企業。
高信頼用途に強い企業。
ハーネスまで含めた接続システムに強い企業。
同じ「コネクタメーカー」でも狙っている市場が違います。
だからこそ営業側も、
「コネクタメーカーへ営業する」
ではなく、
「AIサーバー向け高速接続を扱う企業の、国内評価・生産工程へ○○を提案する」
くらいまで具体化する必要があります。
これは今回の調査で得られた一つ目の独自インサイトです。
二つ目は、本社所在地より拠点の役割を見る方が営業に使いやすいということです。
三つ目は、「公開情報で確認できなかった項目」を消さない方がよいということです。未確認事項は調査の失敗ではなく、商談時の質問候補になります。
市場調査を「全部分かる資料」にしようとすると、推測が入りやすくなります。
それよりも、
確認できた事実
公表されている計画
外部の市場見通し
こちら側の分析・営業仮説
未確認情報
を分けておく方が、実際の営業判断では使いやすいと考えています。
「日本のコネクタ産業2027-2030」をどう使うか
今回まとめた「日本のコネクタ産業2027-2030」は、市場規模だけを読むための資料ではありません。
PDFは140ページあり、市場と数値、技術と製品、製造工程と商材、サプライチェーン、AIサーバー・データセンター、車載・EV・SDV、FA・ロボット、医療・計測・高信頼、企業・製品マップ、国内拠点、新規参入、営業開拓、2027〜2030年の行動計画まで13章で整理しています。
さらにExcelには、
Companies
Facilities
ChartData
Sources
の4シートを収録しました。
Companiesには50企業・事業体。
Facilitiesには国内63拠点。
ChartDataにはレポート内で使用した図表数値。
Sourcesには159件の出典情報を収録しています。
僕が想定している使い方は、最初から140ページを順番に読むことだけではありません。
まず自社が狙う用途を決めます。
たとえばAIサーバーなのか、車載なのか、FA・ロボットなのか。
次に、その用途で求められるコネクタや接続技術を確認します。
そこから製造工程まで降りて、自社が提供できる材料、加工、設備、検査、商社機能がどこに当てはまるかを確認します。
最後にCompaniesとFacilitiesを使って企業と国内拠点を絞り、「未確認事項」を営業前の質問へ変えます。
この順番で使うと、単なる業界資料ではなく営業会議や新規事業会議のたたき台になります。
販売価格は49,800円です。情報基準日は2026年10月12日。PDF140ページと企業・拠点・図表・出典を収録したExcelがセットになっています。
詳細な収録内容、対象企業、注意事項については、製造業サプライチェーン研究所の販売ページで確認できます。

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8.FAQ
日本のコネクタ市場規模はどのくらいですか?
経済産業省生産動態統計をJEITAが整理した国内生産実績では、2025年のコネクタ生産金額は311,298百万円、約3,113億円です。生産数量は24,874,915千個でした。これは日本国内の生産実績であり、世界のコネクタ市場規模とは別の数字です。
日本のコネクタ市場は今後伸びますか?
市場全体を一括して判断するより、用途別に見る必要があります。AIサーバー・データセンター、車載・EV、FA・ロボットなどでは、高速伝送、高電流、高電圧、小型化、耐環境性など異なる要求が進んでいます。したがって、数量だけでなく製品構成や付加価値の変化を見ることが重要です。
AIサーバーではどんなコネクタが使われますか?
高速基板接続、基板対基板、電源、高電流接続などが重要になります。ヒロセ電機もデータセンター向けにネットワークスイッチ、サーバー、電源ユニットごとの接続ソリューションを展開しています。
車載コネクタでは何が重要になりますか?
用途によりますが、高速通信、高電圧、防水、耐熱、耐振動、シールド、高信頼性などが重要になります。ADAS、ECU、車載カメラ、EVパワートレインなどによって必要条件は変わります。
コネクタメーカーに営業できるのは材料メーカーだけですか?
いいえ。金属・樹脂材料のほか、精密プレス、金型、射出成形、めっき、自動組立、画像検査、測定、信頼性評価、ハーネス・圧着、物流、商社など、多くの企業がサプライチェーンに関係します。
コネクタメーカー一覧を作れば営業リストになりますか?
会社名だけでは十分ではありません。どの製品を扱っているのか、どの市場向けなのか、どの国内拠点で製造・設計・評価を行っているのかまで確認した方が、営業優先順位を付けやすくなります。
工場の所在地が分かれば営業できますか?
所在地だけでは足りません。その拠点が製造、設計、研究、評価、営業のどの役割を持つのかを確認する必要があります。また、工場が存在していても、狙っている品番をそこで作っているとは限らないため、確認できない部分は営業時の質問事項として残す方法があります。
「日本のコネクタ産業2027-2030」には何が入っていますか?
PDF140ページとExcelが付属し、50企業・事業体、国内63拠点、159件の出典情報を整理しています。市場、技術、製造工程、企業、国内拠点、営業、新規参入までをつなげて調査した資料です。

▶【PDF140ページ+Excel】日本のコネクタ産業2027-2030|
9.まとめ
日本のコネクタ市場を見るとき、「今後何%伸びるのか」だけを調べても、製造業の営業や新規事業には十分ではありません。
2025年の国内コネクタ生産額は約3,113億円まで拡大していますが、その数字の中には多くの用途、仕様、価格帯の製品が含まれています。
そこで次に確認したいのが、
どの用途が動いているのか。
どんな性能が求められているのか。
その製品を作るにはどんな工程が必要なのか。
自社の商品・技術はどの工程に入れるのか。
どの企業、どの国内拠点へ確認すべきなのか。
という順番です。
AIサーバーなら高速・電源・光接続。
車載なら高速通信、高電圧、防水、耐熱、耐振動。
FA・ロボットなら産業通信、可動配線、複合接続、自動充電。
市場の名前が変われば、必要なコネクタも変わり、その周囲で必要になる材料・加工・設備・検査も変わります。
だから僕は、コネクタ市場を「市場規模→メーカー一覧」で終わらせず、
市場
↓
技術
↓
製品
↓
製造工程
↓
企業
↓
工場
↓
営業先
↓
提案商材
までつなげて見ることが重要だと考えています。
市場調査の目的が「知ること」ではなく「次にどこへ営業するかを決めること」なら、ここまで落とし込んで初めて資料が実務で使えるようになります。



















